Adobe AIR Contest 2011 受賞作品 – 最優秀賞は「V-Drums Friend Jam」

ドラムを練習して 世界中のドラマーと交流できる「V-Drums Friend Jam」が最優秀賞を獲得

今回で4回目を迎えた Adobe AIR Contest 2011 は、Adobe AIR Gallery (現在はAdobe AppBox)に登録されたAIRアプリケーションを対象に、著名審査員による厳正なる審査の下、優秀作品が決定いたしました。その栄誉を称えて、素晴らしい作品をここにご紹介いたします。

最優秀賞 「V-Drums Friend Jam」by ローランド株式会社/株式会社サイトフォーディー

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【アプリの概要】

「V-Drums Friend Jam」は、ローランド社の電子ドラム「V-Drums」シリーズのユーザーが無償でお使いいただける、ドラマーのためのソーシャルアプリケーションです。最新の練習曲がインターネットから自動的にダウンロードされるので、ユーザーはロックやジャズなどお好きな曲に合わせてドラムの演奏を楽しめます。

演奏結果はその場で採点され、それを世界ランキングで表示します。Twitterとも連動しているので、練習の成果をつぶやき、世界中のドラマーとコミュニケーションをとることが可能です。電子ドラムの練習を通じて、同じ趣味をもつ世界中の仲間と交流できます。

アプリケーションはAdobe AIRの特長を生かしてWindows/Mac OS両対応。ドラム本体とPCをMIDI接続することで、PCを触らずにドラム本体から簡単に操作できます。2011年8月時点で130カ国の人々から利用されており、世界中のドラマーがあなたの参加を待っています!

【開発時に努力した点】

ローランド社の電子ドラム「V-Drums」と連携するアプリケーションを実現するために、MIDIインターフェイスを介してデータのやり取りを行いました。パッドを叩いた位置や強弱を認識することができたことで、演奏の採点が可能となり、ドラマーの皆さんに新たな演奏の楽しみを体感していただけるアプリケーションを提供することができました。

開発を行う上で特に注力したことは、ドラムを叩いた際に出る信号を瞬間的に画面へ反映することでした。プロのドラマーの方々にもご協力いただくことで、ストレス無く演奏に集中できる品質まで高めることができました。

【使用ツール&テクノロジー】

Adobe Flash Builder 4.5
Adobe Photoshop CS5
Adobe Illustrator CS5

【審査員のコメント】

矢野りん 氏
ドラムの楽しみが広がりそう。「一人で叩く」というドラム本来のストイックなイメージを打ち破り、「ドラムでコミュニケーション」というまるで「拳でコミュニケーション」にも似た意外性のある世界を提示した。

山本博士 氏
「Roland V-Drums」専用アプリであるが、とても洗練されたUIに非常に好感が持てる。孤独になってしまいがちなドラムセットを世界に繋いで楽しませるというアイデアは秀逸。

林 信行 氏
AIRとハードの連携というだけでも珍しいが、シビアなタイミングが要求されるドラミングにリアルタイムで反応させ、演奏の採点まで行なってしまった技術力が素晴らしい。曲データの配信やスコア共有といったソーシャルゲーム的要素は、最近のトレンドだが、これが専用のドラムと連携したことで製品としての楽しさやモノとしての存在感がグっと高まっている。この作品は、他のハードメーカーがフロントエンド開発の基盤として簡単に開発しマルチプラットフォーム展開できるAIRを検討するいいきっかけにもなってくれそうだ。

上条晃宏 氏
ドラムの新しい価値をアプリケーションという形で提供。表現力やポータビリティなどAIRの強みを利用しつつ、正確にタイミングを同期させるという難易度の高い機能との組み合わせにチャレンジしている。

池田泰延 氏
洗練されたインターフェイスもさることながら、MIDI連携など技術的にも目新しく、グランプリにふさわしいアプリだと思いました。ドラムプレイした結果を採点するのでドラムを練習するモチベーションにもつながりますし、それをAIRで実現したかと思うと心が躍らせれます。また、Twitterを通してランキングに参加できるなど、ネットワーク連携を使った点が評価できる点だと思いました。

エンタープライズ賞 「seoマスターLE」 by 株式会社Axis

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【アプリの概要】

SEOというとまだまだ情報が交錯していることが多く、ウェブ担当者も手探りの状態で行っていることがほとんどです。「seoマスターLE」は、従来のカンや経験に頼ったSEOではなく、統計データによる客観的な数値をもとに診断し、ページ内部を修正することができるソフトウェアです。

seoマスターLEでは、SEOで重要とされているウェブページ内部の25要因について診断し、改善が必要な箇所をマークアップします。URLとキーワードを入力すると、ページ内部のSEO要因をチェックし、10万以上のウェブページの統計データをもとに導き出した「上位表示サイトの傾向」と比較して、チェック項目が上位ページ傾向とずれている場合は、その重要度に合わせて赤/緑/青のアイコンが画面上に表示されます。アイコンをクリックするとタグ種別と改善アドバイスが表示されます。

他にも、任意のキーワードで現在10位以内に表示されているウェブページと、任意のURLとの間で検索エンジン評価(ポテンシャル)を比較して、該当キーワードでの上位表示の確率(%)を表示することもできます。このように、自社サイトのSEO診断や競合サイトの調査などにご利用いただけます。

【開発時に努力した点】

苦労した点の1つ目は、大量のウェブページデータを取り扱うため、方向性の決定とデータの分析に多くの時間がかかりました。2つ目は、SEOという専門的な分野を初心者でも簡単に取り扱えるようにインターフェイスには特に気を配りました。また、SEOはキーワード選びが重要な鍵になるため、間違ったキーワードを選ばないように事前に上位表示確率が分かるようにインターフェイスを工夫しました。。

【使用ツール&テクノロジー】

Adobe Flash Builder 4.5 Premium
Adobe Photoshop CS5
Adobe Illustrator CS5
Adobe Fireworks CS5

【審査員のコメント】

池田泰延 氏
機能的に申し分のないアプリだと思います。ブラウザーのレイアウト内にSEOのアドバイスを表示しているのでビジュアル的に確認しやすいですし、ソースコードレベルでも結果をハイライトしているので細かいところまで対応したいプロユーザーに対しても訴求できると思います。完成度が高いので、ぜひともウェブ制作者の方々には使ってほしいアプリだと思いました。

上条晃宏 氏
アプリケーションとしての実用度の高さと、AIRの機能の使い方のユニークさが光った。動的なアルゴリズムのアップデートなど業務ノウハウの高さがうかがえる。

林 信行 氏
アプリケーションとしての機能の充実ぶりに加え、画面の構成も含めたユーザビリティ、メンテナンス性まで含めて非常によく練られた完成されたソリューションになっている点が素晴らしい。質実剛健過ぎて、画面の見栄えなどへの配慮がもう少し欲しい気もするが、「必要な情報を試行錯誤の末に無駄なく配置した結果だから仕方がない」と見ただけで納得させる練られた感を感じさせる。AIRでここまで作り込めるのか、と感心させられた作品。

山本博士 氏
見た目の派手さは特にないが、使えば使うほど便利な仕掛けがたくさん用意されている。また、機能の豊富さだけでなく、操作性や視認性を高めるための細かい工夫がたくさん施されており、とても使いやすい。

エンタープライズ賞 次点 「TieredWorks(ティアードワークス)」 by サンファースト株式会社

【アプリの概要】

テンプレートを選択するというシンプルな動作で、自由度の高いホームページ作成が簡単にできるCMSソフトウェアです。ドラッグ&ドロップでレイアウト変更や、プレビュー画面を見ながら直接編集できるため、迷わず簡単に更新できます。

【審査員のコメント】

上条晃宏 氏
多機能なCMSとして大変良く作り込まれていて技術力の高さが感じられる。使い勝手が洗練されていれば部門賞を取れたかも。

エンターテイメント賞 「CRIMSON ROOM ’11」by 株式会社タカギズム 高木敏光/虫カゴデザインスタジオ株式会社 白石哲也

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【アプリの概要】

「CRIMSON ROOM」は、密室からの脱出ゲームとして、2004年に世に出ました。Web上でのフリーゲームとして、世界150ヶ国あまりから、3年間で8億アクセスを得ることができ、その後の脱出ゲームブームの先駆けになったと自負しています。言語への依存を極力少なくしたこと、赤い壁の狭い部屋の圧迫感、基本的に画面へのタッチだけで進行するシンプルさなど、いくつもの要素が重なってのことでしょうが、南北米やアジア、アフリカなどからも多くの支持を得られたことで、インターネットに国境はないことを感じました。

今やスマートフォンの時代になり、「そのインターフェイスならではの謎を」と考え、新しい工夫をいくつか付け加えました。虫カゴの白石さんとアイデアを出し合い、ブラッシュアップをしていく作業は、とても楽しいものでした。今回の受賞を励みに、世界中の人をあっと言わせるコンテンツを、これからも作っていきたいと考えています。
(高木敏光_タカギズム)

【開発時に努力した点】

「オリジナルのCRIMSON ROOMをスマートフォンで完全に再現する」ということをミッションとして制作しました。オリジナルの謎に加えて「スマートフォンならでは」の謎を仕掛けるために、AIRで可能なあらゆる機能を検証し、とても面白い謎を仕込むことができたと思います。また、iOS/Androidへのマルチスクリーン対応、多言語対応による世界同時リリースを実現しました。AIRでなければ、この短期間では無理でした。

スマートフォン版への移植の際に、クリックから指によるタップへ変化したことで、アイテムが探しにくくなるという問題がありました。この部分は、スマートフォン版特有の機能として、拡大鏡を実装することで対応しました。
(白石哲也_虫カゴデザインスタジオ)

【使用ツール&テクノロジー】

Adobe Flash Professional CS5.5
Adobe Dreamweaver CS5.5
Adobe Fireworks CS5

【審査員のコメント】

山本博士 氏
この不思議なゲームの面白さは、多くの人が知るところであり、申し分ない。Android/iOSに素早く対応した点を大きく評価したい。

林 信行 氏
懐かしのあの迷作、脱出ゲームがiPhoneに、Androidに帰ってきた。タッチ操作でしばらく操作してみると、「あれ? これ最初からタッチ操作のゲームだったっけ?」と思わせるほどうまく操作が馴染んでいて素晴らしい。今後、懐かしいFlashゲームが大挙してスマートフォンにやってくることを予感させる第一波。

上条晃宏 氏
単純に小さな画面サイズに対応しただけでなく、デバイスの機能を積極的にしかもうまいこと取り込んでいる。AIR 2.6が登場してからの期間を考えると開発の早さにも感心。

池田泰延 氏
AIR 2.5からスマートフォン書き出しが可能になったわけですが、それを象徴するかのようなスマートフォンアプリ。「CRIMSON ROOM」は一昔前に流行った脱出ゲームの先駆けですが、スマートフォンに移植したという点で、過去の資産を有効活用できることを示した好例だと思います。またスマートフォンアプリ向けにデータをコンバートしただけではなく、多言語対応やタップ対応(特に虫眼鏡)しているという点も見逃せません。

エンターテイメント賞 次点 「Photolive」 by Shotalog

【アプリの概要】

Eye-Fiやワイヤレストランスミッターなどを装着したデジタルカメラからパソコンのフォルダへ、ワイヤレス送信した画像をスライドショー形式で表示するアプリです。

【審査員のコメント】

矢野りん 氏
何に使ったら面白いのか、という想像力がかき立てられるアプリだ。日頃作業場に引きこもってPCを眺めている私はぜひ外の様子をスライドショー形式で一日中壁に投影し続けたい。

林 信行 氏
使うシーンを色々想像して、それだけで楽しくなってくる作品。これまでデスクの上に置かれたパソコン画面の中だけに閉じこもりがちだったAIRを大きなパーティー会場のスクリーンに映し出したり、リビングのテレビに映し出したりして楽しむ、リアル世界での楽しみありきのAIRアプリケーション。私は常々、 今後はむしろそういった方向性こそが大事と講演していることもあり、その点からも一押ししたい。

ライフスタイル賞 「Youtube Player ‘Mu’」 by Akibo.I

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【アプリの概要】

「Youtube Player ‘Mu’」は、YouTubeのお気に入りのミュージックビデオを連続再生するアプリケーションです。視聴できるのは、YouTubeユーザーが作成した再生リスト、キーワードで検索した動画(Ver1.1からの機能)です。連続再生する動画のイメージをプレイリストとして表示することができ、イメージをクリックしてダイレクト再生したり、再生順番をシャッフルすることもできます。

視聴中の動画のタイトル/画質/動画イメージを表示できるほか、動画に付けられたコメントをテロップとして表示することもできます。また、音楽に合わせてスペクトラムアナライザーが音を刻み、高画質(HD1080)も再生可能です。表示する画面サイズは、512☓288/640☓360/854☓480/1,280☓720/フルスクリーンから選べます。

【開発時に努力した点】

今年の1月、撮りためていた子供の動画を見るために、「まずFlashって何ができるの?」というところから始めました。触ってみると簡単なので、YouTubeも見ることできるのではと思い、アプリ開発に着手しました。しかし、最近は何でもWebブラウザでできる世界、それにすぐにやりたいアプリもある。でもなんとなく、さみしく、みんな同じように見える。なので、古くても自分がよいと思うものを作ることにしました。

イメージは自分が20代の頃、車に搭載していた80年代のカーコンポ。今の若い人にとってどうか知りませんが、親父にとってあの「オレンジイルミ」はぐっときます。初めてのFlex、ActionScript 3.0、それにTweenなども知らなかった。だからこそ、テロップやスペクトラムイコライザは、細かな点までこだわって何度も試行錯誤しながら開発しました。

【使用ツール&テクノロジー】

Adobe AIR SDK
Adobe Photoshop

【審査員のコメント】

林 信行 氏
自分自身がYouTubeでプレイリストをたくさん溜め込んでいるので、個人的に使いたい!という思いから高得点を入れてしまった。ちょっとしたところで表示されるアニメーションなども凝っていて、見ているユーザーを決してシラケさせない世界観の作り込みが素晴らしい。YouTubeでプレイリストを作って楽しんでいる人はまだまだ少数派だが、この作品がきっかけで今後増えれば、次はソーシャル機能を加えてソーシャルDJ/VJツールとして発展させる、なんていう方向性も見えてくるかもしれない。期待!

矢野りん 氏
設定が細かいので玄人向けという印象はあったが「こういう機能が欲しいんだ!」という開発者の熱意というか乾きが伝わってくる設定群に脱帽。

ライフスタイル賞 次点 「ながら視聴アプリ「テレビなう デスクトップ担当」」 by 株式会社クロスフェーダー

【アプリの概要】

地震速報も備えた音声・動画コンテンツのながら視聴アプリ「テレビなう デスクトップ担当」です。ライブ動画、予約自動再生、オンデマンド動画の連続再生、検索結果の連続再生や、スマートホンを使ったリモコン操作機能など、ながら視聴に特化したAIRアプリです!(USTREAMやYouTubeに対応) 被災地で商売をされていらっしゃる方々のPR動画を広告チャンネルとして配信を始めました。

【審査員のコメント】

上条晃宏 氏
アプリのコンセプトや使い方の提案が今っぽい。今でも十分に楽しめるが、もっと作りこまれたらと期待されられる。

池田泰延 氏
スマーフォンをリモコンにできるのがこのアプリの特徴ですが、私はてっきりスマートフォンにアプリをインストールするものだと思っていました。実際はスマートフォンのアプリのインストールすることなく、ブラウザーだけで利用できとても受け入れやすいアプリでした。技術的にAIRのサーバ機能を利用しているのだと思いますが、このワンアイデアが素晴らしいと思いました。

林 信行 氏
今後はスマートフォンが万能のリモコンになる。AIRで表示したUstream画面にサーバ機能を持たせ、スマートフォンからリモコン操作というスタイルは、そんな近未来を先取りした感覚があってユニークかつ素晴らしい。リモコン操作の部分は、反応の良さもそうだが、操作画面の設計も含めもう少しブラシュアップの余地があるが、ぜひ、今後もうまく発展させていって欲しい。

モバイルデバイス賞 「Drawii」 by RIAxDNP

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【アプリの概要】

「Drawii」は、お絵描きAndroidアプリケーションです。以下は、主な機能です。

  1. メニュー左端のアイコンをタッチすると、メニューが切替わります。
  2. メニューは3種類あり、それぞれサブメニューが表示されます。
    【お絵描き】色やブラシの変更、Undo/Redoなど。
    【キャンバス】拡大/縮小や回転など(ジェスチャーサポート)。
    【その他】レイヤー管理や画像の保存など。
  3. サブメニューは横にスクロールできます。
  4. メニュー右端の「×」をタッチすると、メニューを非表示。
  5. メニュー非表示状態で、画面右上角をタッチすると再表示。

※詳しいヘルプは、アプリの【その他】>【info】にて。

【開発時に努力した点】

初めてのモバイルアプリの開発だったので、どんなインターフェイスにするか、試行錯誤しました。その結果、絵を描く際にメニューなどが邪魔にならないように、できるだけ省スペースにしたり、描いてる途中は非表示にしたりするなどの工夫をしました。その他、クレヨンで書いたような質感のブラシを表現したり、そのブラシでできるだけスムーズに線が書けるようにがんばりました。

【使用ツール&テクノロジー】

Adobe Flash Builder 4
Adobe Fireworks

【審査員のコメント】

矢野りん 氏
この分野はAndroidにとても少ない系なので元美大生のAndroidユーザー(私)にとっては喜ばしいアプリ。作品の風合いもとてもよくて楽しそう。タブレット版が欲しい。

林 信行 氏
レイヤー管理も対応した充実の描画機能、Android端末でも滑らかな描き味を実現するパフォーマンスチューニング、スマートフォンの画面サイズを最大限に活かしつつ絵の邪魔にもならないUI設計、TwitterやFacebookの連携などバランスの良さが素晴らしい。

モバイルデバイス賞 次点 「めんこはん」 by kara-Sラボ

【アプリの概要】

「めんこはん」はSDK for Felicaを使用したお食事処検索アプリです。Felicaカードをかざして、京都 四条烏丸のお食事処を検索し、あなたにあったお店をおすすめします。使用技術:SDK for Felica、Adobe AIR、Papervision3D、ホットペッパーAPI

【審査員のコメント】

山本博士 氏
実用性を無視したかのような思い切りのよさに、感動すら覚えた。作り手のワクワク感が滲み出ている。独創的で、とても面白いコンテンツ。

Adobe AIR Contest 2011 総評

池田泰延 氏
デザイン的にも技術的にも個性豊かなアプリがたくさんあり、楽しく審査させて頂きました。AIRは登場当時よりウェブの技術を使っているということでネットワーク機能が充実していますが、今年も例によってネットワークと連携したアプリが多かったように思います。スマートフォン書き出しなどAIRが実行できる環境が幅広くなってきていることもあり、ネットワークとモバイルが結びついたアプリの登場が今後カギになるのか思います。

上条晃宏 氏
アプリケーションを「デバイスの機能を拡張するもの」として捕らえるという視点は、まだまだ可能性を持っていると感じた。その点「V-Drums Friend Jam」が最優秀賞に選ばれたのは象徴的だし、習作という印象はあったものの「めんこはん」のような試みがもっと増えることを期待したい。

林 信行 氏
Adobe AIR、最初のバージョンのリリースから3年。今回のコンテストでは、惜しくも賞は逃したが未だに多くのプレイヤーが存在し対戦相手探しに困らない「レー ザーバトラー」や往年の名作「CRIMSON ROOM」などが応募されたことでAIRの浸透ぶりと歴史の深さを改めて認識することになった。その一方で、CRIMSON ROOMを始め多くの作品がスマートフォン用となっていたことで、AIRのマルチプラットフォーム対応の魅力が際立ったのも特徴の1つだろう。しかし、なんといっても本格的なビジネスソリューションから音楽エンターテイメント、未来のライフスタイルを感じさせる作品まで非常に幅広いジャンルの作品が集まったことで、AIRの今後への期待が大きく膨らんだことが最大の成果だったと思う。

矢野りん 氏
ゲームや便利ツールなど、これまでFlashが得意としてきた領域のアプリケーションがAIRに乗って広まった時の可能性が垣間見られる興味深い成果物が集まりました。1つ欲を言うと、チームによるプロジェクトがもう少し増えてほしいです。開発担当者がビジュアルや画面設計といったデザイン領域まで1人で担当しているように感じました。デザイン面はやはり別の技能を持つ人間と是非コラボレーションしていただき、ユーザーの要求をより深く受け止めるような質を目指すとさらに面白くなるのではないで しょうか!

山本博士 氏
今年度もAIRの利点を活かしたアプリケーションがたくさん登場しました。実用的な観点に留まらず、ユーザーの遊び心をくすぐるようなUIが多いのは、AIRならではだと改めて実感しました。また、既存のFlashやPC向けアプリを素早くコンバートし、マルチプラットフォームに対応したアプリが多数見られたのは本年度の大きな特徴ではないでしょうか。AIRはレイアウトの自由度が高いので、その反面、操作性が著しく低下する場合があります。「万人にとってわかりやすい操作性を実現しているかどうか?」という部分が勝敗を大きく左右したように思います。

轟 啓介 氏
Adobe AIRの対象プラットフォームがPCだけでなくAndroidやiOSにも広がったため、AIRアプリケーション開発者にとっては、自分のアイデアをアプリケーションだけでなく、今まで以上にその利用シーンにも拡張して考えることができるようになってきたと思います。今年のAIR Contestでは審査対象作品の1/3がスマートフォンを活用しており、新たなアプリケーション開発のムーブメントを感じることができました。そんな中、最優秀賞に輝いた、PC向けのアプリケーションであるV-Drums Friend Jamは、しっかり地に足が着いたAIRアプリケーションだったことが、審査員の方々から高い評価を得たのではないかと思います。閃いたアイデア、その鮮度をダイレクトにユーザーに伝える、そんなアプリケーションを今後も期待しています。

Adobe AIR Contest 2011 審査員

池田泰延 氏(ClockMaker)
上条晃宏 氏(cuaoar.jp)
林 信行 氏(フリーITジャーナリスト/コンサルタント)
矢野りん 氏(6x6cm)
山本博士 氏(株式会社プラグラム)
轟 啓介 (アドビ システムズ 株式会社)