スマートフォンテストから始めるデータ・ドリブンな組織構築
モバイルファーストとは言うものの
昨今のスマートフォンやタブレットの普及により、多くの企業では「マルチデバイス対応」は避けて通れないという意識になりつつあり、実際に弊社の大多数のクライアントでもスマートフォンの最適化サイトを立ち上げています。その際、トップやカテゴリトップなどの一部ページのみ最適化をするミニマム版をとりあえず立ち上げるケースも多いのではないでしょうか。
PCサイトのミニマム版をユーザーが求めているのであれば問題はないかもしれませんが、ユーザーによってはPCサイトと同等の情報を求めてアクセスしたにもかかわらず、スマートフォンサイトでは情報が少ないことでユーザーが不満を持つかもしれません。また、スマートフォンは移動中にも利用されるため、ユーザーの所在地や短い時間で情報を手に入れたいなどコンテキストを理解した上でのコンテンツ提供が必要なケースもあります。
しかし、スマートフォンサイト構築に関する予算や人的リソースがPCサイトに対してあまり大きくないため、コンテンツの充実や追加機能の実装などが難しいというのもよくある理由の一つでしょう。もちろん、マルチデバイス、特にスマートフォン対応が重要であることは上層部も理解していることも多いのですが、<予算や人的リソースなどを大きく投資することによって、ビジネスインパクトも大きくなるのか?>という問いかけに対して、納得のいく回答をしない限り、追加リソースを得ることは難しいでしょう。
スマートフォン最適化サイト完結 vs PCサイト誘導
先日USで開催された Adobe Summit 2013での「モバイル最適化」に関するセッションでは、これに対する一つの答えにもなりうるヒントがありました。それは「スマートフォンでアクセスしてきた場合、スマートフォン最適化サイトで完結してもらうか、詳細情報のあるPCサイトへ誘導するか」というテストの実施です。
このテストでは「スマートフォンでアクセスしてきたユーザーはスマートフォン最適化サイト内で目的を達成したいのではないか?」という仮説のもと 、スマートフォンに最適化されたランディングページ内で目的を達成させるパターンと、詳細情報のあるPCサイトへ誘導するパターンでテストを実施しました。
その結果、スマートフォン最適化サイト内で目的を達成するパターンが勝者となり、コンバージョンレートの上昇率から、スマートフォンサイトへの追加投資がどの程度ビジネスインパクトを与えるのかが数値化されました。これにより、上層部も追加投資をする判断をすることができたそうです。
データドリブンな組織のために
今回のAdobe Summitでは、いくつかのセッションの中で「縦割り組織の中で、どうやって横断的なデータドリブン組織の構築を推進するか」というテーマが語られていました。その問いかけに対して、あるべき論ではなく、前述のようなテストで「30%の売上アップ!」といった数字が、他部署や上層部の意識を変えるきっかけにもなると考えられます。
モバイルに限らずテストを考案する際には「売上が高いパターンを見つける」だけではなく、「リソースを獲得する」といった上層部や他部署を意識した目標を立てることによって、組織がデータに基づく意思決定を重視する一助になるかもしれません。
筆者:芥川 公亮 アドビ システムズ株式会社 コンサルティング部コンサルタント
システムエンジニアやWebディレクターとして、Web制作に10年以上携わった後、2012年から現職。現在は、コンサルタントとして、企業のオンラインマーケティングを成功に導くための分析・最適化のコンサルティングサービスを提供している。