フォームの改善ポイントはここだ

フォームはコンバージョンへの最後の関門

コマースサイトや新規獲得(資料請求など)のサイトにおいて、購入完了や資料請求完了といった最終コンバージョンに到達するためには、必ずフォームページを通過しなければなりません。

フォームページでは名前や住所などのデータを訪問者に入力してもらうことになります。訪問者に面倒な作業をさせるわけですから、ページの作りによっては離脱を多く生んでしまう可能性もあります。

フォームページは何かしらのコンバージョンを達成しようとしている訪問者が訪れるわけなので、ここで離脱を多く生んでしまうことは非常にもったいない事です。しかし、逆に言えば、フォームページを改善することは、コンバージョンの向上に直結するわけです。

ただし、フォームページの多くはシステム的に処理しているため、改修に手間がかかってしまうことが少なくありません。やみ雲に仮説を立てては試すのではなく、より緻密な分析を行い、確度の高い仮説を作ってから改修にのぞむべきでしょう。

訪問者がフォームページで離脱するのはなぜ?

フォームページの具体的な分析に入る前に、フォームページでの離脱にはどのような原因があるか整理しましょう。

1:入力情報が多い/わからない

入力すべき項目が画面上にズラッと並んでいると、訪問者は入力が面倒になって離脱してしまいます。特に、コマースサイトなどでは、サイト側が顧客情報を欲するあまり、購入に不必要な情報まで求めるケースが目立ちます。

電話番号は会社、自宅、携帯と複数項目あるケースがありますが、恐らくどの属性かわかれば連絡先電話番号は1つで良いでしょう。また、会社名や役職名などの入力などもありますが、コマースサイトなどであれば必要のない項目です。顧客視点で見直すと少なくなる項目も少なくありません。

また、後述の入力方法のわかりにくさにも繋がる内容ですが、例えばクレジットカード番号の入力を求める場合に、フォーム画面にきてから入力してくださいという情報がでてきても、訪問者が番号を準備していなかったために離脱してしまうなどのケースも考えられます。

また、これを選択された場合はこちら、こちらを選択された場合はこちら、と細かい条件分岐など複雑な入力内容が要求されると、訪問者は「わからない」となって離脱してしまいます。

2:入力方法がわかりにくい

入力すべき内容がわかっても、フォームの作りがわかりにくいと、訪問者はイライラして入力を放棄してしまうことがあります。

よく見られるパターンしては、電話番号は半角入力なのに、住所の数字は全角入力しか受け付けない、などです。必須入力項目なのに妥当な選択肢がないケースもあります。例えば、職業が必須なのに自分の職業の選択肢がないと該当する訪問者は困ります。

これらのうち、どれが原因になっているのか? フォームページにおける訪問者の足跡をたどって分析し、仮説を構築していくことになります。

フォーム分析の進め方

それでは、離脱の原因が分かったことで、具体的な分析について触れていきましょう。どのように分析を進めていけばよいのでしょうか? Adobe Analytics(SiteCatalyst) では、次のような分析を行うことができます。

(1)エラー発生回数からフォームの作りを分析

フォームの入力エラーは、利用者がフォームでの入力をミスした結果起こります。フォームの現状や課題を把握するために最もポピュラーなアプローチは、エラー発生回数の集計です。

Adobe Analytics(SiteCatalyst) を利用した場合は、入力エラーが発生する度にエラーのIDや番号をトラフィック変数で集計することで確認がしやすくなります。なお、エラー発生回数は毎日分析しても大幅に結果が増減するものではありませんから、分析頻度は1ヶ月に1回くらい行えば十分です。

重要なのは、全角入力の箇所で半角入力されているためのエラーなど「どんな内容のエラーがどのくらい発生しているか」を知ることです。発生した回数別に上位から並べると、改善しなければならないフォームエリアがおおよそどこかが見えてくるはずです。

会員/非会員や選択された商材によって入力項目や条件が変わることも多くあります。Adobe Analytics(SiteCatalyst)のセグメントフィルタを利用することで、属性別でのエラーの確認もできるため、入力項目が多岐にわたってしまう商材の場合などは、セグメント別の分析も合わせて実施すると良いでしょう。

(2)エラー発生後の訪問者の行動を分析

先ほど(1)で説明したエラー発生回数は、発生した量がわかるだけです。もちろんこれでも十分の情報なのですが、エラー後に本当に離脱してしまったのか、場合によっては離脱をせずに遷移している可能性もあります。

Adobe Analytics(SiteCatalyst)では、エラーの発生後、訪問者がどのようにサイトを遷移したかを分析できるように計測設定することも可能です。エラー発生後もきちんと次の画面に移動したのか、あるいはFAQページを参照したのか、サイト自体から離脱したのか。訪問者の行動をより細かく追っていくことができます。

エラー発生後にどう遷移をしているかまで確認することで、サイトからの離脱を引き起こしてしまっているもの、エラーが発生してもきちんとその後先のページに遷移しているなどを把握できるようになり、さらに改修のプライオリティが付けやすくなります。

(3)フォームのどこで離脱したのかを分析

前述した(1)、(2)の方法はエラーが発生したあとの分析です。しかし、冒頭の理由で触れたフォームの入力量が多い場合などは、入力開始したところでつまずいてしまい、エラーを発生させる前に離脱をしてしまうこともあります。

このような訪問課題に対して仮説を組み立てる際に有効なのが、フォームエリアごとの離脱分析です。Adobe Analytics(SiteCatalyst)ではプラグインを利用することで、最後にフォーカスされていた(カーソルがあった)場所を計測することができます。

単純なエラー分析と異なり、「次へ」ボタンを押さずに離脱した訪問者の分析も行えるのが、この方法の特徴です。エラー発生には至らない、フォームの不備を見つけるのに役立つでしょう。

SAINTを利用し、上記のようにフォームのおおまかなエリアごと分けて離脱の多い入力グループを特定します。そこから気になる部分をクロス分析することで、下記のように入力フィールドの詳細な離脱のポイントを特定することができるようになります。

このような分析を通し、システム改修に手間がかかりがちなフォームページの改修にできるだけ確度の高い仮説を作っていくようにします。

※ここで紹介させて頂いたプラグインは導入のサポートが必要になりますので、導入を希望される際はアカウントマネージャーまでお問い合わせください。

訪問者像を想像しながら、改善の仮説を作り込んでいく

上記のような分析ができたら、次は改善への具体的な仮説を作り込んでいきます。訪問者像を想像しながら、何が課題であったかをリストアップしていきます。リストアップした課題は一覧としてならべて俯瞰できるようにします。俯瞰をしながら、冒頭でも触れている離脱してしまう理由を念頭に改善案を考えていきます。

入力フォームの量が多いのであれば、減らすことは可能でしょうか?または画面を分けることで複雑なフォームをシンプルに見せることは可能でしょうか?

特定のフォームでの離脱やエラーが多いのであれば、フォームのラベリングを変更すべきでしょうか?エラーチェックを寛容にすべきでしょうか?

必要に応じてフォームの前のページなども確認もすると良いでしょう。場合によってはフォーム自体ではなく、前ページでの事前説明が不足していたことが原因であることもあります。この場合の改善は前ページの説明を見直すだけで済みます。

冒頭にも触れたとおり、フォームの改善はコストがかかりやすい部分でもあり、かつテストもしにくい部分でもあります。しかし改善がされればコンバージョンへの貢献を非常に高い部分です。無駄なくサイトの改修を行うためにも、フォームの最適化にウェブ解析ツールを上手に利用していただければと思います。

筆者:安西 敬介 アドビ システムズ株式会社 コンサルティング部 シニアコンサルタント
2001年に国内大手航空会社のシステム子会社に入社後、システムエンジニアとして予解約システムの開発、予約フロー設計に携わったのち、コンテンツディレクターとしてサイトリニューアルなどを手掛けた。その後は、同社内のマーケティング戦略立案支援やウェブ解析の導入や活用促進に携わった。オムニチュアへは2008年に入社。エンドユーザーとしての経験を活かし、現在は企業のオンラインマーケティングを成功に導くためのコンサルティング業務を担当している。2009年アドビシステムズによる買収にともない現職。また、業界専門媒体などで積極的に執筆活動も展開している。