アナリティクスの基礎 ~ビジネスにつながる分析〜
分析をビジネスで効果的に活用するには幾つか重要なポイントがあります。
今回は「KBOツリー」を取り上げながら、ビジネスに役立つ分析を行うために、まず最初に整理すべき内容について触れてみたいと思います。
その分析、本当に必要ですか?
マーケティングツールの進化によって多様なアプローチの分析が可能になりました。そして色々なことができてしまうだけに、気がつけばついつい不要な分析をしてしまっていた、といった経験はありませんか?
もちろん多様な切り口から多量の分析を行うことで、それまで思いもしなかった新たな「気づき」を得られることもあります。使える時間に余裕があれば、時にはそういったアプローチも良いでしょう。
しかしマーケティングスピードが重視される昨今では、限られた時間の中で分析/考察を行い、PDCAサイクルをクイックに回すことを求められるケースの方が多いのではないでしょうか?
このような状況に対応していくには、必要とされる分析アプローチをできるだけ事前に絞り込み、それらを”軸”として分析していくことが有効です。
ビジネスゴールとKPIをつなぎこむ
必要な分析アプローチを絞り込むには、ビジネスゴールを達成するために「意味のあるKPI指標」を見つけなければなりません。そこで役に立つのが**「KBO(Key Business Objectives)ツリー」**と呼ばれるチャートです。
KBOツリーは ビジネスゴール、KBO(Key Business Objectives)、KPI(Key Performance Indicator)という3つのレイヤーで構成します。
ビジネスゴールはハイレベルな目標であり、企業として達成すべき経営上の数値などが入ります。KBOは、そのビジネスゴール達成のために必要な具体的な戦略/アクションにまでブレークダウンされたものになります。そしてKPIはその各KBOの進捗を把握するために測定すべき指標です。
**==例==
**仮にビジネスゴールを「オンライン売上高」と設定した際、その達成に必要な具体的なアクション、例えば「新規顧客の開拓」「既存顧客からの売上げアップ」といった要件がKBOに当たります。そしてそれらのKBOを計測するための指標、例えば「メール会員新規登録数」「既存会員再訪問頻度」「1訪問あたりの購入金額」といったものがKPIとなります。
つまりKBOツリーとはビジネスゴールから個々のKPI指標までをロジカルにつなぎあわせたものです。このKBOツリーを作成することで、何がビジネスゴール達成の上で意味のある指標なのかをクリアにすることができます。そして追うべきKPI指標が決まれば結果として必要な分析アプローチは絞られるため、それを軸に分析/考察を行うことで効率的にPDCAを回していくことができるようになります。
デジタルマーケティング全体の最適化へ
KBOツリーを作成するメリットは単に分析を効率的にするだけには留まりません。KBOツリーを作成するということは、ひとつひとつの施策がどのようにビジネスゴールに貢献しているのかを可視化することでもあります。
デジタルマーケティングと一言で言っても業務領域は非常に広範囲であるため、それぞれの業務単位で目標/KPIが設定された結果、気がつけば個別最適化ばかりが進み、全体最適視点がなくなっているケースも少なくありません。しかしKBOツリーを作り、それをマーケティングの指針とすることで、ビジネスゴールにむけた全体最適化の意識をチーム全員で共有することができます。つまりKBOツリーはデジタルマーケティングチームが行うすべての施策/アクションに共通の目標、目指すべき指針を与える**「羅針盤」**としても機能するのです。
KBOツリーはビジネスゴールに結びつく分析アプローチを策定し、効率的なPDCAに役立てることができ、さらにマーケティング施策全体の最適化にも役立てることができます。ぜひ皆さまのビジネスに応じたKBOツリーを作成いただき、ビジネスゴールの達成にご活用いただければと思います。
筆者:祖谷 考克 アドビ システムズ株式会社 コンサルティング部コンサルタント
1999年 東京大学経済学部卒業後、株式会社 博報堂にてマーケティング領域全般のプロデュース業務に従事。さらに2006年からはデジタルコミュニケーション戦略の立案サポートや、SiteCatalystによるアクセス解析をベースにサイト最適化を実現するなど、主にデジタル領域でのプラニング/プロデュース業務を担う。2013年より現職。テクノロジーを活用し、デジタルマーケティングをいかにビジネスの成功に結びつけるかという視点からコンサルティングサービスを提供中。