データドリブン型組織への道

アナリティクスは経営課題へ

日本でも経営課題としてのアナリティクス(分析、解析)に注目が集まっています。これは、ビッグデータ、データサイエンティストといったキーワードが、一般紙やテレビ番組でも取り上げられる現象を見ても、明らかでしょう。

消費者や顧客の行動はデジタルにシフトし、企業にとっての顧客接点も大きく変わりました。
そこで、従来型のマーケティング活動に加え、デジタルチャネルの特性も取り入れたマーケティング活動、いわゆる「デジタルマーケティング」が大きな注目を集めている…このトレンドが、現在の企業を取り巻く経営環境として重視されている背景と言えます。

このトレンドや背景を定量的に把握するため、アドビはこのたび、日本国内企業を対象とした市場調査を実施、発表しました。詳細はレポートをご覧いただければと思いますが、ポイントのひとつとして、デジタルマーケティングを推進するためには、経営層の理解と共に、実行する組織と人材が課題となっている、ということが明らかになりました。

アナリティクスを経営の武器に据えて、仮説と検証をすばやく回す。これを「データドリブン」な経営、データドリブンなマーケティングと呼ぶとすれば、この「データドリブン型組織」への変革が、企業にとっての次なる優先事項と言えるのではないでしょうか。
先週発表したように、データドリブン型組織へのシフトという経営判断を行う企業は、今後も増えていくことでしょう。

では具体的に、そもそもデータドリブン型組織とはどのようなものでしょうか?そして、どのように変革を進めるべきでしょうか?経営陣から現場業務を支えるマーケターまで、企業経営やマーケティング活動に携わるすべての皆さんが興味をお持ちのことと思います。
この重要な課題に対して、ホワイトペーパー日本語版『データドリブン型組織を作るには』をご用意しました。
また今回のブログ記事では、その著者であるアドビのエバンジェリスト、ブレント ダイクス(Brent Dykes)の解説をお届けします。

※以下はUS Digital Marketing Blog「Building a Data-Driven Dynasty with Digital Governance」の翻訳です。

ガバナンスとは?

「デジタルガバナンス」という私の考えについて、私はこの何年も、ブログ記事の執筆やOmniture Summit/Adobe Summitでの公演といった活動を通じて、皆さんと共有してきました。
「ガバナンス(governance)」という言葉は、どうやら人それぞれに感じ取る意味合いが違っているようです。たぶんそれは、似ているけれどもあまり人気のない言葉、「ガバメント(government)」からの良くない波及効果からではないか、と見ています。英単語としては六文字まで同じですが、ここでの本題となるガバナンスは、中堅企業から大企業でのオンライン分析に対しては、間違い無くポジティブな効果を与えるものです。

私はデジタルガバナンスの定義として、データドリブンな、データ重視の組織の成功へと繋がるように、あらゆる組織要素を整えることだと考えています。

分析のテクノロジーは進化を続け、データ量も多様性も年々増していますが、分析の取り組みを成功させる要因は変わっていません。五年前の時点での成功要因は、2013年でもそれ以降でも同じです。何らかの新たなアプローチや検討事項があったとしても、本質は変わらないのです。

組織への web分析の浸透を阻むもの

以前ご一緒した、様々な業界の大規模多国籍企業のweb分析コンサルタントは、だいたい同じような課題を抱えており、何度も似たような失敗を重ねていたものです。

コンサルタントとなる理由のひとつに、特徴的なものがあります。それは、複数社で起きたことを客観的に捉えることによって、もしひとつの会社だけで働いていたら気づかなかいような、パターンに気づくことができるのです。ただ、同じ過ちが何度も何度も起こるのを見るというのは、何とももどかしい体験です。特にこうした企業は、デジタルに大きく投資しており、分析によって成功を収めたいと願っている訳ですから、余計のそう感じます。

私は、より多くの企業がデジタル分析プログラムの確立に成功できるように、アドビのコンサルティングチームが様々な企業と仕事をしてきた中から得られた、数々のベストプラクティスを見出しました。

しかしながら、本質的な問題を解決しなければ、ベストプラクティスというのは単に絆創膏を貼るだけのようなソリューションだと、私はすぐに気づきました。

本質的な解決策

本当に必要なのは、分析を組織の糧にすることのできた場合と、苦戦した場合、失敗した場合の原因について、その原則を示し、理解するためのフレームワークでした。

既に存在するいくつかのwebアナリティクス成熟度モデルは、役には立ちますが、私はそれらに依然欠けているもの、見落としていること、誤った捉え方があると感じていました。

そこで私は、新たなデジタルガバナンスフレームワークと成熟度モデルを構築し、このトピックにこれまでと異なる世界をもたらそうとしました。この新しいフレームワークに取り組むうちに、私が様々な会社で出会った問題にはしばしば互いに関連性があり、様々な局面がある、ということに気づきました。

それらは解きほどくことができます。私はこれを、成功するデータドリブン型組織を構築する上で重要な要素として、六つの主要領域へとまとめました。

この六つの主要要素のうち、人材、プロセス、テクノロジーについてはよく耳にされるのではないでしょうか。そこへ私は、組織にとってアナリティクスを成功させる上での促進ないし阻害要因となる影響要因として、リーダーシップ、戦略、組織の柔軟性の三つを加えました。それぞれの主要要素は、それらを構成する要素へと分解できます。そしてこれが、このフレームワークと他の成熟度モデルとの実際の違いをなる部分です。

例えば人材のカテゴリーは、四つの構成要素が含まれています。内訳は、リソース(必要なスタッフの種類、役割と責任など)、経験(スキルと前提知識、トレーニング方法など)構造(チーム組織、所属など)、コミュニティ(内部支援、ベストプラクティス共有など)です。

このデジタルガバナンスのフレームワークにより、みなさんの特定のギャップや弱点に対して、会社からどのような支援が必要なのかを特定することができるでしょう。

データドリブン型組織のためのフレームワークの詳細

こうした新しいコンセプトを二年前のAdobe Summitで発表した後、私はこの情報をもっと多くのデジタルアナリティクス担当者やデータドリブン型へと取り組む経営層のために、お伝えしたいと考えていました。そこで、ご紹介した新しいデジタルガバナンスフレームワークについて解説した15ページのホワイトペーパーを、無償でダウンロードできるようにご用意しました。

その中では、優れたデジタルアナリティクスプログラムを実現するための様々な要素や構成要素について、詳しく解説しています。もしスポーツがお好きでしたら、優勝チームを作り上げることは、データドリブン型組織を作り上げるのと似ている、というと分かって頂けるのではないでしょうか(スポーツに興味が無くとも構いません。それほどスポーツへの例え話がある訳ではありませんので)。

みなさんが社内でこのホワイトペーパーを活用し、デジタルアナリティクスへの投資からより高い成果を得られるようになるための、戦略の指針になればと願っています。さあ、ゲーム開始です!

Brent Dykes