《イベントレポート》アクションにつながるデータ活用のメソッド

マーケティング活動は、仮説と検証の繰り返しです。そこで重要になってくるのが、何をもって成功を測るか、と言えるでしょう。データ分析、アナリティクスが重視される理由のひとつが、そこにあります。具体的には、マーケティング活動を数値で計測し、そのデータを分析して、新たにわかったインサイト(知見)をもとにして次の改善や施策につなげる、つまりアクションするというのが重要になる訳です。

今回のブログ記事では、主にWebサイトを中心とした「データからアクションへ」というテーマについて、弊社コンサルタントの芥川が社外イベント「Web担当者Forumミーティング 2013 Spring」で昨年講演した内容をもとに、講演内容を整理し直してお届けします。

なぜ分析がアクションにつながらないのか?

データの収集や定期的なレポーティング、気になるデータのアドホックな分析は、デジタルマーケティングに携わる方であれば日常的な業務になっていると思います。しかし、それがアクションにつながっているのか?という疑問に関しては、多くの方がYesとは言えないのではないでしょうか。

アクションにつながらない理由は、主に以下の3つの課題にあります。

  1. 分析している時間がない
  2. 時間があっても、そもそも分析の仕方がわからない
  3. 分析しても、アクションのための社内の協力が得られない

この課題を解決しないと、データをアクションにつなげることができません。

分析からアクションにつながらない理由

解決のポイントは社内のシェア

デジタルマーケティングにおいて、データに基づいたアクションを行うためには、通常、クリエイティブ、コーディング、システム開発担当など、マーケティング担当者以外のリソースが必要になります。それには、リソース確保のための上長の決裁などが必要になります。そのため、当然アクションのための根拠が欠かせません。

通常、データ分析結果は、このようなアクションのための根拠として利用されます。しかし、これをより活用するためのポイントがここにあります。

マーケティング担当者一人で分析から改善案の企画まで抱え込むのではなく、代わりに、データ分析、課題抽出、課題の理由としての仮説構築、改善案のディスカッション、分析結果とアクション案に至るまでの各プロセスについて、社内の関係者を巻き込むことができれば、各担当者が主体的に考えるようになり、社内の協力を得やすくなります。

次に、今述べた「分析」「仮説」「改善」の各ステップのポイントをご紹介します。

分析1. ビジネス要件は売上向上だけ?

データを分析していると、さまざまな課題が出てくるでしょう。特定のランディングページの直帰率が高い、フォームの離脱率が高い、など。その課題はそれぞれ改善することで、ビジネス上プラスになりますが、ここでのポイントはビジネス要件です。

例えば、「売上向上に結びつけば何でも良い」という要件だと、ヘビーユーザー向けに改善することで直近の売上は向上するかもしれません。しかしその影響で、単価の低い新規購入者は減少してしまうかもしれません。

ビジネス要件を踏まえてどのKPIを重視して分析するべきかを、事前に社内で共有することが非常に重要です。なお、ビジネス要件を整理する際には、KBO(Key Business Objective)ツリーを使って整理するとよいでしょう。

KBOツリーの例

分析2. ユーザー行動を文脈で考える

ユーザーはさまざまな動機や興味を持ってサイトへ訪問し、サイトを利用しています。そのシチュエーションはさまざまです。そのため、コンバージョンに至るまでは幾つものステップがあります。それはデータで捉えられるアクションだけではなく、心理的なステップも含まれます。例えば、「特定のキャンペーンページのパフォーマンスが高い」という結果が出たとしても、単純にそのキャンペーンの露出を高めるのは早計かもしれません。そこで、「どんな経路でそのキャンペーンを経由してコンバージョンしているのか」という分析を加えて実施してみれば、流入経路で差が出ている等の新たな課題や機会を発見することができます。

ユーザーの文脈をきちんと捉えるには、次のような分析の視点が重要でしょう:
・どんなページを見てからそのページに来たのか?
・そのページを見てからどんなページを観に行っているのか?
・サイトへはどのような経路で訪問しているのか?

パス分析の例

このように分析の際には、「そのアクションをとっている理由はなにか?」「リピーターが多いからスムーズに進んでいるのか?」などの、ユーザーの心理状態も考察しながら行うと更によいでしょう。

分析3. データの比較

単独の数字から意味を読み解くことは至難の業です。データは別の軸のデータと比較しないと、判断がつきません。「直帰率が何%」というのが悪いのかどうかは、他のページや直帰率のトレンドを踏まえて、初めて判断がつきます。

また、「新規/再訪問」や「購入/非購入者」などの、セグメント同士の比較分析も重要です。「全体的には問題なさそうに見えるが、新規訪問に注目する大きな課題がある」といったことは、よくあるケースです。

仮説. 3Cフレームワークを利用

データから得られた課題は事実でしかありません。「なぜそうなったか?」という理由を考える上で、仮説は重要です。まずは分析したデータを元に、ユーザーのおかれたシチュエーション(Customer)を考えますが、これは当然でしょう。ここでのポイントは、さらに、ユーザーが競合他社(Competitor)と比較して自社サイト(Company)を訪れていると想定し、「3Cフレームワーク」で仮説を考えましょう。

3Cフレームワーク

改善. スピーディなABテストでQuick Win

課題と仮説をベースにした改善案が出てくると、いよいよ「ではアクションをしよう!」という流れになると思います。しかし、そのままアクション後のデータを分析して、結果として改善をしたと言えるのでしょうか?データ分析時点とアクション後は、当然ビジネス環境も変化します。

例えば、データ分析を元にして課題となっているページのナビゲーションを変えたところ、コンバージョンが向上したとします。しかし、ナビゲーションを変更したタイミングで、新商品発売や大幅値引きのキャンペーンなどが発生してしまうと、コンバージョンの向上がナビゲーションの変更によるものなのか、新商品や値引きによるものなのか判断がつかなくなります。これでは改善をしたかどうかの証明が難しくなります。

そこで同じ期間に、訪問者ごとに「元々のページ」と「改善後のページ」を見せ分ける、というA/Bテストを実施すれば、改善効果を数値で証明することができます。

ちなみに、このA/Bテストをうまく使って社内の協力を得る方法があります。それは、開発作業などの発生しない簡易なABテストで成果を出す、という方法です。それにより「こんな簡単な根拠で売上がこんなに上がるのか!」という社内の認識を得ることができ、その後の継続したアクションにつなげることができます。

弊社のAdobe TargetではA/Bテストを始めとする様々なテストやターゲティングを行えますが、このAdobe Targetをご利用いただいている弊社のお客様では、年間平均192パターンがテストされています。1回4パターンでテストが行われていると仮定すると、毎週1回テストされているという計算になります。また初めのうちは、「最低月1回のテストをする」というようなプロセスを作ると、やがて継続的な改善サイクルを実現できるようになります。

CTAとなるボタンのテストの例

データをアクションにつなげる組織に

冒頭からお伝えしている通り、データをアクションにつなげるために重要なポイントは、社内の協力や賛同を得ることです。また、一過性ではなく継続的な改善のためのプロセスも必要です。ぜひ、組織的でかつ継続的な分析にもとづくアクションを実施して、ビジネスを成功させましょう。

アドビ システムズ 芥川

本投稿は「Web担当者Forumミーティング 2013 Spring」にて、弊社コンサルタントの芥川(写真:右)が「Action に繋がるデータ活用」というテーマで講演した内容を元にお送りしました。
本セミナーのレポート記事(Web担当者Forumサイト)