“Best of MAX” InDesign 使い方の棚卸し
CREATE NOW “Best of MAX” セッションレポート
紺野 慎一氏のセッションレポート
さる2014年11月8日に六本木にある東京ミッドタウンホールにて、各業界で活躍するクリエイターが一同に介し、最新版Adobe Creative Cloudの魅力を語る一大イベント『CREATE NOW “Best of MAX”』が開催された。
その中でInDesign CCに関するセッションとして、凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 デジタルコンテンツソリューションセンター 技術部 紺野慎一氏によって『使い方の棚卸し』をテーマとした講演が行われた。講演ではInDesignの最新バージョンであるInDesign CC(2014)の新機能について、およびInDesign全般におけるテクニックや使い方のコツなどが紹介された。
いずれも細かな部分ではあるものの、印刷やデザインの現場に携わる人にとって有意義な情報とあって、聴衆の大きな関心を集めた。
https://www.youtube.com/watch?v=BK81B-SwdgA&list=PLF_lcvNhVWn_8HzG_fK7RrOpHS6KVDlyV&index=11
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最近の入稿状況
まず始めにセッションの冒頭で、紺野氏が勤める凸版印刷での入稿状況が報告された。紺野氏によると、1月にInDesign CCの入稿に対応して以来、およそ10%強の人達からCC/CC(2014)バージョンによる入稿が依頼されるそうだ。CS4以下がおよそ30%、CS5とCS6による入稿がおよそ50%の割合となっているという。
1年前はCS4以下の入稿が一番多かったのだそうだが、この1年間でCC/CC(2014)へ移行する人達が増え、今後もこの傾向は続くだろうと紺野氏は分析する。
最新のサブバージョンで入稿しよう
入稿状況の話に続いて、サブバージョンについて講演が行われた。Adobeが提供するアプリケーションには同一のバージョンであっても、リビジョンが異なるバージョンが存在する。それが『サブバージョン』だ。
サブバージョンはInDesignメニュー/InDesignについてをcommandキー(Win版はヘルプメニュー/InDesignについてをCtrlキー)を押しながらクリックすると表示される「Adobe InDesignコンポーネント情報」から正確に確認できる。これまでバージョンアップのたびに、サブバージョンを忘れずにメモしている紺野氏によると、すでに最新のCC(2014)でも「10.0.0.70」から「10.1.0.71」へとサブバージョンがアップデートしている。
「サブバージョンを正しく認識することは、出力トラブルを防ぐ最重要項目の1つ」だと紺野氏は語る。同一のバージョンであっても、サブバージョンの違いによって、画像や組版の出力結果に思わぬ不具合が発生する場合があるからだ。
通常、印刷会社や出力店は、最新のサブバージョンで環境を整えているため、出力を依頼する場合は原則として最新版のサブバージョンにアップデートすることが肝心だ。
InDesignのバージョン
サブバージョン
CS
3.0.0.440、3.0.1.460、3.0.1.814、3.0.1.838
CS2
4.0.0.436、4.0.1.622、4.0.2.633、4.0.3.651、4.0.4.658、4.0.5.688
CS3
5.0.0.458、5.0.1.622、5.0.2.640、5.0.3.662、5.0.4.682
CS4
6.0.0.458、6.0.1.532、6.0.2.544、6.0.3.557、6.0.4.578、6.0.5.602、6.0.6.622
CS5
7.0.0.355、7.0.1(German and Swedish versions only)、7.0.2.522、7.0.3.535、7.0.4.553
CS5.5
7.5.0.142、7.5.1.304、7.5.2.318、7.5.3.333
CS6
8.0.0.370、8.0.1.406、8.0.2.413
CC
9.0.0.244、9.1.0.33、9.2.1.101、9.2.2.103
CC(2014)
10.0.0.70、10.1.0.71
CC(2014)を使うことの意義
続く講演では、CC(2014)で修正された不具合や追加機能がいくつか紹介された。まずCC(2014)で解消された不具合の例として「合成フォント」使用時の「文字組みアキ量設定」に関する問題が紹介された。
CCでは、文字組みアキ量設定/和欧間/和文と英数字の間のアキ量が無視されていたが(詳しくはhttp://study-room.info/id/studyroom/cc/study07.htmlを参照)CC(2014)では、この不具合が解消されている。新規の機能もありがたいが、こうした不具合が修正されていることも大切であり、CC(2014)を使う大きな意義であると紺野氏は語った。
合成フォントの場合CS6までは問題のなかったアキ量(和文と英数字ベタ固定)が無視される
従属欧文の場合はアキ量(和文と英数字ベタ固定)が無視されない
フォントリストについたスクロールバーが便利
紺野氏は「細かいところですが…」と前置きをしつつ、CC(2014)で大変助かっている追加機能のひとつとして紹介したのが、フォントリストに追加されたスクロールバーだ。
業務上、約6,000書体のフォントをインストールしているという紺野氏だが、これまでフォントを選択するにはリスト下部にあるスクロールボタンを押し続けていなければならなかった。しかし、スクロールバーが追加されたことで、任意の場所へすぐにジャンプさせることができるようになった。
またフォントについては検索に「あいまい検索」機能が追加されたことにも言及した。おおよそのフォント名を入力すると候補がいくつか表示される仕組みになっている。これらの追加機能は全体から見れば小さなことかもしれないが、作業効率の向上にとても有意義な新機能だと紺野氏は語った。
表組みの編集が便利に!
続いて紹介された追加機能は、表組みの機能強化だ。スクリーンの画面いっぱいに広げられた表組みが表示されると、紺野氏はそのいくつかを選択し、ドラッグで位置の変更を行ってみせた。
以前であれば、コピー・ペースト、行や列の挿入・削除と複数の操作を行わなければならかったが、ドラッグ&ドロップで位置変更ができるようになり、大変助かっているという。マニュアル作成のケースなどで大いに役立ちそうな機能だ。
パッケージ作成時「PDF(印刷用)を含める」と「IDMLを含める」オプション
CC(2014)ではパッケージ作成時に「PDF(印刷用)を含める」のオプションが追加された。「当初は余計なお世話ぐらいに思っていたんです。ただこれが使ってみると意外に便利でびっくりしています(笑)」と紺野氏は語る。紺野氏曰くここ最近のワークフローでは、データアップと同時にPDFを書き出すケースが増えており非常に重宝しているそうだ。
もう1つのオプション「IDMLを含める」についても興味深いTipsが紹介された。ファイルがなにか怪しいことになっている時や旧バージョンで作成されたファイルをCC(2014)で流用するような時には、ファイルを「クリーニング」する意味でいったんIDMLで書き出して再度InDesignファイルにするというTipsだ。もちろんすべてのケースで有効ではないかもしれないが、一つの方法としてチェックしてみることを薦めている。
紺野 慎一(こんの・しんいち)
凸版印刷株式会社
凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 デジタルコンテンツソリューションセンター 技術部/1970年東京都生まれ。都立工芸高等学校デザイン科を卒業後、デザイン事務所、編集プロダクションなどを経て、1993年に凸版印刷株式会社入社、現在に至る。ディレクターとして数多くの書籍、雑誌の組版設計に携わり、特に書体における膨大な知識に基づく的確なフォントディレクションに注目が集まる。著書に『組む。InDesignでつくる、美しい文字組版』(ビー・エヌ・エヌ新社)