モバイルWebのUIデザインことはじめ : 第7回 どんなときに使うのがモバイル? その1:モバイルは行為を情報化する
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
モバイルWebに最適なデザインを考えるうえで、実環境におけるモバイル機器の用途を理解することはかかせません。
そこで、ラスベガスで開催された世界最大の家電展示会「2015 International CES」で話題になった「Internet Of Me(IoM)」というキーワードが理解の助けになります。
Internet Of Meはいわゆる「Internet Of Things(IoT)」に関連する概念として昨年あたりから話題になり始めました。
IoTとIoM
IoTは機器どうしがネットを介して繋がって情報を共有し、制御し合うしくみのことです。IoMはそこから一歩進んで、「人(わたし)」を中心に据えた概念となります。
人から得られる情報をモバイルが取得し、機器や人の間で共有、制御しようというわけです。そして、最終的には個人の行動に照らし合せたうえで都合にあった情報(パーソナライズされたコンテンツといいます)を人々が活用しやすくするしくみづくり目指しています。
では人から得られる情報とはなんでしょう?分かりやすい例では移動距離があります。1日の歩数を取得して健康状態を測ったり、アドバイスするアプリがこの情報を活用しています。
また、GPS付きのスマートデバイスで追跡、取得できる現在地も重要な情報です。自宅で「おいしいレストラン情報」を探すのと、移動中に「この近くでおいしいレストラン情報」を探すのとでは求める結果が大きくかわりますが、現在地はこうした要求に応える大きな手がかりになります。
矢野のGoogle MapsによるLocation History。 https://maps.google.com/locationhistory/ にアクセスしてGoogleアカウントにログインすると閲覧できます。Google Mapsをインストールした端末でGPS機能をオンにしたままにすると記録できます。
Googleによると、人による検索行為の5回に1回が、現在地に関係のある内容だそうです。また、「この近くで」という条件付きの検索は2011年から2014年まで5倍に増えているとのこと。
こうした現在地に関わる検索のほとんどが、持ち運びに便利なスマートフォン経由の検索であることはいうまでもありません。
スマートフォンといえばなんとなく「小さいパソコン」という程度の位置付けととらえがちですが、移動中にウェブページを見たり、地図で場所を調べたり、メッセージのやりとりをするなどして使っているうちに、私たちの行動をどんどん情報化し、蓄積しているのですね。つまり、ウェアラブルデバイスやスマートフォンは「行為を情報化するデバイス」なのです。
Android Wear http://www.android.com/wear/ 腕時計型の端末で、GPSや移動センサによる行動のインプットができます
このようなインプットデバイスとしてのモバイル機器を考えると、モバイルユーザーがこの先ますます「パーソナライズされた有効なコンテンツ」を求めるようになるだろう、ということも納得できるのではないでしょうか。
つまり、モバイルコンテンツは必要な情報にだけ常に触れることができ、不用なものはすぐ消したり非表示にできる。そんなデザインが当たり前に期待されるようになるでしょう。PC全盛期のようにただ探しやすく、読みやすいコンテンツでは物足りない時代になったのです。
次回は、アウトプットを確認するためのデバイスとしてのスマートフォンの利用シーンについて解説します。
※Googleによる調査結果については「2015年にマーケターが知るべき技術的トレンドトップ3」に掲載されています。