調査から明らかになった、現代の消費者行動に影響を及ぼす重要な要素

捉えにくい消費者行動を見る

このたびアドビは、グローバルではなく日本市場に特化した取り組みとして、消費者行動とデジタルメディアとの関係について調査を実施し、その結果を発表しました。この記事では、この調査の背景について少しお伝えします。

古典的な消費者行動のモデルとして、「AIDA」や「AIDMA」といった法則があります。これらの法則は、今から100年ほども前に提唱されました。インターネットが普及した今世紀以降も、時代に即したさまざまなモデルが議論されています。社会の動きがこれほど早い今日でも、こうした法則がしばしば議論されるのはなぜでしょうか。

本質的にはふたつの側面が考えられます。つまり、消費者行動というものを合理的に理解したい、把握したいというマーケターの願いが一方にあり、もう一方には、人間の心理というものの普遍性がある、ということです。

人間の心理には、極めて不合理であいまいな側面があります。そのため、それを特定のシンプルなモデルで表すことは極めて困難です。モデル化の試みとは、その困難さを踏まえつつ、ある程度集団を代表しうるような形に抽象化し、おおまかに全体感を把握すること、にあります。

合理的に行動しない消費者

私たちのふだんの購買行動を振り返ったとき、何らかの商品やサービスを初めて認知し、最終的に購買へと至ったとして、その間、どのような行動を取るでしょうか。知ってからすぐ購入する商品もあれば、じっくりと検討する商品、いったんは頭の中心からはずれ、何かのきっかけや特定の状況になって気になって検討し直した、というような、さまざまな行動様式がありえます。

それは商品の特性によるでしょうし、価格帯によっても違うでしょう。生活の特定の場面や条件に関わる商品もあります。そして購買行動は、認知から関心、関心から購買へ、といった直線的には動きません。自分の中の「買いたい」という気持ちに影響を与える要因は、それこそ千差万別と言えます。

一方で例えば、「自分の知らないものを購入する」という行動は、通常は考えにくいことです。また「欲しくも無いのに買う」ということも、ひんぱんに起きることではないでしょう。人の心理には非合理的な側面がある一方、例外的な要因を除けば、ある程度のモデル化はなり立ちます。

典型的には、購買行動が発生する前提条件として、「認知する」「買いたいものかを検討する」「買う気になる」といった段階を想定することです。

デジタル時代と消費者

今回実施した消費者行動調査では、消費者が特定の商品を認知し、自分が買うべきものかどうかを「検討」する段階、「買う気になる」段階、を想定しています。

もちろん、認知してすぐ購買へと至る、つまり「検討」の敷居が低く時間が短い商品もあるでしょう。ただ今回は、一定の「検討」段階を経ることを想定しました。

「デジタル時代」という表現は、総務省が公開している「通信利用動向調査」を見ると実感できます。この調査は、日本の各世帯と企業における情報通信サービスの利用状況等を、毎年1~3月にかけて調べたもので、6月頃に結果が発表されています。最新は「平成25年通信利用動向調査」で、2014年6月27日に公表されたものです。

この調査によると、「インターネット利用者数及び人口普及率 (個人) 」は、実に人口の82.8%に達しています。

また「端末別インターネット利用率(個人)」によると、スマートフォンは42.4%、携帯電話は24.5%、タブレット端末は12.4%、と続いています。年代別では20~29才の実に70.6%が、スマートフォンからのインターネット接続を利用しています。

デジタルメディアが消費者行動に及ぼす影響

これだけデジタルメディアが消費者の生活に浸透すると、そこから得られる体験が、消費行動に影響を大きく与えているはずです。

今回の調査は、そのデジタルメディアが及ぼす影響、とりわけWebサイトの影響について注目しました。結果は想像通り、あるいは想像を上回るものでした。

詳しくはホワイトペーパーをご覧いただきたいのですが、認知、検討、いずれもWebサイトをはじめとするデジタルメディアの影響の大きさが、定量的に判明しました。

かつてネットが普及する前の時代に、企業が消費者に認知してもらうためのメディアは、「マス4媒体」などと呼ばれるテレビ、新聞、雑誌、ラジオが中心でした。企業は膨大なマス広告費を投資して、消費者の認知を計っていた訳です。

デジタル時代に入っても、認知のための「リーチ」の力という面では、テレビの影響は引き続き大きいことがわかりました。他方、興味を持ち、詳しく知りたいと感じた消費者は、実に88.3%がWebサイトを「よく見る」「たまに見る」と回答しています。

さらに重要なのは、テレビで知った商品の特長、気にかかった点など、消費者の期待することと、Webサイトが提供する体験が異なっていた場合の影響です。実に62.6%の消費者が、情報の矛盾や情報の欠落といった状況を経験すると、商品を検討することや、購買すらも中断してしまう、という事実です。

企業が取り組むべきことは

これは、Webサイトの「見た目」や「使い勝手」の問題ではなく、顧客の期待に合った情報の見せ方や粒度、顧客の段階に即した提案、さらにはテレビや店頭で展開している施策や内容の整合性や一貫性といった、メッセージやコミュニケーションのあり方、が課題になっているということが言えます。

いわゆる、「適切なWebエクスペリエンスを提供できているか」という問題が問われている訳です。そのためには、戦略、施策、各チャネルの管理のしかたなど、多方面での密接な統制や管理が欠かせません。

今回の調査で浮き彫りになった消費者の購買行動によって、「企業としてどのような対策をすべきか」を、見つめ直す機会になればと思います。ぜひ調査レポートもご覧ください。

参考情報:

ご案内: 調査レポート最新版の「消費者行動調査2016」につきまして、情報サイト「UNITE」に解説記事を掲載しております。最新動向につきましては、こちらの記事もぜひご覧ください。 コミュニケーションロスが売上損失に直結。アドビ「消費者行動調査2016」に見るデジタル時代の消費者意識とは