モバイルマーケティング活用術その3:科学の時代に勘に頼るのはなぜ?

by 国和 徳之

Posted on 03-03-2015

モバイルアプリのPDCA

「モバイルはマーケターにとって、新しい重要なチャネルにる」と言われ始めてから、ずいぶん時間がたちました。もはや誰もが、その重要性については自然に受けてとめており、ことさら言うまでもありません。問題は、「なぜ」ではなく「どうやって?」の部分でしょう。

特にモバイルアプリを、機動力の求められるマーケティング活動のPDCAサイクルに組み込むには、注意が必要です。アプリをいったん開発、公開、提供してしまったら、新たなアイデアに基づいてアプリに手を加えて施策を改善しようとしても、特別な仕掛けがなければ、容易にはいかないものです。ちょっとしたアイデアを試すために、アップデート版を開発し、改めてアプリ利用者にダウンロードしてもらう、という手間を強いなければなりません。

そうしたモバイルアプリのマーケティング施策の改善と最適化を容易にする仕掛けが、Adobe Marketing Cloudのコアサービスに含まれる「Mobile services」です。2014年はじめに登場したこのサービスを活用した、モバイルマーケティングの実践方法をご紹介するシリーズのまとめを、Strategic Marketing leadのレイ パン(Ray Pun)によるブログ記事の翻訳でご紹介します。

※以下はUS Digital Marketing Blog「Part 3: Mobile Marketing Just Got Easier — Optimize that App: Why Guess When We’ve Got Science?」の翻訳です。

この記事は三回シリーズの最終回です。一回目は<こちら>、二回目は<こちら>です。

科学的アプローチとモバイルアプリ

大学生時代を思い起こすと、化学の実習で、実験をしたときのことが浮かびます。授業の間、白衣を着てゴーグルをかけ、科学の原理に基づいて臨んだものです。仮説を立て、あるいは想定事項を教わり、実験で検証を行います。はたして仮説は正しいのか、誤りなのか?その50分の実験を通じて、仮説を検証する、あるいは反証する、ということを経験しました。

今日のモバイルアプリの世界も、科学実験のようなものです。優れた組織ならば、戦略の試行と検証に科学的な方法論を用いています。勘と経験、感性と思い切りに頼るだけとマーケティングは、過去のものです。しかも新たなテクノロジーにより、モバイルマーケティング戦略が組織の収益性に影響を与えることがてきているか、システマチックに理解することができるようになったのです。

モバイルチームの疑問は、科学的に回答を得ることができます。質問は例えば次のようなものです:

ただ、最も根本的な疑問はこれでしょう:なぜアプリの最適化は重要なのでしょう?その答えは、収益向上に繋がるからです。
さらに言えば、アプリのテストを行うことが、「より良いアプリのエクスペリエンスとは何か」を探る上での助けとなり、そうした良いアプリが、収益力の強化をもたらすのです。このような成果こそ、企業が求めているものではないでしょうか。

この記事は、「モバイルマーケティング活用術」と題したシリーズの最後で、アプリを最適化することの効果と、モバイルターゲティングをマーケティング戦略の中に位置付けるメリットを解説していきます。

小さな画面は、ミスの余地も小さい

スマホアプリというものが登場した2008年以来、多くのユーザーエクスペリエンスは、誰かの直観であるとか、良いエクスペリエンスとはかくあるべきという信念であるとか、そうしたことに基づいていました。その誰かとは、よくあるのは、アプリ開発者や製品マネージャーといった立場の人でしょう。アプリ開発者というのは勉強熱心ではありますが、利用者像や、マーケターが狙いたい顧客層といったものを、必ずしも正確に把握しているとは限りません。

モバイルエクスペリエンスを設計するにはさまざまな方法がありますし、理想的なアプリの要件というのも変化していきます。
では、どの要素が顧客を引き付けるのかを、どうやって決めたらよいのでしょうか?モバイルアプリの場合、特にスマートフォンの場合には画面サイズが限られますので、表現すべきものがうまく見えないといったミスが許容される余地も小さいですし、探したものがみつからないといった不適切なエクスペリエンスも致命的になります。

そこで、最適化テクノロジーの出番となります。
あいまいな思い付きではなく、科学的な検証というアプローチを取り入れることで、顧客に好まれるのはどんな見せ方なのかを定量的に把握することができます。直感が最善とは限りません。

顧客導線をA/Bテストする

モバイル利用者は、とにかく使い勝手、すぐれたエクスペリエンスというものを期待します。そのためアプリを提供する企業には、優れた操作性を追求することが求められているのです。

みなさんは、顧客がアプリを利用しているときに何が便利と感じ、何に不満を感じているかを、把握していますか?アプリ上で何かを購入するとき、顧客にはどのような操作経路を辿ってもらうと良いのでしょうか?これに関連する要素は、色、プロモーション方法、行動喚起(訳注:call to action)、レイアウトなど、様々なものが考えられます。
アプリを展開した後、何かの要素を変更したり、減らしたりすると、何が起きるでしょうか?

こうした懸念は、Adobe Mobile servicesで払拭することができます。A/Bテストを実施することで、特定の画面、特定の場所での表示といったアプリのエクスペリエンスについて、その効果を定量化することができます。しかもマーケターはワンクリックするだけで、アプリ分析データを選び、所定のオーディエンスに対する最適化を実施することができるのです。

GPS位置情報を使って、その場にふさわしいアプリのエクスペリエンスを

モバイルデバイスに特徴的な機能として、GPSで位置(経度、緯度)を把握できる点があります。

Adobe Mobile servicesは、アプリ利用者のGPS所在地や、お気に入りの場所への接近状況を把握することができます。小売店や拠点をお持ちのビジネスなら、Adobe Mobile servicesの提供するアプリ分析データをもとに、アプリ利用者がどこでアプリを利用しているのか、どの店舗の近くなのかが判ります。
これをインサイトとして活用することで、アプリ内での提案機能を通じ、その場所にもっともふさわしいエクスペリエンスを提案することができます。位置情報と時間、行動データを組み合わせれば、適切なエクスペリエンスを提供することによって顧客を喜ばせることができます。

では次に、モバイルアプリを活用してすばらしい成果をあげた企業のベストプラクティスをご紹介しましょう。

Ancestry.comのベストプラクティス

Ancestry.comは世界中に家系情報を提供する最大のオンラインサービスです。有償サービス加入者は200万人以上、110億件以上のデジタル記録を扱っています。
同社は当初、次のような課題を持っていました。それは「どのようにしたらもっと若年層に、モバイルアプリを通じて取り込むことができるだろうか?」「訪問者はどれくらいアプリを利用してくれているのだろうか?」「アプリ内の機能は、当社のサービスとして適切なのだろうか?利用者にとって便利なのだろうか?」「ログインをもっとシンプルにしたほうが効果的だろうか?」といったことです。

そこで同社は、そうしたモバイルアプリに関わる仮説や課題を検証するために、アプリのテストと最適化に取り組みました。その結果はすばらしいものでした。
例えば、ログイン画面は三つの入力項目のものよりも、二つないし一つにした方が良いと、定量的に判定できたのです。具体的には、利用率が8%も改善しました。

また、Ancestry.comがモバイルアプリを通じてサブスクリプション販売を開始しようとしたとき、意思決定に迫られました。それは、Google Playマーケットプレイスを利用するか、自社のモバイルサイトへ誘導するか、どちらの選択肢をとるべきか、という課題です。後者は前者よりも準備期間が必要で、顧客にも情報を手作業で入力してもらう必要があります。どちらの選択肢がベストでしょう?

テストの結果、Google Playはより多くの申し込みを獲得しましたが、獲得できた価値という点では下回りました。この結果についてConversion Marketing部門のディレクターを務めるBrandon Camp氏は、「確かにGoogle Playからは多くのトランザクションを得られましたが、収益増加率という点で見ると、訪問者を自社のモバイルサイトでの購買へと誘導したほうが、より多くのトランザクションを獲得したのです」と評価しています。

何年にもわたるアプリの最適化と洗練の繰り返しにより、同社は今や、モバイルからの登録者(新規顧客)の割合はますます増えています。また同社は、Android、iOS、Windows 8用モバイルアプリについて約700万以上のダウンロードを達成し、2012年のGoogle Playマーケットプレースにおけるトップ12アプリに入ることができました。

競合よりも先に、アプリを最適化しよう

いかがでしょうか。みなさんの組織におけるモバイルマーケティング戦略の一環として、アプリの最適化とターゲティングを取り入れることで、計り知れない価値を得られることがお分かりいただけたと思います。もし科学とテクノロジーがなかったなら、組織活動も立ち行かなくなるでしょう。

さあ、さっそくアプリの最適化に取り掛かりましょう!

参考情報:

Topics: デジタルトランスフォーメーション, パーソナライズ, 戦略/組織/プロセス

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