Adobe Experience Manager最新版登場。デジタルエクスペリエンスにさらなるイノベーションを

もはやWebの枠を大きく超えて

様々な名言を伝えてきたピーター ドラッガーの言葉のひとつに、『マーケティングとは、企業の成果、つまり、顧客の観点から見た企業そのものである』というものがあります。顧客から目に見える活動はすべてマーケティング活動である、という訳です。

先日お伝えした米国で開催のアドビのイベントAdobe Summitでは、様々なイノベーションが発表されました。一つひとつの発表はそれぞれの分野で目を引く内容で、すべてをご紹介するのは難しいですが、今回ご紹介するAdobe Experience Managerの最新版の登場は、そのうちの大きなひとつです。

企業の中でマーケティングの果たす役割がますます重要になるにつれ、マーケターができることの幅が広がる一方、「マーケティング部門」だけの枠組みではとうてい収まらないほど、企業活動のすみずみまで関るようになってきています。もはや組織のすべての部門が一丸となって、マーケティングを展開していかなければなりません。

顧客から見える部分とはすなわち、カスタマーエクスペリエンスです。これほどカスタマーエクスペリエンスが企業の中心課題になった時代だからこそ、限られたリソースと時間の制約のなかでも、デジタルを原動力としてうまく活用し、顧客のために最善となる活動を展開していく必要がある、と言えるでしょう。

こうした背景からアドビは、エクスペリエンスというものを非常に重視しています。エクスペリエンスを構築し、提供していくためのプラットフォームであるAdobe Experience Managerについても、非常に大きな開発力を注ぎ、当初の製品名「Adobe CQ」の時代から毎年イノベーションを続けているのも、同じ理由からです。今回ご紹介するブログ記事では、カスタマーエクスペリエンス重視のマーケティング時代にとって重要なソリューションとなるAdobe Experience Managerの戦略に責任を持つ、ロニ スターク(Loni Stark)の想いを、翻訳でご紹介します。

※以下はUS Digital Marketing Blog「Introducing New Adobe Experience Manager: Innovations for Digital Experience」の翻訳です。

今年もAdobe Summitで発表

この記事では、何年も続けて年次リリースを行ってきたAdobe Experience Managerについて、私の想いをお伝えします。
現在アドビは、今起きているモバイルやクラウドの時代変革のなかでブランド企業が対応していけるよう、ほぼ四半期ごとに何らかのリリースを行っています。それは、ブランド企業が自社の顧客とのつながりを保つうえで必要としていることに、応えるためです。その中でも年次リリースというのは、もっとも大規模なものとなっています。

年次リリースというのはアドビにとって、Adobe Experience Manager全体を見つめ直し、アドビの製品チームが日々進めている膨大な開発成果を反映する機会となっています。また同時に、アドビのデジタルエクスペリエンス管理ソリューションへ投資していただいた企業の皆さまの、デジタル変革をさらに進めるお手伝いをすることでもあります。

こうした前提のもと、今年もAdobe Summitという場を使って、Adobe Experience Managerの次期メジャーバージョンを発表できることをとてもうれしく思います。今回発表したバージョンは、2015年5月中に提供開始となる予定です。
今回のバージョンアップも大きな進歩を遂げています。企業の皆さんにとって複雑な業務を簡素化できるだけでなく、カスタマージャーニーに沿って顧客とのつながりを保つ上で、オンラインから実世界までにわたってカバーすることができるのです。

Adobe Experience Manager Screens: デジタルの力を、実世界へと拡張

デジタルの影響力はWebサイトに限られたものではありませんでしたが、それが今や、web、モバイルアプリ、そしてIoT(Internet of Things)へと拡張されたのです。今回発表したAdobe Experience Manager Screensは、実店舗内と、パーソナライズ能力、デジタルならではの視覚的能力とを融合させます。

デジタルサイネージを使って店舗内広告媒体などに利用する例ならば過去にもありましたが、Adobe Experience Manager Screensはそれとは異なります。第一に、Adobe Experience Managerプラットフォーム全体の一部を構成するソリューションなので、コンテンツをweb、モバイルアプリ、そして店舗内や現場のスクリーンまで共通して配信することができます。第二の違いは、対話性です。これらを合わせることで、消費者が自宅、移動中、店頭のどこに移動しても、デジタルコンテンツを届けることができるのです。

例えば、車の購入というカスタマージャーニーについて考えてみましょう。
ジャーニーの始まりは、自宅にいるときに、何かのきっかけで気になった車の情報をwebで見てみようとするところ、でしょう。今どんなモデルがあるのか、どのような選択肢が考えられるのか、といったことを調べます。
そのブランドが気に入ったところで、じっくり調べてみたいので、スマホにもモバイルアプリを入れてみます。このアプリはAdobe Experience Manager Appsで作られています。
そして外出中にアプリを触っていると、今いるところの近くに販売店があることが通知されるので、ちょっと寄ってみて、試乗してみることにします。
気になっていたモデルをアプリ内で選んでおいたので、販売店に来たら、アプリの上で指をスワイプ操作してみます。すると、選んだモデルが販売店内の大きなスクリーンにも現れます。このスクリーンはAdobe Experience Manager Screensで作られています。
こうすることで、気になっていることを販売員にゼロから説明することなく、スムーズに試乗したり、見積もりへと進むことができます。

これはあくまでひとつの例ですが、様々な業界に応用すれば、企業のブランド力を強化するイノベーションとなるでしょう。

Adobe Experience Manager Screensだけでなく、私たちはAdobe Experience Managerの様々なイノベーションを発表しました。ここでは4つのポイントをご紹介します。

  1. 従来のwebやモバイルに加えて、IoTの世界でもエクスペリエンス構築を容易に、かつ効果的に
  2. デジタルエクスペリエンスにおけるクリエイティビティの発揮
  3. 市場展開を加速する、新しいクラウドオプション
  4. 「専用単体製品か統合製品か」という議論に終止符を打つ、パーソナライゼーションとアナリティクス

新機能のポイントその1: Web、モバイル、IoTの対応

市場もアナリストも、モバイル対応に関するAdobe Experience Managerの優位性を認めています。エクスペリエンスをモバイル上で設計することのできる、タッチ操作に最適化されたUIを、アドビは業界でほぼ初めて提供しました。
最新のリリースでは、モバイルエクスペリエンス対応をさらに大きく前進させました。

レスポンシブグリッド機能
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レスポンシブなwebサイト

すべてのデバイスサイズ向けのデザインを、今回から新たな機能として、レスポンシブグリッド機能として提供します。
これはAdobe Experience Manager Sitesに含まれており、マーケターやビジネス部門の利用者でも、簡単にレスポンシブなサイトを作ることができます。コードは一行も書く必要がありません。

モバイルアプリ

2015年の今、モバイルアプリ開発機能を持たないデジタルエクスペリエンス提供プラットフォームはWebコンテンツ管理システムには、もはや存在価値はありません。
2014年にアドビはAdobe Experience Manager Appsを発表しました。その際には、コンテンツリッチで便利なアプリを構築できる、アドビが従来提供していた業界有数のモバイルアプリ開発プラットフォーム(Adobe PhoneGap)を、ソリューションの一部として組み込みました。
今回のリリースでは、アプリ管理ダッシュボードを発表します。これはマーケター、アプリ開発者双方が利用できるもので、アプリに利用するアセットの管理、コンテンツの更新、展開前のステージング、テスト、パフォーマンス指標の参照といったことが行えるようになります。

新機能のポイントその2: デジタルエクスペリエンスにおけるクリエイティビティの発揮

コンテンツマーケティング施策を展開しているマーケターなら誰もが知っている通り、常に起こる問題は、ターゲット顧客に合った質の高いコンテンツの調達でしょう。
今回のリリースでは、コンテンツを語る上で欠くことのできないクリエイティビティを発揮する、Adobe Marketing CloudAdobe Creative Cloudの連動によるメリットがさらに向上しています。

ホットスポット機能
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アセットの共有からさらに進め、デジタルアセットの価値を引き出す:

クリエイティブ工程から得られたアセットの価値を、さらに容易に引き出せるようになります。Adobe Experience Manager Sitesを使えば、マーケターはAdobe Photoshop形式のファイルを、デジタルエクスペリエンスのテンプレートとしてすぐに活用できます。
さらにAdobe Experience Manager Assetsに追加された機能を使えば、製品情報をAdobe InDesignテンプレートへとつなげてカスタムのカタログを自動生成し、オフラインエクスペリエンスへと展開することができます。デジタルアセット管理分野の新機能の詳細については、こちらのブログ記事を参照してください。

販売機会を高めるshoppable media:

どのようなコンテンツも、販売機会に結びつく可能性があります。コンテンツは販売機会を産み出し、コンテンツが増えると販売機会も高まります。
Adobe Experience Manager Assetsに追加されたshoppable mediaは画像をダイナミックにする機能で、マーケターは既存のデジタル画像を、対話的なショッピングエクスペリエンスを提供するリッチなメディアへと変えることができます。オーサリング画面でいくつかクリックするだけで、任意の画像に複数の「ホットスポット」を設定できます。

Adobe Creative Cloudコンパニオンデスクトップアプリ:

このツールはクリエーター用で、Adobe Creative CloudからAdobe Experience Manager Assetsにアクセスできます。これによって、クリエーターとマーケターが別々に作業する状況を変え、協業を促します。

新機能のポイントその3: 市場展開を加速する、新しいクラウドオプション

Adobe Experience Manager Sites managed servicesの拡張:

要件規模の柔軟性が高まりました。

クラウドですばやく:

Adobe Experience Manager Assetsに、新しいon-demand(SaaS)オプションが加わりました。自社以外の人とのアセットの共有や配信を、カスタマイズを抑えてすばやく実装したい企業にとって便利です。

新機能のポイントその4: 「専用単体製品か統合製品か」という議論に終止符を打つ、パーソナライゼーションとアナリティクス

企業はますます、リッチで、データに基づいてパーソナライズされたデジタルエクスペリエンスを実装しなければなりません。その実現手段としてこれまでは、統合プラットフォームを採用したらよいのか、それとも個別製品を組み合わせて統合したらよいのか、という議論がありました。
アドビから見ると、この議論は古い想定や習慣に縛られてしまっているもの、と言えます。

Adobe Experience Manager最新版では、市場をリードするアナリティクスとターゲティングを提供するAdobe Marketing Cloudのソリューションを、Adobe Experience Managerの機能の一部として利用できるようになりました。

突き詰めると、アナリティクスとパーソナライゼーションとして必要とする機能を入手するには、Adobe Marketing Cloudにすべきか、それ以外にするのか、という選択になってきます。もっとも、アナリティクス、パーソナライゼーション、エクスペリエンスの各分野の最も優れたソリューションを組み合わせるというのは、Adobe AnalyticsAdobe TargetAdobe Experience Managerを選ぶということに他なりません。
そしてこれらを選ぶだけで、単一のデジタルエクスペリエンス提供プラットフォームを手に入れたことになるのです。

もはやマーケターは、アナリティクスやパーソナライゼーションを基礎から時間をかけて習得することも、それらを組み合わせることに時間を費やす必要もありません。ましてや、究極の統合を目指してマーケターがシステムインテグレーターになる必要なども、決してありません。
本業にこそ集中することができるのです。

参考情報: