Adobe Creative Cloud 4K制作事例:株式会社 マリモレコーズ

by Adobe Comms

Posted on 05-25-2015

Adobe Creative Cloudによる4K編集・フィニッシング 〜 スカパー!4K総合 “ ONWARD presents 熊川哲也Kバレエ カンパニー Spring 2015「シンデレラ」”におけるアバンタイトルおよびドキュメンタリーパート制作

株式会社マリモレコーズ 江夏 由洋 氏

株式会社マリモレコーズ 江夏 由洋 氏

“ONWARD presents 熊川哲也Kバレエカンパニー Spring 2015「シンデレラ」” は、スカパー!4K総合にて、国内で2例目となる4K生中継で放送された番組である。bunkamuraオーチャードホールで上演された演目の全三幕を2時間枠で生中継し、その後、収録番組としてリピート放送が行われている。

今回は、この番組のアバンタイトルとドキュメンタリーパートを担当したマリモレコーズの江夏由洋氏にお話を伺った。なお、生中継は東通が担当し、江夏氏とともに4Kのファシリティ全般を管理している。

■アバンとドキュメンタリーパートは4K30pで制作

「シンデレラ」は全三幕で構成されている。生中継にあたって課題となったのは、第一幕と第二幕の間に、場面転換のため30分弱の休憩が挟まれていることだった。そのため、番組としては休憩部分にドキュメンタリーを組み込み、冒頭のアバンタイトルも含めて、マリモレコーズが制作を担当することになった。

しかし、今回は諸事情があって、芸術監督の熊川さんの取材ができず、熊川さんの指導の様子や準備を指示する姿を撮影することができない状況であったという。困った事態ではあったが、幸いなことに「シンデレラ」は約2年半前に同じbunkamuraオーチャードホールで初公演が行われており、そのときの様子がHDで放送されていた。

このような経緯で、アバンタイトルとドキュメンタリーパートは過去素材のHDと新規撮影の4Kを織り交ぜることになった。

ただし、過去素材のフォーマットは60iである。

江夏氏:
インターレースは4Kにまったく向かないので、プログレッシブにする必要があります。放送は60pなのですが、スカパー!と相談して、アバンとドキュメンタリーの部分は30pで作成することになりました。
新撮のことも考えると60pは撮影データの量だけでなく、インジェストもレンダリングも倍になる。またアバンでは、RED EPIC DRAGONの120pによるハイスピード撮影を考えていましたが、60pで撮影した場合は2倍にしかなりません。
今回はHDの素材も混在することになるので、最終的には30pのほうが60pの中継映像との質感の差が出て良いかもしれない、という判断に至りました。

■メインマシーンはHP Z820 Workstation

HP Z820

HP Z820

編集のメインマシーンには、江夏氏が普段から使用しているHP Z820 Workstation。同氏がこのHP Z820を選ぶ理由の1つはスクリューレス構造だ。HDDやPCIカードを足したり、電源を取る場合でもネジが必要ないのは、接合部がしっかりしている証拠である。

データフィールドに使用しているHDDは、アーカイブ用などに使われるオフライン用HDDとサーバー向けで即応性に優れたオンライン用HDDの中間にあるニアライン向けHDDで、1日8時間稼働で3年間の使用を前提としているもの。3Tバイト×2をストライピングさせて6TバイトのRAIDを組んでいる。

システムが不安定にならないように、キャッシュ用に256GバイトのSSDを搭載。GPUは、After EffectsやPremiere ProのMercury Playback EngineがCUDAを使って高速処理しているので、ELSA製のNVIDIA GeForce GTX 780 Tiを採用している。Quadro K5000と比べてもコア数は変わらずメモリーが異なるだけなので、瞬発力とコストパフォーマンスを考慮しての選択である。

モニターへの出力にはBlackmagic DesignのDeckLink 4K Extremeを介しており、DELLの4Kモニター上でフル解像度によるフォーカスチェックが行える。

4K編集システムの筐体にはスクリューレス構造が特長のZ820を採用。Mercury Playback Engineの恩恵に与るため、グラフィックカードはELSA製のNVIDIA GeForce GTX 780 Tiを挿している。

27インチの作業用モニター(右)と4Kプレビュー用モニターDELL UP2414Q(左)。プレビュー用にはBlackmagic Design DeckLink 4K Extremeを介して3840×2160/30fpsで出力している。

27インチの作業用モニター(右)と4Kプレビュー用モニターDELL UP2414Q(左)。プレビュー用にはBlackmagic Design DeckLink 4K Extremeを介して3840×2160/30fpsで出力している。

■クロスプラットフォームに対応したGoPro Cineformを中間フォーマットに採用

完パケのフォーマットは東通からProRes422 HQが指定された。中継車のXAVCサーバーへアップロードするための作業を、東通の編集室(Premiere Pro)で行うためである。30pから60pへの変換作業も、この段階で行われている。

編集工程の詳細は後述するが、アバンおよびドキュメンタリーパート共に、Windowsマシーン(HP Z820)のPremiere Proでカット編集を行ってからGoPro Cineformで書き出し、それをAfter Effectsで読み込んでCGやエフェクトを追加。ProRes422 HQで書き出すため、MacBook Proにプロジェクトを載せ変え、東通の編集室へ持ち込んでいる。

このワークフローの特長は、中間コーデックとしてWindowsとMacの両プラットフォームに対応したGoPro Cineformを採用していることだ。

江夏氏:
中間コーデックのGoPro Cineformで組んだAfter Effectsのプロジェクトなら、素材も含めて500Gバイト程度に収まります。それを、USB3.0のポータブルHDDに入れてMacBook Proで編集室に持ち込むことにしました。スーパーの変更もその場で対処できますし、修正したレイヤーだけProResで書き出して差し替えれば、すぐに4Kで完パケできます。つまり、WindowsとMacの架け橋としてGoPro Cineformを使い、MacBook Proは修正およびProRes生成マシーンとして使用したわけです。

■編集前段階におけるデインターレースとノイズリダクション

デインターレース処理前と処理後の画像。RE:Vision Effects FieldKit Deinterlacerは、前後のフレームを見て補完フレームを埋めていく処理で、奇麗にプログレッシブ化される。

デインターレース処理前と処理後の画像。RE:Vision Effects FieldKit Deinterlacerは、前後のフレームを見て補完フレームを埋めていく処理で、奇麗にプログレッシブ化される。

編集に入る前に各素材の調整を行っている。まずHD60iの過去素材に対してデインターレース処理を施した。これにはAfter EffectsのプラグインRE:Vision Effects FieldKit Deinterlacerを使用。過去の素材は1時間番組なので、正味50分程を一晩かけて一気に30pに変換している。

続いて、新しく撮影した4K素材に対してデノイズを施す。4K編集で厄介なのはこのノイズの除去作業である。

江夏氏:
4Kの編集で問題なのはノイズです。解像度が高いとハイライト部や暗部にかならずノイズが出ますし、4Kではそれが大きく見えてしまう。
しかし、簡単に改善する方法があります。すでに多くの方が使用されていると思いますが、Neat Videoのデノイザーがよく効きます。かけすぎると画が平坦になってしまうので気をつけなくてはいけませんが、うまく設定すれば見違えるように良くなります。そして処理後はアンシャープマスクをかけてシャープネスを戻す。この一連のデノイズ作業で見栄えがまったく違ってきます。

■Adobe Creative Cloudによる一貫制作

調整が済んだ素材は、Premiere Proでカット編集を開始。HD素材を4KへアップスケールするのはCGやエフェクトを載せる段階に入ってからになるので、ここでは200パーセントに拡大して編集を行っている。

カット編集後はスーパーを入れる前にH.264/.mp4で書き出し、プロデューサーとKバレエカンパニーに送って確認。そして、中間コーデックのGoPro CineFormに出力となる。

After EffectsのタイムラインでGoPro Cineformを細かくカットし、ロックする。

After EffectsのタイムラインでGoPro Cineformを細かくカットし、ロックする。

江夏氏:
以前は、4:2:2サンプリングと10ビットをちゃんと担保してくれる使い勝手のよいコーデックがなく、ProResで納品するときの中間コーデックとしてはDPXの連番を使っていました。しかし、DPXは4Kになるとかなり重くなります。GoPro CineFormが出てきて非常に楽になりましたね。

GoPro Cineformで出力するとファイルが1本化されるので、After Effects上でCGやエフェクトをかけるためカットごとに細かく切っている。尺を動かさないようロックし、後はCGやエフェクトを加えていく地道な作業である。

スタッフが作成した4KのCGも出力時にGoPro Cineformを採用。タイトル素材のガラスの靴は、After EffectsのプラグインElement 3Dで短時間で作成した。

スタッフが作成した4KのCGも出力時にGoPro CineFormを採用。タイトル素材のガラスの靴は、After EffectsのプラグインElement 3Dで短時間で作成した。

HD素材はAfter Effectsでアップスケール(ディテールを保持)を適用して、スケールを200%に設定。

HD素材はAfter Effectsの標準エフェクト「アップスケール(ディテールを保持)」を適用して、スケールを200%に設定。

その後のMAは、江夏由洋氏の兄である江夏正晃氏が担当している。

Auditionのラウドネス自動調整機能。

Auditionのラウドネス自動調整機能。

MAでは、まずPremiere ProからQuickTime/H.264で出力して仮の音をあて、これをベースにして東通でナレーションを録音。ナレーションデータを持ち帰ってきて、Auditionですべてをミックスし、2ミックスをつくる。そして最終的にAuditionのラウドネス自動調整機能を使って、放送音声基準レベルである−24LKFSに収めている。

Loudness Radarで確認してみると、しっかり−24LKFSに収まっている。

Audition CC付属の「Loudness Radar」で確認してみると、しっかり−24LKFSに収まっている。

江夏氏:
Auditionのラウドネス自動調整機能は音を劇的に変えずに、レベルオーバーしている部分をコンプレスするイメージで一気にフォーマットしてくれます。ドルビー環境で確認すると、当然ですがぴったり−24LKFSに収まっています。これがうまくいったときはうれしかったですね。Auditionはこの機能のために導入してもいいくらいだと思います。

■中間コーデックの利用を推進

生中継のオンエアーはもちろんうまくいったが、収録番組としてリピート放送するためオンエアー後の修正も行った。リピート放送ではアバンタイトルとドキュメンタリーパートの後にに、第一幕から第三幕までが通して放送する構成になっている(今後のリピート放送は、スカパー!4Kで、2015年6月7日、13日、21日に放送が予定)。

今回の事例では、中間コーデックとしてGoPro CineFormが活躍したが、江夏氏はXAVCも中間コーデックとしての利用機会が増えていると語る。特にYouTubeに4Kをアップロードしたい場合にはXAVCの4Kが有効とのことだ。

江夏氏:
最近よく使っているのが4K XAVCスマートレンダリングです。AdobeのMedia Encoderは、XAVCの映像ファイル全体を再圧縮しないでレンダリングする。コンテナ構造の中身を入れ替える作業だけを行います。だからカット編集をしたり、部分的に色調整したものなどに対しては処理が速い。これは、Media Encoderの特長ですね。

4Kコンテンツ制作に黎明期から取り組んできたマリモレコーズでは、新しいコーデックの活用やワークフローの構築にチャレンジして成果を上げている。その取り組みの要所要所で、Adobe Creative Cloudが活躍している点も見逃せない。

Topics: クリエイティブ, ユーザー事例

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