カラーサイエンス(色彩科学)について – パート 2

by Adobe Comms

Posted on 07-10-2015

Adobe SpeedGradeブログ、カラーサイエンスに関する記事の翻訳を掲載。
原文執筆:Bronwyn Lewis

前回のブログでは、アドビのプリンシパルカラーサイエンティスト(色彩科学主任)のラース ボルグ(Lars Borg)にカラーサイエンスという魅力的な分野について話を聞きました。今回はラースに、ビデオ制作に携わるすべての人がカラーサイエンスについて知っておくべきことについて語ってもらいましょう。

前回、「色」とは、実際には、そこにある光と色と、私たちがそれをどのように見るかという状況との相互作用であり、これらすべてにより、色は主観的なものとなり、さまざまに変化するということをラースから学びました。今回は、このような奥深いテーマの中から、映像制作者が基本的な色補正およびカラーグレーディングを考える際にカラーサイエンスから導き出すことのできる基本原則について学びたいと思います。

映画のようなストーリーテリングにはLook(色彩表現)が重要です

これまで、映画のLookや特徴づけで重要な役割を果たしていたのはフィルムそのものでした。フィルムからデジタルビデオへと映画制作の手法が移行するにしたがって、私たちと色との関係も変化してきました。ラースは、「Lookのコンセプトは、フィルムを使った撮影に不可欠なものです。現像後の色合い(Look)が自分の好みだからという理由でフジのベルビアやコダクロームといったフィルムを選択していました。Lookの一部は、フィルムと目のスペクトル感度が一致しないという事実に基づくものです」と説明します。たとえば、あるフィルムは赤に対する感度が高いため、肌の色合いが強くなります。現在ではデジタルシステムがそれぞれのフィルムのLookをエミュレートできるようになっています。

Lookに対する好みは地域により異なり、また時代とともに変化します。ラースは「色の再現については、ゆっくりとしたペースですが、より忠実な方向へと移行しているように思います。この傾向は、色に関する忠実性が高いデジタルカメラの登場も手伝っているでしょう」と説明します。「たとえば、先日、1960年代の料理本をパラパラとめくってみましたが、その写真は現在の私の好みから言うとひどい代物でした。強すぎるコントラスト、不自然な色調、とても食欲のわく写真ではありませんでした。現在の食べ物の写真は、実際の食べ物の色にかなり近づいているように思います。」

「Lookを使えば、昼間の風景を夜景に変えたり、セピアにして昔の風景のようにしたりできます。カラーパレットは、主人公がその人生の辛い時、楽しい時などさまざまな場面を経験するたびに変わります。Lookだけで、特定のシーンの雰囲気をそのまま伝えることもできます。たとえば、悪党の隠れ家は、暗く、埃っぽく、コントラストが強く、彩度を下げて表現します。一方、無防備な犠牲者の住む世界は、明るく、色彩豊かで、コントラストが弱く、ディズニー風の世界観で表現します。殺人の場面では、おどろおどろしいLookを使用します。」モチーフによるストーリーテリングという考え方は、映像や映画に限ったものではありません。オペラで使われる音楽によるキューやテレビドラマの劇伴のライトモチーフにも使われています。

ラースは、この概念がどこまで遡れるかを考えています。「洞窟に絵を描いていた古代人画家はLookを利用していたでしょうか。さらなる調査が必要です。スポンサーを探さないといけませんね。」

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コントラストと彩度

映像や映画の視聴者はLookの使用や画像処理を期待するようになりました。現在のRAW記録された、色補正が施されていない画像はフラットに見えがちなのですが、ほとんどの視聴者は強めのコントラストを好みます。ラースによると「強いコントラストが好まれるのは、細部が見やすくなるためだけ」だそうですので、他に何もしないのであれば、恐れずにコントラストを調整してください。

編集空間を管理しましょう

「撮影するときに周囲を明るくすると、その被写体の色がより鮮やかに認識されることはよく知られています。」キャリブレーションを完璧にして、適切なカラーマネジメントで作業したとしても、照明条件が不安定な室内でビデオ作業を行うと、コントラストは昼と夜とで全く違ってしまいます。「そのため、照明が弱めに制御されている、一定した視聴環境を作り出してください。」

そしてメディアを視聴環境に合わせましょう

「ある程度までは映画製作者が環境や状況を作ります。」しかし、映画製作者も作品が視聴される条件を考慮し、観客が大画面で視聴するのか、モバイルデバイスで視聴するのかを考慮して、それぞれの体験に合うように最適化する必要があります。

50年代に遡ると、TVスタジオのカメラは、光に対する感度が極めて低く、テレビ画面自体もかなり薄暗いものでした。「リビングでの視聴者には、色は彩度の低いものに見えていました。実際のスタジオは、明るく魅力的な色彩にあふれていたにも関わらず、です。このため、TVにはガンマ調整が導入され、コントラストを上げることができるようになりました。これにより、映像の彩度も上がり、さらに魅力的になったため、リビングの視聴者の期待と好みにより近いものになりました。」

重要なのはカラーマネジメントです

ラースは、「色は、3つのRGB値によって明確に定義したつもりでも、実際には使用しているビデオ標準に依存します」と説明します。たとえば、HDR(ハイダイナミックレンジ)からデジタルシネマに切り替えた場合、赤、緑、青の割合は同じであっても、そのRGBの3つの値の意味は変わります。「色は為替レートと似ています。たとえば、今私のポケットに50ドル入っています。これがオーストラリアドルかカナダドルかによってその価値は変わります。本当の価値を評価するためには、どちらなのかを知る必要があります。カラーマネージメントシステムは、RGB値に対して両替を行うようなもので、ディスプレイが変われば、その為替レートも変わります。」当然のことながら、色は状況に依存します。「超高解像度TVでは、色の彩度は上がり、HDRでは、さらに明るくなります。デジタルシネマに切り替えると、色はまた別のものになります。」

ビデオ制作におけるカラーサイエンスについて知っておくべきこと、いかがでしたでしょうか。是非、以下のコメント欄からご意見をお聞かせください。

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