Adobe MAX 2015基調講演レポート:さらに進化するWeb制作環境 – すべてがつながるCreativeSync、レスポンシブデザイン対応のMuse、TypeKitのモリサワフォントサポートなど
アドビ最大のイベントであるAdobe MAX 2015が、ロサンゼルスで10月4日から4日間の予定で開催されています。このレポートでは、初日の基調講演からWeb制作に関連する情報をピックアップし、いち早くお届けします。基調講演は、今年から名前が変更されたマイクロソフトシアターにて、現地時間で10月5日午前9時半より(日本時間では10月6日の深夜1時半)2時間半に渡って行われ、世界中から約7千人が参加しました。
イベント登録に並ぶ参加者の長い列
レスポンシブデザインに対応したMuseと大幅な変更が予告されたDreamweaver
まずWeb制作ツールに関するトピックからお伝えします。今年6月に行われたアップデートではDreamweaverにレスポンシブデザイン対応機能が追加されましたが、今回はMuseのレスポンシブデザイン対応のプレビューが紹介されました。発表ではReflowをベースにしていると言っていましたが、デモを見る限りReflowの操作時の難点だった配置の際の制約は無いようです。コーダーとの連携や、フレームワークの機能に制限されることなく、デザインカンプをつくるようにレスポンシブWeb制作ができるようになれば、MuseはWebデザイナーにとって主要なツールになるかもしれません。
Museのプレビュー版。画面の上にReflowの様な表示幅を示すバーが表示されている
もうすぐ公開されるDreamweaverのアップデートでは、CC Libraryが追加されて、PhotoshopやIllustratorといったデザインツールのデザインアセットを共有したり、Adobe Stockとの連携が可能になるようです。ライブラリ経由でIllustratorからSVGアセットを利用することも可能です。
Dreamweaver関連での注目は、来年公開される新バージョンでの、コードエディタの刷新が予告されたことです。基調講演では明らかにされませんでしたが、Dreamweaverチームのブログ記事によれば、新しいエディタはBracketsをベースにしたものになるようです。Bracketsでお馴染みのインラインエディタやSass/LessサポートなどがそのままDreamweaverでも使えるようになれば、開発ツールとしてのDreamweaverの使い勝手はずいぶん向上することでしょう。ベータ版の一般公開も検討されているようです。
アップデートされたPhotoshopのアートボードとデザイン機能
使い勝手が刷新されたアートボード。従来よりも操作性が向上した
デザインツールとしてはPhotoshopの新機能が紹介されました。6月のアップデートの際に追加されたアートボードの操作性は大きく向上して、ドラッグ&ドロップ操作によりアートボード間のアセットがコピーできたり、アートボード関連のレイヤーだけをレイヤーパネルに表示できるなどの改良が行われています。また、SVGファイルを直接Photoshopに読み込んで扱えるようになるそうです。公開は他のデザインツールと一緒に数週間後を予定しているとのことでした。基調講演では紹介されませんでしたが、新規開発中のデザインスペース(別記事で紹介する予定です)も一般公開が待ち遠しい機能です。
複数のモバイルアプリの機能を統合したAdobe Captureと新しいレタッチアプリPhotoshop Fix
Photoshop関連では、モバイルアプリも積極的に開発が行われているようです。新しく公開されたアプリケーションPhotoshop Fixは、画像のレタッチと修復に特化したモバイルアプリで、タッチ操作で修復ブラシやゆがみなどPhotoshopと同じ機能により画像加工を行い、そのままPhotoshopで引き続き作業を行うことも可能です。
Photoshop Mix、Photoshop Sketchもそれぞれ新バージョンが公開されました。Photoshop Mixは、FixやSketchと直接連携してデザインを取り込み、それらをレイヤーデータとしてブレンドしたりマスクしたりできます。Photoshop Sketchには、より表現力の高いスケッチやペイントのためのツール・機能が追加されました。これらのどのツールも、デスクトップのデザインツールにデータを編集可能な形式で渡すことが可能です。
ステージ上でAdobe Caputure CCの新機能を使ってパターン生成のデモが行われているところ
新アプリにとしてはAdobe Capture CCも公開されました。これまで複数存在したキャプチャ用アプリケーションが一つに統合されていて、最初のバージョンでは、Adobe Brush、Adobe Shape、Adobe Color、Adobe Hueの機能が利用できます。ステージでは近い将来に利用可能になる機能として、キャプチャした画像からパターンを作成する機能が紹介されました。
CreativeSyncテクノロジーによるデータの同期とワークフローの効率化
CreativeSyncにより実現される新しいワークフローが繰り返し形を変えて紹介された
今回の基調講演内のデモでは、折に触れてツール間のデータ連携の様子が紹介されていました。何種類ものデスクトップアプリやモバイルアプリを使って作業していても、Creative Cloud Librariesに保存すれば、作成したアセットにどこからでもアクセスできます。Creative Cloudの同期を実現するコアであるCreativeSyncは、画像、フォント、カラーパレット、グラフィックス、更にツールの設定の様なメタデータの共有も可能にします。
チームでCreativeSyncを使えば、一貫したデザイン制作のためのスタイルガイドや、プロジェクトで協業するためのアセットリポジトリとして役に立つという、アメリカの有力企業の事例ビデオが上映されました。うまく使いこなせばチーム制作のワークフロー効率化に役立てることができそうです。
Adobe Typekitにモリサワグループ書体を追加
TypeKitからモリサワ書体が利用可能になった。デスクトップとWeb両方から利用できる
今日の基調講演の中で、日本視点からの注目ポイントとしては、Creative Cloudのフォントライブラリサービス「Adobe Typekit」へのモリサワ書体とグループ会社タイプバンク書体の追加が挙げられるでしょう。
日本時間の2015年10月6日から、Creative Cloud のサブスクリプションユーザは、追加費用なしでリュウミン、太ミンなど計20書体の一部ウエイトが使用可能となります。
利用できるフォントが限定されてはいますが、6月のTypeKitの日本語対応発表時のサポートはアドビフォントのみだったことを考えれば、徐々にではありますが環境は整いつつある印象です。
UXデザイナー向けの新プロジェクトComet
アドビのイベントでUXデザインという言葉を聞いたのは久しぶりな気がします。基調講演では、UXデザイナー向けソリューションを提供すべく開発中のProject Cometが発表され、ツールの初披露がありました。
デザインとインタラクションを作成し、サイトマップを作製したプロトタイプをプレビューするデモが行われた
素早くワイヤーフレームをつくるデザインモード、それをインタラクティブなプロトタイプとして画面上で確認できるプロトタイプモード、ページ間の関係をビジュアル編集できるワイヤーフレーム作成機能などがデモされました。デバイスと連動したリアルタイムのプレビュー機能や、CreativeSyncによるPhotoshopやIllustratorからのアセット読み込みも可能になるようです。
来年の早い時期にプレビュー版の公開を目指して開発が進められているとのことでした。http://adobe.ly/cometから登録すると情報が貰えるようです。
日本でもMAX情報が得られるイベントを開催
本日はMAXでの主な発表内容を日本のユーザーに紹介するイベント「Adobe Live 2015 – Best of MAX」を2015年11月11日(水)に東京ミッドタウンホールで開催することも発表されました。詳細についてはイベントサイトが随時更新されます。