ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識(5)支給画像あるある(逆光、手ブレ、モヤ)
ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識
今回は、支給画像でよくある逆光、ブレ/モヤの除去などの補正についてご紹介します。
- 逆光:シャドウ・ハイライト
- ブレ:[ぶれの軽減]フィルター
- モヤ:[Camera Rawフィルター]フィルターの[かすみの除去]
加えて、「非破壊編集」を行う上で不可欠なスマートオブジェクト(スマートフィルター)についても整理しておきましょう。
[シャドウ・ハイライト]を使って、逆光の写真を補正する
たとえば、こちらの写真、トーンカーブを使って補正を行うと“白飛び”しがちです。
https://blog.adobe.com/media_f57a456baa3f5010a426dc4fdb7f7bc5aaeb1ebe.gif
そこで、トーンカーブを設定したい領域にマスクを設定するのがセオリーですが、ここではマスク処理を行わず、[イメージ]メニューの[色調補正]の[シャドウ・ハイライト]を実行してみます。
https://blog.adobe.com/media_39c6a1a3f0c47875a631871f9c206d0b360478fb.gif
すると、シャドウ部のみが明るくなります。
https://blog.adobe.com/media_b5377e52539ee20e1c45148f8898dc9ad4bda168.gif
スマートオブジェクトと非破壊編集
[シャドウ・ハイライト]を画像に対してそのまま設定するのは「禁じ手」のひとつ。[シャドウ・ハイライト]を適用する前に、該当レイヤーを「スマートオブジェクト」に設定しておきましょう。
スマートオブジェクトに変換するには、次の方法があります(「背景」のままでもOK)。
- 該当レイヤー上で右クリックして、[スマートオブジェクトに変換]をクリックする
https://blog.adobe.com/media_413ac3870b91909fa316bdabe63e7c93e3e8b765.gif - [レイヤー]メニューの[スマートオブジェクト]→[スマートオブジェクトに変換]をクリックする
- [レイヤー]メニューの[スマートオブジェクト]→[スマートオブジェクトに変換]にキーボードショートカットを割り当て、キーボードショートカットを実行する(私はcommand+control+Sを当てています)
スマートフィルター
スマートオブジェクトに変換後に[シャドウ・ハイライト]を実行すると、[レイヤー]パネルには「スマートフィルター」と「シャドウ・ハイライト」のレイヤーが出現します。
https://blog.adobe.com/media_ce18a33fcd429c1a76baea3d89e0dc63c0ce9856.gif
目のアイコンをクリックしてフィルターを非適用にしたり、[シャドウ・ハイライト]の文字をダブルクリックすれば、ダイアログボックスを閉じたときの値が表示され、何度でもやり直しができます。これを「非破壊編集」といいます。「非破壊」とは、オリジナルのピクセル情報に手を加えず、何度でも修正を行うことができることを指します(英語ではNon-destructiveといいます)。
たとえば、スマートオブジェクトに変換したレイヤーに対して、[ぼかし(ガウス)]などのフィルターを適用すると、同様に[レイヤー]パネルに「スマートフィルター」と「ぼかし(ガウス)」のレイヤーが出現し、再編集が可能になります。これを「スマートフィルター」といいます。
https://blog.adobe.com/media_a07fab0300c748e6f8079f1019a5b19f552957cd.gif
[シャドウ・ハイライト]は、[フィルター]メニューにはないので、スマートフィルターと表示されるのは不自然な気もしますが、内部的にはフィルターとして扱われているようです。
なお、[フィルター]メニューの[スマートフィルター用に変換]を実行しても、スマートオブジェクトに変換することができます(デフォルトではアラートが表示されます)。
https://blog.adobe.com/media_a5f43c3a4fc286a345d3b411cda6f2f8182682e0.gif
その他の非破壊編集
スマートフィルターのほか、Photoshopには次のような非破壊編集がありますが、こちらは別の機会にご紹介します。
- 色調補正:「調整レイヤー」
- フィルター:スマートフィルター
- 切り抜き:レイヤーマスク
- レイヤーの拡大・縮小:スマートオブジェクト
暗い部分を明るく、明るい部分を暗く
[シャドウ・ハイライト]に戻りましょう。
[シャドウ・ハイライト]のデフォルトでは、シャドウのみの値が変わっていますが、「暗い部分を明るく」だけでなく、「明るい部分を暗く」の編集が可能です。
異なるサンプルを開いてみます。
https://blog.adobe.com/media_dd61cbf039eac24edb9b82d7cdbeeb5fd00eb0dc.gif
こちらの画像に対して[シャドウ・ハイライト]を実行します。
https://blog.adobe.com/media_b53ed511d9f0dcbb0f6bb8625973b749fb111ad3.gif
さらに、ハイライトの値を調整してみます。
https://blog.adobe.com/media_a4b07abc78fec422345a9540dc65a0b476515785.gif
明るい部分が暗くなり、机の天板など、光が当たっている部分のディテールがハッキリしてきます。
https://blog.adobe.com/media_6fffe63e673d33da615ad733e38dd8ec9565722e.gif
[シャドウ・ハイライト]は、必要に応じて[詳細オプションを表示]オプションにチェックを付けて、さらに細かい設定を行うことができますが、万能ではありません。完全な白飛びや黒つぶれには無効ですのでご注意ください。なお、[シャドウ・ハイライト]はPhotoshop CS(CCでなくCS1)以降の機能です。
手ブレ写真
最近は「手ぶれ防止」機能を備えているカメラが増えてきていますが、それでも、手ブレ写真は、悩ましい支給原稿のトップ3に入るでしょう。
手ブレ写真を補正するには、アンシャープマスクやスマートフィルターなどの「シャープ」系のフィルターを使って“がんばる”のが常套手段でした。Photoshop CCから追加された「ぶれの軽減」がなかなかいい仕事をしてくれます。
https://blog.adobe.com/media_2260b2ab81619761681dd4efe830709778be1eed.gif
まずは、スマートオブジェクトに変換し、[フィルター]メニューの[シャープ]→[ぶれの軽減]をクリックします。
https://blog.adobe.com/media_c7cbbb85102ddf411d19a63b209231f34f2c5d8e.gif
[ぶれの軽減]ダイアログボックスが開き、画像の中央の領域が点線が囲まれます。この領域を中心に「ぶれの軽減」が行われます。
https://blog.adobe.com/media_8165c448f5a5a1f30f07a67ac3ce2ad9f936036a.gif
このサンプルでは、画像の中心が手ブレを補正したい領域でしたが、必要に応じて、点線の領域を移動したり、ドラッグして増やします。
なお、あくまで「ぶれの軽減」であり、ぶれの「削除」でないこと、また、手ブレでなくボケや、複数の被写体ブレは苦手なようです。
モヤっとした画像を[かすみの除去]で補正する
モヤっとした画像を補正してみましょう(モデル:後藤 修@Eater)。
https://blog.adobe.com/media_b28b7e7567cc3300b6aa926c1aa1b9bfa18727bf.gif
スマートオブジェクトに変換し、[フィルター]メニューの[シャープ]→[Camera Rawフィルター]をクリックします。
https://blog.adobe.com/media_5495ca5daf8462986fc2f9d36f31b208f9e151cc.gif
[Camera Raw]ダイアログボックスが開いたら、[効果]タブに切り替え[かすみの除去]の適用量の値を増やします。
https://blog.adobe.com/media_631f15de120364ac2667d3deba92bdad5c7dfcc2.gif
モヤっとした感じが消え、画像全体がシャキっとしました。
窓ガラス越しに撮影した写真
次のサンプル画像では、窓ガラス越しに撮影したため、少しボンヤリしてしまっています。また、窓ガラスの汚れや蛍光灯の映り込みが生じています。
こんなときにもボンヤリ感の削除に[かすみの除去]が役立ちます。
https://blog.adobe.com/media_d38acf9f13561cd4460c1b427fbb50eefa7e2cd3.gif
スマートオブジェクトに変換する前に[スポット修復ブラシ]を選択し、ブラシサイズを変更しながら画像をドラッグして、蛍光灯の映り込みを削除しておきます([スポット修復ブラシ]はスマートオブジェクトには適用できません)。
https://blog.adobe.com/media_3d18eeca8bf9475718d216fbee202f9341dc42be.gif
[かすみの除去]を実行後、必要に応じて、[Camera Raw]ダイアログボックスで[基本補正]タブに切り替え、[露光量]を調整します。
https://blog.adobe.com/media_afcec568b07cb63422c7fcc1a0da1c112d2f88b5.gif
鮮やかな青空に戻りました。
写真にパンチを出し、ビネット効果を付ける
[かすみの除去]は写真にパンチを出すときにも有効です。
https://blog.adobe.com/media_947690e9b358293ec93fcb8e05d04e2573aa4843.gif
[かすみの除去]を設定するとき、[切り抜き後の周辺光量補正]を併用することでビネット効果(トンネルエフェクト)を演出することができます。
https://blog.adobe.com/media_e89288a951a1bd0ccc8db17a62cb44eb49d59799.gif
[Camera Rawフィルター]とは?
「Camera Raw」は、PhotoshopでRAWデータを現像するためのプラグイン。トーンカーブをはじめとする基本的な補正に加え、シャープ調整やノイズ軽減などの全体のトーン調整、グラデーションをかけたマスク作成など、ある意味、別のアプリのように動作します。Photoshopにはない優れた機能もありますが、RAWデータのみが対象でした。
Photoshop CCで追加された[Camera Rawフィルター]を使うことで、RAWデータ以外にも「Camera Raw」テクノロジーをフィルターとして利用することができます。
逆光のサンプルでは、[シャドウ・ハイライト]を使って補正しましたが、[Camera Rawフィルター]の[基本補正]内のパラメーター(シャドウ、ハイライト、露光量)を調整する方法もあります。
https://blog.adobe.com/media_12266d57e9513ffd8ff557b61f4e2a1f37cf1f15.gif
まとめ
今回は、支給画像でよくある逆光、ブレ/モヤの除去などの補正について紹介してきました。適切な機能を使うことで、早くキレイに仕上がりますので、引き出しを増やしておきたいですね。
「スマートフィルター」としてフィルターのON/OFFや値の変更を後から行えるように、フィルターを設定前にスマートオブジェクトに変換しておくことを忘れないようにしましょう。
また、[Camera Rawフィルター]は非常に奥深いので、改めてご紹介します。