Flash Professional CC 2015の新機能と海外の最新動向
2015年10月に開催されたAdobe MAX 2015ではFlash Professional CCのセッションが7講演あり、それらのセッションでFlashの最新事例や新機能が紹介されました。本記事では現在のFlash Professionalの海外での動向と今後のアプリケーションの進化を、Adobe MAX 2015のセッションレポートとあわせて解説します。
Flash Professionalの動向
もはやFlash制作のためだけのツールではない
最近のFlash Professionalは様々なプラットフォームに書き出せるツールとして生まれ変わっています。Flashコンテンツのオリジナルフォーマット 「SWF」をはじめ、HTML5 Canvas、WebGL、SVG(Snap.svg Animator)、スマホアプリ(iOS/Android)、デスクトップアプリ、ムービーファイルなどに対応しています。このことは以前執筆した記事「Flash Professional : マルチプラットフォームを制覇しよう」で詳しく説明しているのでご参照ください。
デンバー大学のシニアインタラクティブソフトウェアエンジニアのJoseph Labrecque氏はAdobe MAX 2015でのセッション「Giving Flash Professional Another Look」 で99%のFacebookゲームはFlash Player向けに作られていることや、Adobe AIR製のモバイルアプリは20万個存在することを紹介。iOSやAndroidなど様々なプラットフォームに書き出せるFlashプラットフォームの利点を主張していました。
https://blog.adobe.com/media_e2386aa08d3170ada0055b872b834cbca4ea7fbb.gif
Flash Playerのシェアの大きさを紹介
Adobe AIRの採用事例の多さが主張された
HTML5広告制作の標準ツールとして
海外の広告業界では大きな転機を迎えようとしています。「HTML5 Advertising with Flash Professional CC」というセッションでは、現在の広告制作の業界標準についてAOLのシニアクリエイティブ・ディレクターのCory Hudson氏 が発表しました。2015年9月にリリースされたGoogle Chrome 45の影響でSWFバナー広告が自動的に再生されなくなったことを一例に、バナー広告のフォーマットはSWFからHTML5に変わろうとしていることを紹 介。HTML5バナー広告の業界標準フォーマットを定めようとするiabの動向を説明したうえで、Flash ProfessionalのHTML5 Canvasドキュメントの有用性と省容量/省電力化するための具体的な手法を解説されました。
SWFファイルフォーマットの状況を説明
iabのHTML5バナー広告の厳しいレギューションを紹介。ファイル容量をはじめCPU使用率やサーバーリクエスト数も基準が設けられている。
Flash Pro CCとCreateJSの利点が紹介された
プラグインで広がるFlash Professionalの用途
「Snap.svg」は、SVGを利用してイ ンタラクションコンテンツを開発できるJavaScriptライブラリです。Webのリッチ表現を作れるという点でHTML5 CanvasやWebGLと似ていますが、SVGをベースとするSnap.svgはベクターグラフィックスの扱いに長けています。
https://blog.adobe.com/media_63920688fe32c7331f2ddf30832ebffa60f23eaa.gif
左がラスター画像、右がSVGを利用したベクターグラフィックス。拡大しても荒れない
アドビのクリエイティブ・テクノロジストのCj Gammon氏のセッション「Animating SVG with Flash Professional CC」では、Flash Professionalで制作したアニメーションをSnap.svgに出力できることを紹介。この出力機能はFlash Professionalに元から備わっているものではなくプラグイン「Snap.svg Animator」として提供されているものです。
現在のFlash ProfessionalにはカスタムプラットフォームSDKが用意されており、サードパーティーが独自に出力機能をプラグインとして開発することができ ます。Snap.svg以外にも、FlashアニメーションをUnityやCocos2d-xで利用できるようにする技術「GAF」、クロスプラットフォーム技術の「OpenFL」、WebGLランタイムの「AwayJS」といった様々なサードパーティー製のプラグインが存在します。
https://blog.adobe.com/media_79e0417cb06ff303f42b9e3f05138e4c3fc8e01f.gif
Illustratorで描いたイラストをFlash Professionalでアニメーションさせ、Snap.svgへ出力するワークフローを紹介
https://blog.adobe.com/media_027a1056696bdd3f1be2c1c2835f830a3310f101.gif
Flash Professionalで「Snap.svg Animator」ドキュメントとしてアニメーションを制作。SVGを利用したWebコンテンツとして書き出せることが紹介された
HD/4K時代の2Dアニメーション制作に適している
アメリカのアニメーション制作会社TitmouseのMike Roush氏のセッション「Technique for TV with Flash Professional CC」 ではアニメーション制作におけるFlash Professionalのテクニックが紹介されました。Flash Professionalはベクターアニメーションの制作に適しており、HDや4Kサイズへのアップスケールも容易であると説明。Flash Professionalの拡張機能を駆使しアニメーション制作の効率化に取り組んでいることが紹介されました。
Titmouseのアニメーション作品の事例
キャラクターの口のアニメーション制作を補助する拡張機能
https://blog.adobe.com/media_d0cf5e3222f3889631f86f4750159f7f3f46c366.gif
キャラクターの顔のアングルを変更する補助ツール
Flash Professionalの新機能
このような時代の背景を踏まえ、Flash Professionalはどのような進化をしようとしているのでしょうか? アドビのシニアプロダクトマネージャーのAjay Kumar Shukla氏によるセッション「What’s New in Flash Professional CC」では近い将来搭載が予定されている新機能が紹介されました。主にアニメーション制作ツールとして完成度を高めようとしていること、Creative Cloudアプリケーションとしての連携、HTML5への対応強化が主軸となっているようです。
新しいブラシツール
ベクターブラシ機能の強化。「Brush Library」パネルが搭載され、ベクターブラシの選択肢が格段に増えます。線のパスや太さなどが再編集可能。イラストの制作とアニメーション実装を同 一のソフトウェアでできるのがFlash Professional CCの利点ですが、ベクターブラシの充実によりイラスト制作がさらに効率化するでしょう。
Creative Cloud ライブラリ
今年のAdobe MAX 2015の基調講演では、モバイルアプリやストックフォト、デスクトップツールの連携が可能なCreativeSyncテクノロジーを活用したワークフ ローが主張されました。Flash Professionalもその方針に従い、PhotoshopやIllustratorに搭載されているのと同等の「CC Libraries」パネルが搭載されます。Adobe Capture CCで作成したカラーテーマやブラシなど、モバイルアプリで用意した素材が活用できそうです。
HTML5 Canvasドキュメントでのテキストのレンダリング
従来のHTML5 Canvasドキュメントではテキストはデバイスフォントとして書き出されていました。デバイスフォントの場合は再生環境にインストールされているフォン トに依存するため、再生環境によってはフォントを表示させることができませんでした。今回の機能改善により、フォントはベクターグラフィックに変換され出 力されるため、いずれの環境でも同一のテキスト表示ができるようになります。
https://blog.adobe.com/media_14ccbad98bbb9c3e2728f72e5efcb642b5064a25.gif
パブリッシュ設定に「Convert text to outlines」という項目が追加されている
スウォッチにタグを登録
スウォッチというのはコンテンツのキーカラーを保存できるパネルのことです。スウォッチに登録したカラーにタグをつけることことで、カラーがどの箇 所に使われているのか明確にわかりやすくなるのでしょう。登録したスウォッチカラーは色を編集すると、ドキュメント内でその色が使われている箇所が一斉に 変更されます。この機能を使って昼のイラストを夜のイラストに変更するデモが紹介されました。
その他の新機能
タイムラインアニメーション制作に役立つ機能として、カラー表示が可能になったオニオンスキンや、ステージの回転機能が予定されています。SVGの読み込みもサポートされるようです。
未来の状態は緑、過去の状態は青で表示される
ステージ自体の回転がサポートされる
最後に
2015年6月のときのFlash Professionalのアップデートは「アニメ制作機能がさらに充実! Flash Professional CC 2015の新機能紹介 – ICS LAB」で紹介しましたが、今後のアップデートも使い勝手の向上と新機能の両方がバランス良く開発されているのではないでしょうか。
Webに限らずインタラクションデザインの領域が広がっており、様々なランタイムテクノロジーを使ってコンテンツを作る必要性が高まってきていま す。Flash Professionalはそれに応えることのできるツールとして進化し続けています。今後のFlash Professionalのアップデートが楽しみですね。