Adobe PrimetimeのHTML5に対する方針について

この記事は、Jeremy Helfandによる「Adobe Primetime’s Commitment to HTML5」の翻訳です。

Adobe Primetimeは、グローバルでマルチスクリーンのオーバーザトップ(OTT)プラットフォームを提供するソリューションとして、生放送、リニアTV、オンデマンドTV体験向けのコンテンツ配信、マネタイゼーション、パーソナライゼーションを提供しています。Primetimeは2013年の提供開始以降、Channel 5、Comcast、HBO、NBC Sports、RTL Group、Showtime、Sony Crackle、Time Warner Cable Turner Broadcastingをはじめとする世界中のメディア企業で採用され、NBC Sportsのソチ冬季五輪などの大型イベントをサポートしました。

アドビは、さまざまなプラットフォームで高品質かつ信頼できるコンテンツ視聴体験を提供することを最優先事項に掲げています。そのため、アドビはHTML5に対するサポートをさらに推し進めていきます。Primetimeは、プラットフォームにとらわれないソリューションとして、デスクトップ、モバイルWebブラウザー(iOS、Android)、コネクテッドデバイスにおいて安全かつ保護されたコンテンツ再生を実現するためにHTML5コンテンツをサポートしています。これにより、リーチやマネタイゼーションを最大化します。

OTTテレビと映画向けのAdobe PrimetimeとHTML5

Adobe Primetimeは、2015年9月のIBCで発表したように、あらゆるスクリーンに対してHTML5環境で生放送、リニアTV、オンデマンドによるOTT体験の展開をサポートします。HTML5対応TVSDKは、オープンHTML5標準に対するアドビのビデオソリューションの専門性を応用しています。

HTML5対応TVSDKは、すべてのスクリーンに対してHTML環境の高品質なビデオ体験を提供したいと考えているPrimetime顧客向けのソフトウェア開発キットです。HTML5対応TVSDKの提供にあたり、アドビのビデオソリューションに対する専門性を活かしつつ、モバイルデバイスでの映像体験を可能にするオープンHTML5標準に準拠しました。その結果、主要なメディア企業はユーザーがモバイルWebサイト上で求めるコンテンツの配信を増やし、モバイルWebサイトでの視聴者の滞在時間を伸ばしています。HTML5対応TVSDKは、HTML5準拠のデスクトップブラウザーやOTTデバイスで動作し、補足的な視聴体験を提供します。

アドビのHTML5サポートを活用する際の利点

  1. 効率的なワークフロー:HTML5対応TVSDK は、すべてのワークフローをサポートします。Adobe Primetimeもその一翼を担っています。
  2. より広範囲なリーチ:Primetimeユーザーは、HTML5がサポートされていない場面では、下位互換ソリューションとして、TVSDK 2.0を利用できます。TVSDK 2.0とHTML5対応TVSDKを活用することで、Primetimeユーザーは場所を問わず、あらゆるスクリーンにおいてリーチを獲得することが可能です。

Adobe Primetimeは、ビデオ配信によるポテンシャルリーチを最大化します。現在、モバイルとタブレットのアクティブブラウザーの51%、デスクトップのアクティブブラウザーの52.5%がHTML5のプレミアムビデオをサポートしています (出展:NetMarketShare、2015年10月)。その他の標準機能とPrimetimeのHTML5サポートを組みわせることで、すべてのモバイル/タブレット、デスクトップブラウザーを網羅します。

Adobe PrimetimeとFlash Playerサポート

Adobe PrimetimeのTVSDKは、Adobe Flash Playerと統合した、マルチスレッド化したプレミアムビデオエンジンで開発されています。HTTPライブストリーミング(HLS)をネイティブでサポートするほか、ハードウェアデコーディングとレンダリングをフルGPUでサポートします。HTML5対応TVSDKのFlashフェイルオーバー機能は、それらと同じエンジンを活用しており、Primetimeユーザーやパートナーだけが利用できる機能です。サードパーティが開発したAdobe Flash PlayerのNetStream APIに対するHLSサポートは、ActionScript(アクションスクリプト)で開発する必要があり、アプリのディスプレイレンダリングやActionScript Virtual Machineで共有されるシングルスレッドのActionScript実行環境に制限されます。これにより、高ビットレートや高画質なビデオコンテンツの場合、パフォーマンスに制限が生じる可能性があります。

しかし、Adobe Primetime TVSDKスタックは、それぞれのデスクトッププラットフォームハードウェアの加速機能を最適化するマルチスレッドアーキテクチャを活用し、ネイティブで動作をサポートします。これにより、さらに高画質な映像再生とパフォーマンスを実現します。また、Adobe Primetime TVSDKスタックは、その他のTVSDK対応モバイルやOTTプラットフォーム上でも利用できる同一のクロスプラットフォームスタックでもあり、開発を容易にする同様の機能、動作、APIを提供します。

HTML5対応TVSDKは、2つの主な使用用途をサポート

Adobe Primetimeのユーザーは、主に2つの目的でHTML5対応TVSDKを使用します。まず、フル暗号化とコンテンツ保護を備えた安全なストリーミングの提供での使用です。もう一つが、非暗号化HLSもしくはAES128(Advanced Encryption Standard:高度暗号化標準)の配信での使用です。

HTML5対応TVSDKは、ターゲットブラウザーに基づき正しいContent Decryption Module (CDM)をロードし、正しいストリーミングをリクエストします。SafariでのHLSストリーミング、Firefox、IE/Edge、ChromeでのMPEG DASHストリーミングなどに対応します。TVSDK 2.0は、デスクトップでのFirefox、Chrome、IE/Edge、Safariの旧バージョンを含む、HTML5をサポートしないMedia Source Extensions (MSE)/Encrypted Media Extensions (EME) などのブラウザー向けの下位互換用で利用できます。

保護もしくは非保護ストリーミング配信において、HTML5対応TVSDKを使用するかしないかにかかわらず、両方の配信メカニズムがデスクトップとモバイルWebブラウザーをサポートし、既存のTVSDKと同様の機能を提供します。

Adobe PrimetimeがEncrypted Media Extensions (EME) を通じてHTML5をサポートし、保護された映像コンテンツ配信においてユーザーの皆様に多大なメリットをご提供できることを嬉しく思います。

Adobe Primetimeは、すべてのEME対応、HTML5準拠ブラウザーに対して保護されたビデオコンテンツを提供するCDMを使用しています。HTML5 MSE非準拠の一部のモバイルやタブレットブラウザーについては、Primetimeがネイティブ展開をサポートします。一部のデスクトップブラウザー向けには、PrimetimeはDRMで保護されたビデオの再生を可能にするAdobe Access をデフォルトで使用しています。

業界全体としては、プレミアムビデオ体験をあらゆる視聴プラットフォームで提供できる統一プラットフォームへの需要が高まっています。EMEを通じてHTML5は、ブラウザー開発者向けにすべてのスペックを提供し、ブラウザー上でのプレミアムビデオ体験の提供を可能にするAPI開発を実現しています。大半の電機メーカー、従来のブラウザー開発企業、コンテンツクリエイターは配信の業界標準としてEMEを通じたHTML5への移行に取り組んでいます。一例ですが、Chromecastや直近のSamsung TVはEME対応、HTML5準拠ブラウザーを提供しています。

今後の展開

放送局、プログラマー、ペイTVプロバイダーにPrimetimeのHTML5対応TVSDKを活用いただけることを嬉しく思います。それにより、IP接続されたスクリーンにプレミアムビデオ体験を提供し、あらゆるデバイスで一貫したコンテンツ配信が可能となります。HTML5は、Webやモバイルプラットフォーム向けのオープンスタンダードとなっており、先駆者であるAdobe Flash Playerの機能をベースに開発されました。アドビは、Adobe Primetimeを通じて既存のFlash Playerコンテンツの機能を維持しつつ、HTML5を活用し同レベルの機能やリーチを実現したいという顧客のニーズにお応えしてまいります。アップデートやHTML5に関する2016年のPrimetimeの開発予定については今後の発表をお待ちください。

By Jeremy Helfand