アドビ、ビッグデータを活用して高精度な米国の景気動向分析を実現
正確なインフレ率測定に活用できる、オンラインの物価変動を測定するデジタル指数「Digital Price Index」を発表
※以下は、2016年3月16日に弊社米国本社から発表されたプレスリリースの抄訳です。
【2016年3月22日】
米国カリフォルニア州サンノゼ発:Adobe(Nasdaq: ADBE、本社:米国カリフォルニア州サンノゼ、以下アドビ)は、ビッグデータを活用して高精度な米国の景気動向分析を可能にするDigital Economy Projectを発表しました。本プロジェクトに含まれる3つのデジタル指数は、オンラインの物価の変動を測定するDigital Price Index(DPI)、オンラインの住宅情報の検索数を測定するDigital Housing Index(DHI)、オンラインの求職活動の変化を測定するJob Seeking Index(JSI)です。DPIの測定においては、世界的に著名な2名の経済学者である、シカゴ大学ブースビジネススクール経済学教授で、オバマ米大統領経済諮問委員会の元委員長であるオースタン グールズビー(Austan Goolsbee)氏と、スタンフォード大学経済学部教授であるピート クレノー(Pete Klenow)氏との連携のもと行われました。
DPIは、オンラインで販売された約150万の製品に対するデジタルトランザクションを分析し、従来のインフレレポートに不足している情報を提供します。DPIは、ガソリンのような実店舗で購入されるものは測定していませんが、他の情報源よりも高い精度でデジタルトランザクションを追跡します。例えば、米国労働省労働統計局(BLS)が集計する正式な消費者物価指数(CPI)は、消費者調査を行って、消費者が購入した製品カテゴリー別に実際の売上高を見積もっています。それに対して、DPIは、何百万もの製品に対し、実際に購入した数量のトランザクションデータを使用して、リアルタイムでデータを収集します。
アドビのデータインサイト担当バイスプレジデントのミッキー メリクル(Mickey Mericle)は、次のように述べています。「消費者物価指数は、実店舗の製品価格の確認と4年ごとに実施される消費者調査を組み合わせることで物価の変動を推測するため、実質的に比較的新しい製品は反映されません。その一方で、DPIのデータは、オンラインによる毎月の電気製品購入支出の80%が、発売後1年未満の新製品の購入に費やされているという驚きの結果を示しています。デジタルによる測定により、従来のインフレレポートで不足している部分を補います。リアルタイムで大規模な物価情報が、景気動向を評価するためのツールとして重要性を増しており、膨大なeコマースのデータ量が、以前よりも正確なマクロ経済動向の予測を可能にします。」
測定方法
アドビは、実際に支払った価格の情報と実際に販売した数量にリアルタイムでアクセスすることで、デジタル中心の分析を実施した初の企業です。米国の小売業者上位500社に対しオンライン経由で費やされる10ドルのうち7ドル50セントが、Adobe Marketing Cloud*を介しています。DPIは、2015年1月から2016年2月にかけて、米国のWebサイトにアクセスした延べ80億人と140万の製品について集計した匿名データの分析に基づいています。
Adobe Digital Indexは、インフレの測定に実際の購入数を使用するフィッシャーの理想算式を採用しており、この方法はインフレ率算出する際の標準的な算式として一流の経済学者たちに認められています。フィッシャーの理想算式を使用するためには、十分なデータやタイムリーなデータが必要となるため、現在この方程式を採用している組織はありません。DPIは、フィッシャーの理想算式を採用することによって、製品の価格が急騰しても、オンラインショッピングを行う消費者が適正な価格の競合製品や代用製品を見つけることを考慮に入れることができます。さらに、DPIは購入数量をリアルタイムで測定できるため、Adobe Digital Indexのブラックフライデーやサイバーマンデーのレポートでは、小売店が一斉に値下げを行う際の影響も正確に反映されています。
電気製品と食料品のDPI
今回分析した電気製品と食料品のDPI分の分析結果は以下のとおりです。
- 電気製品(対前年変化率):電気製品の価格は2015年1月から2016年1月の間で10.4%下落しており、この下落は製造コストの削減、技術の進歩、小売業者による割引率の引き上げに起因しています。CPIでは、電気製品全般の価格下落は示されていませんが、2015年1月から2016年1月の間でパソコンは7.1%、テレビは14.4%の価格低下が発表されています。これに対してDPIでは、同期間でパソコンは13.1%、テレビは19.4%の価格低下を示しています。さらに、DPIは、CPIが対象としていない製品の価格変動も測定しており、例えばタブレットは21.1%の価格低下を示しています。
- 電気製品(対前月変化率):2016年2月、テレビ、パソコン、スマートウォッチ、カメラなどの電気製品の価格は1月から0.6%低下し、最大の下落幅を示しました。2月のパソコンの価格は1月から0.8%低下、テレビの価格は1.5%低下しました。2015年11月の物価は、2014年11月から約1%下落しました。11月、ブラックフライデーとサイバーマンデーの影響により、物価は平均で4.7%下落しました。割引率はこのホリデーシーズンに最大となりましたが、物価は1月に標準に戻りました。DPIのデータは、2015年から2016年にかけて、約100万の電気製品から得られたオンライントランザクションに基づいています。
- 食料品(自宅購入):BLSによると、消費者の家計のうち食品が占めている割合は14%であることが明らかになりました。DPIが、2015年1月から2016年1月の間で0.7%の物価上昇を示しているのに対し、CPIでは0.4%の物価下落が示されています。DPIは、オンラインで購入された約19万5,000の食料品の30~40%を対象として測定しており、オンラインで購入して実店舗で引き取られた食品で大きく構成されています。オンラインで購入された食料品の価格は2016年1月から2月にかけて0.2%上昇しており、価格の上昇はりんご、卵、肉、コーヒーで最大でした。
牛乳や卵など代用品の選択肢が限られている食料品では、DPIとCPIを組み合わせると価格野変動をほぼ正確に追跡可能です。これは、CPIとDPIが測定する食料品の物価上昇の差が、DPIが採用するフィッシャー式で拾い上げられる消費者嗜好の変化と、オンラインと実店舗で購入される食料品の組み合わせの違いに起因するためです。オンラインで購入される食料品の上位カテゴリーはノンアルコール飲料で、実店舗では肉が上位カテゴリーになります。その一方で、オンラインで購入される食料品の50%超が、肉、乳製品、果物、野菜などの食物に集中しています。 - 新製品:オンラインによる電気製品の購入支出のうち平均80%が新製品に費やされており、消費者嗜好が絶えず変化していることが示されています。なお、食料品では毎月オンラインで新商品に費やされる支出は16%でした。新製品とは、過去1年間に発売された製品として定義されます。
グールズビー教授は、次のように述べています。「CPIは多種多様なカテゴリーについての見解を提供しますが、新製品の発売を考慮することに常に苦労しています。アドビは、過去と現在のトランザクションから得られる実データを組み合わせることで、米国における消費者の購入パターンの変化と物価の変動を迅速かつ的確に特定することを可能にしました。」
クレノー教授は、次のように述べています。「Adobe Marketing Cloudのデータは、米国のインフレ率に新しいインサイトをもたらすという点で優れています。デジタルコマースとeコマースの流入により、それらを通してインフレを正確に把握する必要があります。また、アドビにはアクセスできる膨大なデータがあるため、リアルタイムで製品カテゴリー別とのインフレ率評価で優位に立てる企業は他にありません。」
Job Seeking IndexおよびDigital Housing Index:
Digital Housing Index(DHI):2月の住宅の購入および賃賃物件情報のオンライン検索数は、前年比で20.5%上昇しました。住宅情報の検索は2015年の春に急増し、4月と7月に検索件数が最多となりました。8月には、住宅情報の検索は減少し始め、12月まで右肩下がりとなりました。住宅情報の検索データは、2014年12月から2015年12月にかけて米国の不動産情報のWebサイトにアクセスした延べ20億人から集計した匿名データの分析から取得しています。
Job Seeking Index(SJI):2月の求職情報のオンライン検索は、前年比で10.3%減少しました。BLSによると、同時期の失業率は10.9%減少しました(2016年は4.9%、2015年は5.5%)。アドビのデータは、2014年12月から2016年12月にかけて、米国の求職情報のWebサイトと米国の一流企業の求人ページにアクセスした延べ10億人から集計した匿名データの分析から取得しています。アドビは、米国の大手企業30社のうち20社の検索を測定しています。**
Adobe Digital Indexは、毎月DPIを配信し、より高精度にカテゴリーと指標を増やしながら、デジタル市場の可視化を促進するべく、Digital Economy Projectを展開していきます。
*Source: Internet Retailerによる2015 Top 500 eGuide
**Wikipedia