こんなときはイラレよりInDesignが断然便利 ─2つの作成方法&2つのテキストフレーム編─

連載

YUJIが指南、今こそInDesignを使いこなそう

皆さん、こんにちは。
2回目となる今回は、IllustratorユーザーがInDesignを使った時に違和感を感じそうな点をいくつかお話していきたいと思います。

まずは、ぼくが感じるllustratorとInDesignの違いとして挙げておきたいのが、「Illustratorは素材をアートボードの上に置いていく感覚で作業をする」のに対し、「InDesignでは、まず素材のための入れ物を用意し、その中に素材を配置しながら作業をする」という点。
あくまでも個人的な感覚なので、ちょっと違うと思う人もいると思うんだけど、InDesignでは画像やテキストといった素材を配置するためには、必ずグラフィックフレームやテキストフレームが必要となります。画像で言えば、額縁を作ってから、その中に写真を配置するといった感覚。テキストを入力する場合でも、[文字ツール]でドラッグしてテキストフレームを作ってから入力することになる。Illustratorのようにクリックするだけでテキストを入力できないので、「使いにくいな〜」と感じて敬遠してた人もいるかもしれません。

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InDesignのテキスト入力方法

でも、入れ物であるフレームと中身となる素材(テキストや画像)が分かれているので、かえってコントロールしやすい部分が多いのも事実。一度、慣れてしまえば使いやすいはずなので、まずは使ってみてほしいです。

新規ドキュメントを作成する際の2つのボタン

InDesignを起動して新規ドキュメントを作成しようとすると、まず戸惑うのが[新規ドキュメント]ダイアログ。ページ数やページサイズを設定して次に進もうとすると、ボタンが2つある([キャンセル]ボタンは含めていません)。

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初めてInDesignを使う人は、[レイアウトグリッド]と[マージン・段組]のどちらをクリックすれば良いのか、戸惑うんじゃないかと思います。
これ、どちらのボタンをクリックしても、最終的に印刷物用のドキュメントは作成できるんだけど、いわゆるゴールに行き着くまでの手間が違ってきます。

[マージン・段組]のボタン

まずは試しに、[マージン・段組]のボタンを押してみてください。すると[マージン]や[段組]を設定するダイアログが表示され、[OK]ボタンをクリックすれば新規ドキュメントが作成されます。作成されたドキュメントはIllustratorのドキュメントに似ているので、分かりやすいと思います。

[レイアウトグリッド]のボタン

では今度は、[レイアウトグリッド]のボタンを押してみてください。今度はやけに設定項目が多いし、おまけに背面には緑色のグリッド(升目)が表示されているのが分かると思います。この緑色のグリッドを「レイアウトグリッド」と呼びます。

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[新規レイアウトグリッド]の各項目の値を変更してみましょう。すると、背面に表示されているグリッドの位置やサイズが変わるのが分かるはずです。じつはこのダイアログでは、作業を進めるうえでの基準となるレイアウト用紙を作ると考えてください(このレイアウトグリッドは印刷はされません)。雑誌や書籍等のように、決められた本文フォーマットがある場合には、このダイアログで本文用の書式を設定しておくことで、レイアウトグリッドに合わせて作業していけるわけです。最初の設定に多少手間はかかりますが、あとからの作業はグッと楽になります。統一性のあるデザインレイアウトのためには必須の機能と言えるでしょう。

まとめると、雑誌や書籍等のように、決められた本文フォーマットがあるような印刷物では[新規レイアウトグリッド]、ポスターや文字の少ないリーフレット等では[マージン・段組]を選択すると良いでしょう。目的に応じて使い分けてみてくださいね。

テキストを入力する2つのフレーム

さて、今度はテキストを入力してみましょう。ここでも、戸惑うポイントがあります。それは、テキストの入れ物となるテキストフレームが2つあることです。
[文字ツール]で作成するプレーンテキストフレームと、[グリッドツール]で作成するフレームグリッドです。

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図の升目(グリッド)がある方がフレームグリッド(右)、升目がない方がプレーンテキストフレームです(左)。グリッド自体は印刷されないので、どちらのテキストフレームを使っても良いのですが、その性質が違うので戸惑う原因にもなっているかもしれませんね。

グリッド書式属性を持つフレームグリッド

では、プレーンテキストフレームとフレームグリッドの違いを理解するために、「美しい日本の風景」という文字列をそれぞれのフレームにペーストしてみましょう。

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すると、下図のようになります。

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プレーンテキストフレームでは、元の書式のままペーストされたのに対し、フレームグリッドでは書式が変更されてペーストされちゃいました。Illustratorであれば当然、プレーンテキストフレームと同様、元の書式のままペーストされますよね。ですから、フレームグリッドの結果に「?」となっちゃう方も多いと思います。

その理由は、「フレームグリッドは、入れ物であるフレーム自体が書式属性を持っている」からです。試しにフレームグリッドを選択して[オブジェクト]メニューから[フレームグリッド設定]を選択してみてください。すると、[フレームグリッド設定]ダイアログが表示されます。

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このダイアログを見てみると分かりますが、フォントやサイズ、字間、行間といった書式が「グリッド書式属性」として設定されているのが分かります。つまり、この設定の内容に強制的に置き換えられてテキストがペーストされたってわけです。
「えっ、なんでこんな設定がされているのかって?」
それは、雑誌や書籍のように、あらかじめ決められた本文フォーマットがある印刷物の場合、テキストを流し込むだけで自動的に[グリッド書式属性]の設定内容でテキストが流れるので、あとから書式を設定しなくてもよいといった利点があるからです。

つまり、プレーンテキストフレームが「単なるテキストの入れ物」であるのに対し、フレームグリッドは「フレーム自体が書式属性を持っている」という違いがあるわけです。用途に応じて、この2つのテキストフレームを使い分けるのが、InDesign攻略のポイントのひとつと言ってもよいでしょう。

ちなみに、レイアウトグリッドとフレームグリッドは、見た目が似ているので混同しがちですが、レイアウトグリッドはあくまでも「作業をするための目安となるなるもの」で、レイアウトグリッド内にテキストを配置することはできません。ガイド類と同じと考えた方が分かりやすいかも。フレームグリッドで効率的に作業するための目安となるのがレイアウトグリッドと言うわけです。

グリッド揃えの違い

さて、もう1つ大きな違いがあります。それは[グリッド揃え]です。それぞれのフレームを選択して[段落]パネルのパネルメニューから[グリッド揃え]を選択してみましょう。

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プレーンテキストフレーム

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フレームグリッド

プレーンテキストフレームが[なし]、フレームグリッドが[仮想ボディの中央]になっていると思います。この設定をそれぞれ逆にしてみましょう。

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フレームグリッドでは行がグリッドに揃わなくなってしましました。つまり、テキストの行がグリッドに沿って流れていくのは[グリッド揃え]が「あり(デフォルトでは[仮想ボディの中央])」になっていたからだと分かります。

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では、プレーンテキストフレームはどうでしょうか。テキストの1行目の上に変なスペースができ、行送りも変わってしまいました。プレーンテキストフレームには、グリッドがないのになぜなんでしょうね。
[表示]メニューから[グリッドとガイド]→[ベースライングリッドを表示]を実行してみると分かりますが、テキストの中央がベースライングリッドに揃っているのが分かります(下図)。
※日本語組版では、ベースライングリッドは基本的に使用しませんが、欧文組版ではベースラインを基準にして組版を行います。

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つまり、基本的な使い方として、プレーンテキストフレームが[グリッド揃え]を[なし]、フレームグリッドは[グリッド揃え]を[仮想ボディの中央]で運用するわけです。思わぬ組版結果になった時には、[グリッド揃え]の設定が間違っていないか確認してみてくださいね。

以上のように、プレーンテキストフレームとフレームグリッドでは、その性質が大きく違います。まずは[グリッド書式属性]と[グリッド揃え]がどういったものかを、しっかりと理解し使い分けられるようになりましょう。

その他の違い

実は、プレーンテキストフレームとフレームグリッドには、その他にも違いが3つあります。
1つは[ジャスティフィケーション]ダイアログの[自動行送り]の値です。

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プレーンテキストフレームでは「175%」、フレームグリッドでは「100%」となっています。

そして、2つ目と3つ目は[文字]パネルのパネルメニューにある[文字の比率を基準に行の高さを調整]と[グリッドの字間を基準に字送りを調整]です。

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プレーンテキストフレームではどちらも「オフ」、フレームグリッドではどちらも「オン」になっています。

これらの違いは、通常の作業ではあまり気にしなくてもかまいません。一応、こんな違いもあるんだと頭の片隅にでも覚えておいてもらえればと思います。
なお、これらの設定がどういったものか気になる方は、筆者のサイトで内容を確認してみてください。

では、今回はここまでにさせてもらって、次回からは文字組みのさらに便利なポイントを紹介していきますね。では、また〜

なお、InDesignの体験版はこちらからダウンロード可能です。

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