長寿アニメ番組「シンプソンズ」の生放送を実現した、アドビのツールとは?

※この記事は英語版ブログの抄訳です。

1997年に放送された『ザ・シンプソンズ』の「ホーマーの声優チャレンジ」の回で、ホーマー シンプソンは犬のキャラクター「プーチー」を演じ、アニメーションの世界の真実を知りました。ホーマーが、番組が生放送されるかどうか尋ねたところ、ベテラン声優は「アニメーターが手首を痛めるから、アニメ番組の生放送はほとんどない。」とそっけなく答えたのです。

『ザ・シンプソンズ』を長年愛してきたファンの方々は、ホーマーがそのとき何かを知っていたのではないかと驚くかもしれません。

約20年を経て、ホーマーの予言的な質問が現実のものとなりました。『ザ・シンプソンズ』の制作チームは、Adobe Character Animatorを使って、2016年5月15日に本作初となる生放送を実施しました。ホーマーの声を担当するダン カステラネタ(Dan Castellaneta)が、3分間の生放送において、その日の出来事について語り、ファンから寄せられた質問に直接答えました。

「Simprovised」(Simpsons + Improvised(即興の))というタイトルが付けられたこのエピソードは、『ザ・シンプソンズ』とその多くのファン、そして生放送のテレビアニメの歴史において新たな境地を切り開きました。

どのように生放送を実現したのか?

信じられないかもしれませんが、適切なツールさえ使えば、その仕組みは意外と単純です。ダン カステラネタの演技に合わせ、Adobe Character Animator(Adobe Creative Cloudに含まれるAfter Effects CCの新機能)が、自然なリップシンクとキーボード操作によるアニメーションでマジックを生み出しました。今回の生放送において、Foxと『ザ・シンプソンズ』のチームは、アドビのデジタルビデオ&オーディオチームがNAB Showで初公開したCharacter Animatorの次期バージョンを活用しました。Character Animatorの次期バージョンは、まもなく提供が開始予定です。

アドビの戦略開発シニアマネージャーであるヴァン ベディエント(Van Bedient)は、次のように述べています。「『ザ・シンプソンズ』は常にエンターテイメントの世界で次に何が来るのか、何ができるようになるのかの可能性の限界を押し広げています。彼らはリスクを恐れていません。世界的に著名なアニメ番組を生放送したことは、テクノロジーの世界での新たな可能性を示す最高の機会だと感じました。」

Adobe Character Animatorは、文字通り、2Dキャラクターに命を吹き込むツールです。プロのアニメーターまたはデザイナーは、Photoshop CCやIllustrator CCでレイヤーを使ってキャラクターを作り、これをCharacter Animatorのシーンに取り込み、キャラクターの動きをWebカメラの前で演じます。細かい顔の表情もすぐに反映され、簡単なキーボード操作で録音した会話や他のアクションと組み合わせることができます。それにより、キャラクター同士、または人間が直接お気に入りのキャラクターとかけ合いをする、自然でリアルタイムなアニメーションが作成できます。微笑みかければ、キャラクターは微笑み返してくれます。

アドビの製品管理DVAシニアディレクターであるビル ロバーツ(Bill Roberts)は、次のように述べています。「アニメーションは、時間と手間がかかるものだと考えられてきました。従来のアニメーション制作手法では、納得のいく仕上がりを得るまでに多くの時間を要します。また、感情や動きの表現は難しく、急いでデザインをすると重要な『間』が台無しになるリスクもあります。Character Animatorはアニメ制作の現場において革新的なツールです。」

Character Animatorはランチ中の会話から生まれ、それがAfter Effectsのエンジニアとアドビの研究者のブレインストーミングに発展しました。エンジニアは、After Effectsユーザーが手作業でアニメーションを動かす限界に挑んでいることを知り、研究者がそのプロセスを迅速かつ容易にするツールを開発しました。製品としてのビジョンは、PhotoshopとIllustratorで作られた作品をインタラクティブにするという構想にたどりついた時に大きく広がりました。

After Effectsの共同開発者であるデイヴィッド サイモン(David Simons)は、次のように述べています。「私たちは常にユーザーの作品からインスピレーションを得ています。その中には、世界中で愛されている漫画やアニメのキャラクターもあります。私たちは、アニメーションを操作することに特化した製品にチャンスがあることに気付きました。」

チームは、アニメーション制作を演技や楽器演奏のように簡単にする方法を模索していましたが、Character Animatorがアニメの生放送に使用されることは予想していませんでした。

「パフォーマンスに対するフィードバックをアニメーターがすぐに得られるようにリアルタイムに動くインターフェイスを制作しました。しかし、生放送に関する問い合わせを数多く受けるようになり、Character Animatorが大きな可能性を秘めていることを実感しました。私自身、1990年代前半からの『ザ・シンプソンズ』のファンで、問い合わせがあったときには、初の生放送に協力できるというこの機会にチーム一丸となって協力することを決めました。」

シンプルで速い、リアルタイムのアニメーションを実現するCharacter Animatorが非常に好意的な反応を得ていることは驚くことではありません。

「私が手がけてきた製品の中で、Adobe Character Animatorは、CEOから子供まで、見た人全員を笑顔にする初めての製品です。簡単で楽しいやり方でアニメーションに命を吹き込みます。これにより、クリエイターは全く新しいアニメの視聴方法やキャラクターとのインタラクション方法を利用することが可能になりました。」とビル ロバーツは述べています。

製品情報

アニメーションを作成し、Adobe Character Animatorの可能性をぜひご体感ください。

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