Adobe Sensei: コンテンツとデータの融合
この記事は、2016/11/2 にポストされた Adobe Sensei: Mastering Content and Data(原文執筆:Abhay Parasnis)を翻訳したものです。
【2016年11月8日】
過去最大規模のクリエイティブカンファレンスAdobe MAXの開催にあわせ、デザインとデジタルエクスペリエンスの提供を大幅に改善し、アドビのクラウドプラットフォームに組み込まれるフレームワークとインテリジェントサービス群で構成するAdobe Senseiを発表しました。 「Sensei」とは「指導者」または「教師」の意味で、アドビのプラットフォームに組み込まれた人工知能(AI)、マシンラーニング、そしてディープラーニングにおける深い専門知識を的確に表現した言葉です。
AIとマシンラーニングは、テクノロジー業界で広く普及しています。正確な音声認識からコンピュータによる画像認識にいたるまで、広範な問題を解決する水平フレームワークを構築するために多大な労力が費やされています。このような幅広い取組みとは異なり、Adobe Senseiは、科学的データと人間のクリエイティビティを融合するという独自の手法をとっています。Adobe Senseiは、アドビがサービスを提供している市場における複雑なエクスペリエンス上の課題解決に特化しており、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Marketing Cloudのプラットフォーム全体にわたって、ユーザーがより生産的かつ迅速に作業を進められるように支援します。
Adobe Senseiは、AI、マシンラーニング、ディープラーニングおよび関連分野における最新技術の成果を統合し、アドビが培ってきた以下の2つの専門性を提供します。
膨大なコンテンツとデータ:
AmazonのおすすめやGoogle Wazeの渋滞情報など、より多くのデータがより良い結果をもたらすということを一消費者としての体験からも理解しているように、高解像度画像やお客様のクリックといった膨大なコンテンツとデータの匿名情報がアドビのAI / マシンラーニングエンジンを強化しています。アドビがデジタルエクスペリエンスに注力することで、ユーザーに対してコンテクストに基づく優れた結果をお届けすることができることを意味します。
ユーザーに対する深い理解:
アドビは、数十年にわたり蓄積してきた知的財産を主力製品に組み込んでおり、すでにそうした知見は数百万人ものユーザーの皆様にご利用いただいています。アドビが培ってきた業界最高水準のAI / マシンラーニングの専門知識を、画像認識、分類、フォント認識、マーケティングアトリビューションやインテリジェント推奨など、ユーザーの関心が高い分野に応用しています。
Adobe Senseiのインテリジェントサービスはすでにクラウドソリューション内で活用されていますが、今回の発表によりAdobe Cloud Platform上で提供される共通フレームワークとインテリジェントサービスの拡大に向けて、投資を拡大していく方針です。
Adobe Cloud PlatformにおいてAdobe Senseiがどのように活用されているかをご説明します。コンテンツとデータアセットを繋ぐフレームワークであり、さらに各クラウド製品に対してインテリジェントサービスを提供します。
https://blogs.adobe.com/japan-conversations/adobe-sensei/architecture_wbg-1024x576/
Adobe Senseiのインテリジェントサービスの例は以下の通りです。
Adobe Creative Cloud
- コンテンツ インテリジェンス:ディープラーニングを使って画像の検索とタグ付けを自動的に行い、ユーザーが画像を検索した際にインテリジェントに推奨します。
- フォント認識:クリエイティブアセットから手書き文字も含めてフォントを認識し、類似フォントを推奨します。
- 顔認識を活用した加工:画像から人の顔を検出し、眉、口、目などの「目印」を使ってそれらの位置を把握し、他の画像部分に影響を及ぼすことなく表情を変化させます。
- 要素に基づくセグメント化:画像に含まれる各領域に、たとえば建物や空などそれぞれの要素に基づいてラベルを付けます。ラベル付けされた領域は簡単なコマンド(例:「change the sky」)により容易に選択、操作することができます。
Adobe MAXで発表したAdobe Creative Cloudの新機能
- Adobe Stock画像検索:jpegやpngなどの静止画ファイルをブラウザーにドラッグするだけで、「類似画像を検索」することができます。
- ゆがみツールの顔認識機能:目、鼻、口、あごなどの各パーツや表情を調整することができます。
- 自動リップシンク:自動的に会話をリアルタイムでアニメの口の動きに合わせます。
https://blogs.adobe.com/japan-conversations/adobe-sensei/5549-face-aware-liquify_intro_for_blogs/
新しく搭載されたゆがみツールの顔認識機能は、Adobe Senseiを活用しています。
Adobe Marketing Cloud
- アトリビューション:消費者がブランド企業と接する際に、マーケティング関連のさまざまなタッチポイントが判断に与える影響を把握し、異なるキャンペーンの有効性をアルゴリズムを使って判断することで、マーケティング投資を最適化します。
- パーソナライゼーション:顧客との関与を深めるため、関係のあるオファー、エクスペリエンス、およびメッセージを迅速に特定し、推奨します。
- オーディエンスをインテリジェントにセグメント化:どのセグメントが自らのビジネスにとって最も重要かを把握できるよう、マーケターとアナリストに新たな見解を提供し、重なる、あるいは隣接するセグメントもターゲットできるようにすることで、顧客獲得の効率を大きく高めることができます。
- 異常値検出:最も関連性の高いインサイトを明らかにし、異常を強調することによってデータ分析を簡素化します。
- センチメント分析:顧客が最も好んで、話し、共有しているコンテンツの発見と予測を支援します。
Adobe MAXで発表したAdobe Marketing Cloudの新機能
- インテリジェントアラート:重大な事態が起きている時に自動でメッセージを送信します。例えば、スマートフォンでの購入中断が不規則な上昇を示している時などにアラートを配信します。
- デジタル広告の自動インサイト:手動だと通常数時間かかる広告のパフォーマンス分析を自動的に行います。例えば、サーチとソーシャルのどちらに多く投資するのか、あるいは特定の日程や時間にキャンペーンを実施すべきなのか、などを分析します。
- 新しい類似モデリング機能:ブランド企業がプロモーション目的で、同じ興味や特徴を持つ見込み客をパーソナライズし、ターゲットできるようにします。例えば、頻繁に飛行機を利用する人をオーディエンスとして特定し、プロモーションを実施できます。
- ワンクリック パーソナライゼーション:人によって好みが異なるレイアウト、言い回し、画像などのコンテンツについて、最もパフォーマンスの高いものを選出します。1クリックで、ブランド企業が自動的に適切なwebサイトまたはアプリ体験を見極めることができ、各訪問者のエンゲージメントとコンバージョンを高めることができます。
Adobe Document Cloud
- 自然言語処理:デジタル文書のテキストの認識、トピックのモデリング、およびセンチメント分析を行います。
- 文脈に基づく構造分析:スキャン済みもしくは通常の文書を分析し、視覚的要素に基づいて段落、表、見出しなどを特定します。
- ドキュメントの類似性分析:類似する文書を認識し、差分を明らかにします。
- ドキュメント要約:代表的な文章をいくつか特定し、ドキュメントを要約します。
- 光学文式文字認識(OCR):紙からスキャンした文書を変換およびクリーニングし、「汚れ」などを除去するとともに、曲がった線やテキストを自動的に修正します。
- ドキュメントフローの抽出:構成された文書から読む順番を自動的に抽出し、リフローやアクセスしやすいソリューションを提供します。
この他にも、Adobe Senseiを活用した機能が今後数カ月のうちにAdobe Document Cloudに搭載される予定です。
Adobe Senseiをパートナーにも提供
アドビはAdobe Senseiのフレームワークやインテリジェントサービス群をパートナー、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)およびデベロッパー向けに提供することで、業界をリードするアドビのクラウド製品向けカスタムソリューションの構築を推進していきます。Adobe Senseiをベースにした開発に関する詳細については、今後adobe.ioに掲載していきますので、ぜひご確認ください。
今後について
Adobe SenseiがAdobe Creative Cloudのユーザーエクスペリエンスを大幅に変え、似たようなクリエイティブの作業を完了させるために他の人が使用しているツールを提示してくれたり、最もシェアされたホワイトペーパーがどれかをAdobe Document Cloudが教えてくれたり、頼まなくてもマーケティングキャンペーン向けの新規オーディエンスをターゲティングするように促してくれる未来が来るかもしれません。可能性は無限であり、アドビは新しいアイデアをユーザーの皆様が日々使用するサービスに組み込むにはどうしたらよいかを日々模索しています。
アドビはデジタルエクスペリエンスの創造と提供の可能性を押し広げてきました。Adobe Senseiの発表により、その最先端を歩み続けることを改めて表明しました。ユーザーの皆様やパートナー企業がどのようにAdobe Senseiを活用されていくかに期待しています。
Adobe Senseiの最新情報は、@AdobeSensei をフォローしてください。
原文執筆:Abhay Parasnis