ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識(2)直しに強いデータ作り[複合シェイプ、文字タッチツール編]

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ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識

第2回からは「直しに強いデータ作り」をテーマに展開していきます。

直しに強いとは?

近年、「時短」が仕事の上でのひとつのキーワードとなっており、「ハヤサ」も品質のひとつとして認知されるようになってきています。

「ハヤサ」には、2つの側面があります。

ひとつは、アイデアをカタチにするスピード。手慣れた手法で満足せず、早く終わる機能が追加されているのなら、使わなければソンです。

もうひとつが全体としての作業時間。

Illustratorに限らず、デザインデータの作成には“直し”がつきものです。上司やクライアントからの、いわゆる“ダメ出し”への対応だけでなく、デザインデータをブラッシュアップしていく上でも、直しに強い構造にしておくことで総合的な作業時間を短くすることができます。

加えて、グラフィックスタイル、シンボル、スウォッチ、ブラシ、パターン、合成フォントなどを“資産”として蓄積し、すぐに取り出せるようにしていけば、ルーチンの仕事はもちろん、ほかのプロジェクトの作業時間を短縮することにもつながります。

Illustratorでの直しに強いデータ

Illustratorでの「直しに強いデータ」は、「シンク」と「ライブ」に大別できます。

シンク

グラフィックスタイル、シンボル、グローバルカラー、段落スタイル/文字スタイルなど、設定した「元」と、適用した「先」に親子関係があり、親を変更すれば子が一括更新されるのが「シンク」です。

修正が生じる場合、同じスタイル(など)を保持するために、同様の修正を施すのではなく、親を変更するだけで済みますので、作業時間が短く済みますし、何よりミスやモレが生じません。

ライブ

アピアランス、ライブシェイプ、複合シェイプなど、仮の状態でいつでも修正可能にしておくのが「ライブ」です。マスクや文字タッチなどもライブの仲間といえます。

その他、ハヤサを実現するものとして、ライブカラー(オブジェクトを再配色)、段組設定、画像トレース、そして、キーボードショートカット、アクション、スクリプトなどの自動化があります。

相関図

シンク、ライブなどを相関図にまとめてみました。

このうち、グラフィックスタイルとアピアランスのみ、リンクさせることができます。


https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2016/12/ai-sync-live.png

さまざまな機能の使い分け

Illustratorには、同じ結果を得るのに、いくつかのアプローチがありますが、その中で「シンク&ライブ」かどうか、が使い分けの基準になります。

たとえば角丸(角R)について考えてみましょう。

Illustrator CC以降、ライブコーナー/ライブシェイプを使って角丸を設定することができます。特定の角のみを対象にすることができますので、「タブ形状」のような図形を一瞬で作成可能です。


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しかし、ライブコーナー/ライブシェイプは、あくまでもライブなだけで、ほかのオブジェクトには影響することができません。

[角を丸くする]効果を使ってアピアランスで角丸を設定し、それをグラフィックスタイルに登録すれば、グラフィックスタイルを適用したオブジェクト間でグラフィックスタイルを更新することで、角丸の大きさを一定に保つことができます。


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しかし、[角を丸くする]効果は、すべての角が対象。ライブコーナー/ライブシェイプのように特定の角のみを対象にすることはできません。

そこで、次のような方針が導き出されます。

一括更新の可能性がある限り、[角を丸くする]効果を使うのが望ましい。特定の角のみを対象に角丸を設定するときだけ、ライブコーナー/ライブシェイプを使う

今回は、ライブから2つの機能を紹介します。

ライブ(1)複合シェイプ

パスファインダーの合体/前面オブジェクトで型抜きなどの操作は、実行すれば後からの変更が面倒です。

そこで、後から修正しやすいように、パスファインダーを仮の状態でかける「複合シェイプ」を利用します。


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「複合シェイプ」するには、optionキー(Altキー)を押しながら、[パスファインダー]パネルの各ボタンをクリックします。


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複合シェイプの変更

複合シェイプは、いわば「仮の」合体。次のいずれかの方法で、それぞれのオブジェクトを移動するなどの調整が可能です。

次の2つの方法があります。

複合シェイプの拡張

複合シェイプを選択すると、[パスファインダー]パネルの[拡張]ボタンがアクティブになります。

[拡張]ボタンをクリックすると、実際のパスが変更されます。つまり、後からの修正ができなくなります。


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パスファインダーを実行する場合、できるだけ「複合シェイプ」にしておくとよいでしょう。

複合シェイプをさらに複合する

複合シェイプは、「合体」以外にも、[パスファインダー]パネルの上部の各ボタンに対応しています。

さらに、次のように、複合シェイプをさらに複合シェイプにすることもできます。

  1. 2つの円を[前面オブジェクトで型抜き]で三日月形状にする
  2. 楕円と組み合わせて、[合体]し、吹き出しにする


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ライブ(2)文字タッチ

キャッチコピーなどでは、次のように“踊らせて”表情を持たせることがあります。


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正攻法では、テキストをアウトライン化後、グループ解除し、文字ごとに位置や大きさ、角度を調整します。

しかし、アウトライン化したら最後、フォントやサイズはもちろん、テキストの修正もできなくなってしまいますので、「直しに強いデータ作り」という観点からは、アウトライン化は極力避けたいものです。

そこで利用するのは、Illustrator CC以降に追加された[文字タッチツール]です。

[文字タッチツール]の選択

まず、下記のいずれかの方法で[文字タッチツール]を選択します。

このボタン、トグル(=クリックしてON/OFFの切り替え)のように見えますが、クリックしたら最後、戻すことができない「ファンキー仕様」になっています。

[文字]パネルメニューで[文字タッチツールを表示]をクリックして、チェックをはずしておけば、パネルからボタンを非表示にすることができます。


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フォントを変更しよう思い、[文字タッチツール]ボタンを押してしまいがちなので非表示にしておくのがよいでしょう。

文字タッチツールでの編集

[文字タッチツール]に切り換える、1文字ごと選択すると、バウンディングボックスとは異なる、調整のためのウィジェットが表示されます。


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実は、このウィジェットを調整すると、[文字]パネルの[垂直比率]などの各値が連動しています。

このサンプルの場合、末尾の音引き(ー)は、水平比率を下げて短くしますが、それ以外の文字では、垂直比率と水平比率は同じ値にしておくのが基本です。


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つまり、視覚的に調整こそしているものの、すべて[文字]パネルの値を調整しているだけですので、Illustrator CSまでなら、ダウングレード保存しても、アウトライン化されません。

まとめ

今回は、直しに強いデータ作りの重要性、その上でのキーとなる「シンク」と「ライブ」などの概要。そして、ライブシェイプ(ライブコーナー)、複合シェイプ、文字タッチツールについてご紹介しました。

ご存じのことも多いと思いますが、改めて整理しながら、ワークフローへの落とし込みに役立てていただければ幸いです。

次回は、「シンボル」をテーマにお送りします。