エクスペリエンスデザインの基礎知識:2017年のデザイントレンドを予測する
エクスペリエンスデザインの基礎知識
デザイン業界における変化は光の速さで起きています。そして、流れに乗って活躍するにはそのスピードについていくことが重要です。たとえデザイナーとしてトレンドを追うつもりの無い人ても、業界の変化に通じているのは悪いことではないでしょう。
2017年の始まりに、今年最も重要になるであろう10のデザイントレンドをまとめてみました。
1. ミニマリストデザインの進化
2017年も引き続きミニマルなレイアウトが使われて、「コンプレックス・リダクション」は大きな流行になるでしょう。ミニマリストデザインは、UIよりも、ユーザーコンテンツの表示により注力することで実現される、わかりやすい視覚的なコミュニケーションを通じてユーザーの問題に対応することを目指しています。
Skyアプリはユーザーの気を散らすものを取り払いコンテンツに集中させる
優れたユーザビリティと組み合わさったミニマリストUIを実際に使うと本当に感心します。簡単に操作できるシンプルなアプリは、とても強力なコミュニケーションの形と成り得ます。
クリーンな線、贅沢な余白、そして最低限のグラフィック要素は、もっとも混乱しがちな題材にも簡潔さをもたらす。 著作権:Jakub Antalík
2. よりたくさんのマイクロインタラクション
2016年はマイクロインタラクションが多くの場所で話題になりました。この傾向は2017年も続くでしょう。マイクロインタラクションは、部分的なアニメーションという形をとることが一般的で、UXデザインで重要な役割を果たす要素です。特に、モバイルデバイス上では、アプリを使うたびに数多くのマイクロインタラクションに出会います。
ユーザーに操作の結果を知らせるマイクロインタラクション。 著作権:Colin Garven
マイクロインタラクションは、状況や変化を知らせたり、特定の箇所に注意を惹きつけたり、操作完了のフィードバックを伝えるなどして、印象的な体験を作るのに役立ちます。
マイクロインタラクションはユーザー操作の視覚的なフィードバックとしてとても便利な手段となる。 著作権:Hernán Sartorio
3. ビデオが主役になる
視覚は人間の感覚の中で最も強いと言われます。長い間、画像はインターフェースデザインの主役でした。そして、ゆっくりとその地位をその後継者、すなわちビデオ、に譲りつつあります。絵は千の言葉に勝ると言われますが、ビデオはその10倍は有効です。それは、画像が静的なのに対し、ビデオは動的だからです。
ビデオはユーザーの目を惹きつけ、視覚的にストーリーを語ります。ホームページの背景として使えば、ページが表示された瞬間からユーザーを引き込むでしょう。
ビデオはユーザー体験をよりダイナミックにする。2017年は、ユーザーの心を掴み物語を語る手段として、表現が豊かでインタラクティブなフルスクリーンビデオが多く使われそう。 著作権:lifeofpimovie
4. 豊かな色彩と大胆なタイポグラフィ
豊富なトーンの色がすでにユーザーインターフェースを彩っていますが、2017年には鮮やかな色合いがインターフェースを更に輝かせることでしょう。ユーザーは、たくさんの鮮やかなカラーパレットや、大胆なグラデーションのUIに出会いそうです。
鮮やかで深い色の対比が視覚的な刺激をもたらす。 著作権:Fjord Trend
色と同様に、タイポグラフィも感情を刺激したり、デザインのパーソナリティを構築するのによく使われているツールです。タイポグラフィは読ませるためだけのものではありません。主張するためのものでもあります。タイポグラフィの使い方次第で、ユーザーを惹きつけ目に留まりやすい部品をつくれます。
タイポグラフィには、ブランドのアイデンティティを表し、テキストの内容を強調する機会がある。 著作権:Hawk & Hen
5. 注文仕立てのイラストレーション
より個性を出すために、フォト画像の代替としてイラストが急速に人気を集めつつあります。イラストは、伝えたい言葉のトーンや、ブランドの個性を真に捉えた視覚的な言語を作り出せます。さらに、コンセプトをわかりやすい視覚的な表現に落とすことで、メッセージを明確にもします。
オリジナルのイラストが独自性と個性を伝える。 画像著作権:Medium
イラストを使ったアニメーションは、デザイナーのクリエイティブな表現により大きな自由を与えてくれます。
アニメーションはイラストをより楽しくする。 著作権:Intercom
6. 長いスクロールとパララックスを多用するウェブサイト
長くどこまでもスクロールできるウェブサイトはごく普通になりました。スクロールは、ページフォーマットにより問題を起こすことが無い点は重要な指摘です。ナビゲーションの再発明とも言えます。モバイルデバイスの特性に沿っていて(画面が小さくより多くのスクロールが必要になる、タッチ操作で行いやすい)、ユーザーにより訴求する可能性を持っています(大量のコンテンツを一つの操作で体験を中断されることなく素早くスキャンできる)。
長くスクロールさせることでウェブサイトはユーザーをコンテンツの旅に連れて行く。 著作権:Pinterest
また、より多くのサイトがパララックス効果付きのスクロールに使うのを目にすることになるでしょう。パララックスは、前面と背面のコンテンツを異なる速度でスクロールするテクニックで、奥行きがあるような錯覚を作り出します。上手に使えば、画面上の要素を浮き上がらせる動的な3D効果を作り出せます。これは、デザイナーがグラフィック要素によるストーリーを効果的に伝えるのに役立つでしょう。そして、ご存知のように_ストーリーテリング_は人間の本質の一部です。
パララックスで背景画像を前面のコンテンツよりもゆっくりと動かすことで深さの幻想を作り出す。 著作権:squarespace
7. カードは引き続き主流
カード型のUIは、あるトピックに関する主要な関連情報を一つの入れ物に整理するというアイデアに基づくものです。
カードは、大量のコンテンツを理解しやすい大きさにまとめ上げることができる。 著作権:Hanna Jung
カードは、小さな画面から大きな画面まで使える様々なUIをつくることができます。ユーザーにとって、カードは直感的で説明がなくても理解しやすいものです。
カードを用いたレイアウトは、画面幅に応じたレイアウトの調整が容易
8. 会話型インターフェースの増加
「チャットボット」は最近業界で流行りの言葉のひとつです。チャットボットがコンシューマ向けのアプリに組み込まれるようになって既にかなりの時間が経ちました。ユーザーの一般的なタスクの負荷を軽減する、例えばピザを注文する際の助けになります。
ピザハットのチャットボットはFacebookメッセンジャー経由の会話で注文できる
2017年は、チャットボットの技術や会話型インターフェースの採用の増加を目にすることになりそうです。Google Homeのような統合的な会話型のソリューションや製品の開発には、とてつもない機会と興味が存在しています。また、Siriの統合はチャットボットの自然な次のステップになるでしょう。
Google Homeのような製品には未来のインタラクションはボタンを必要としないだろうと信じさせる力がある。 画像著作権:theverge
9. 拡張現実/仮想現実
会話型インターフェースだけが2017年の話題の技術ではありません。デザイナーは、拡張現実や仮想現実にも魅了されることでしょう。ブランドに従来のレベルを超えて没入させることができるからです。同時に、 仮想世界のためのUIデザインは全く新しい挑戦でもあります。Jonathan Ravazが記事に書いていたように、「VRのためのデザインは、2Dの知見を3Dに転用するのではなく、新パラダイムの発見であるべき」です。拡張現実や仮想現実のプラットフォームの出現は、インタラクションやビジュアルデザインに大きな影響を与えるでしょう。焦点になりそうなのはジェスチャーです。現実世界でも同じような意味を持つ自然な動作であれば、仮想世界でのジェスチャーとして転用しやすいでしょう。
Microsoft HoloLensは、仮想現実と拡張現実を取り入れて新しい現実を作り上げる。 著作権:3dprintingindustry
2017年は「仮想現実の年」にはならないでしょう。しかし、何を仮想現実としでデザインすべきか、あるいはすべきでないかがはっきりとする年になるでしょう。
10. プロトタイプの流行
これからの1年、UXとUIデザインの境界はより曖昧になり、統合されたデザインプロセスへの移行が進みます。アイデアを形にすることがこれまでになく簡単になり、プロトタイプはすべてのデザインフローに浸透していくでしょう。新しいプロトタイプツールはデザイナーのワークフローを改善し、ユーザーについて考える時間がより多く費やされるようになります。
デザイナーは、レイアウトだけでなく、インタラクションに集中するでしょう。新しいツールを使えば、画面を並べただけのプロトタイプに止まらず、実際の環境で動作してステークホルダーにビジョンを示すプロトタイプそ制作できるのです。
Adobe Experience Designを使って、デザイナーはレイアウトだけでなく、インタラクションにも集中して取り組める
結論
どんなトレンドもその性質上、流行に終わるものがあれば、根付いて基本と成るものもあります。しかしひとつ確かなことがあります。2017年はテクノロジーとインターフェースデザインを中心に興味深い年となるでしょう。
※ この記事はThe Future is Now: 10 Design Predictions for 2017(著者:Nick Babich)の抄訳です