創業290年の英メガバンクRBSが取り組む、顧客中心型のデジタルトランスフォーメーションとは【前編】 #AcrobatDC

昨年の10月4日から10月5日の2日間、アドビ システムズ 株式会社が“顧客体験中心の時代のビジネスのあり方”をテーマに、年次イベント「THE DIGITAL MARKETING SYMPOSIUM 2016」を開催した。同イベント内にて、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(以下、RBS)のデジタルアナリティクス統括責任者であるジャイルズ・リチャードソン氏は、「なぜ290年の歴史を持つ銀行が、顧客接点のデジタル化に踏み切ったのか」を題目に講演した。

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1727年に創業したRBSは、英エディンバラに本社を置き、700以上の支店を世界中に展開するメガバンク。同社は過去数年間に渡り、デジタルトランスフォーメーションに取り組み成果をあげている。本セッションでは同社が新たに開発した、お客様によるローン申請や口座開設に関わる手続きのためのオムニチャネル・ドキュメント・ソリューション「Digi Doc」の概要と開発背景について、製品デモを交えて紹介した。

Digi Docの紹介動画:https://goo.gl/CwYwdb

電子サインの導入で申請期間を5分の1に短縮、顧客満足度が向上

Digi Docのバックシステムには、電子サインを含むデジタルドキュメント処理のクラウドソリューション「Adobe Document Cloud」が連携している。例えば、未成年者が口座開設の申請を行う際、保護者の承認サインが必要になるが、その認証プロセスのデジタル化にAdobe Signの電子サインの機能が活用されている。また、申請時に自身のパスポート等の身分証明写真をオンライン上でアップロードする際に、自動的に画像の文字認識を実行し、50以上の項目にわたって本人の身元審査を行う仕組みとなっている。

同社がDigi Docを導入した結果、11日間かかっていたお客様による申請期間が2日間に短縮され、お客様による申請率も60%増加した。また銀行側でも、ローン審査率が25%増加したほか、本ソリューションを通じて申し込みを行った92%のお客様が「満足である」とアンケート上で回答するなど、あらゆる側面で成果をあげている。

今回の導入について、リチャードソン氏は「従来、海外からのお客様が銀行で口座開設申請を行う場合、自身が保有するパスポートを支店に直接持参し、ある程度の時間をかけて手続きを行なう必要があった。Digi Docの導入により、身元審査や保護者の承認サインにおけるプロセスのデジタル化を通じて、お客様の利便性の向上や手続き時間の削減につなげることができた」と話している。

本ソリューションは、4名で構成されるチームでアジャイル開発され、わずか16週間で立ち上げられた。その成功の背景には、バックヤード側の処理にAdobe Document Cloudとの連携を活用しており、業務に関わる文書のデジタル化を進めていたことから、少人数チームでアジャイル開発に取り組めたという。

Digi Docを紹介後、同セッションでは、アドビによるディスカッションがQA形式で実施された。前半のディスカッションでは、RBSがデジタル化に踏み切った背景やアドビ製品を採用した理由について、リチャードソン氏が語っている。

顧客はあらゆる企業を対象に最良のデジタル体験を求めている

アドビ:「なぜRBS社は顧客接点のデジタル化に踏み切ることができたのでしょうか」

リチャードソン氏:「お客様に対して一番良いサービスを提供できると思ったからです。銀行での申請手続きを、デジタル上で簡単かつ迅速に完結させることで、お客様サービスの利便性を向上できると考えました。通常の申請では、お客様が近くの銀行支店に書類を持ってきて、そこでサインを頂いくというプロセスが発生します。ですが、当社にとってそのプロセスが必要であっても、お客様にとっては必要ありません。年々、デジタルサービスに対するお客様の期待値は高まっており、最良のデジタル体験を求めるお客様が増えています。お客様は当社と他の金融機関を比べるだけではなく、あらゆる業種の企業を対象にしています。UberやAppleなどの企業がデジタルサービスを提供できるのに、銀行が提供できないのはなぜか、という考えが一般化しつつあるように思います」

アドビ:「デジタル化の最初のターゲットになったお客様は誰だったのでしょうか。また、それはなぜですか」

リチャードソン氏:「学生を助けたいという気持ちが、今回のソリューション開発における大きなきっかけとなっています。当時の学生のお客様による口座申請のデータを見ると、50%のお客様の申請手続きがスムーズに進められているのに対し、残りの50%の申請手続きはペンディング(保留)になっていました。その原因として、留学生が他国で口座開設の申請をする場合、銀行側での身元審査等に時間がかかり、申請処理が滞っていました。Digi Docの導入により、お客様はスマホやタブレット端末を通じて口座申請が可能になり、業務プロセスのデジタル化を進めたことで、学生のお客様から便利になったと好評を得ることができました」


https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/rbs-case-study-part1/rbs02/

より良い顧客体験の実現に向けた最良な選択とは

アドビ:「Adobe Signを採用するに至った経緯を教えてください」

リチャードソン氏:「当社ではアドビ製品を以前から利用しているのですが、既に社内から良い評価を得ていました。また、アドビ製品は他製品ともスムーズに連携できることや、当社、さらにお客様側からも、簡単に操作できるという高い評価を得ており、電子サインソリューションにAdobe Signを採用することは、ごく自然な選択だったと思います」

アドビ:「より良い顧客体験を提供するにあたり、アドビのトータルソリューションを利用することが、RBS社にとって最良な選択だったということなのでしょうか」

リチャードソン氏:「その通りです」

アドビ:「例えば企業が電子サインソリューションの導入を検討する際、日本でもグローバルでも様々な選択肢があると思います。Adobe Signは、PDFにサインをするための穴をあけて、メール上のトランザクションをクラウドに保存するというシンプルな仕組みを提供していますが、アドビはテクノロジーの優位性よりも、顧客体験の向上を大事にしています。一つ一つのソリューションで課題を解決するのではなく、アドビ全体として、顧客企業またはその先のお客様へ、より良い顧客体験を提供できるかを重要視しています。この考え方とRBS社の考え方が合致したことで、今回のデジタルトランスフォーメーションの取り組みに至ったのでしょうか」

リチャードソン氏:「その通りです。それに加えて、導入する電子サインソリューションが、数百万人という規模で対応できるかという点と、それを最小限の期間で導入できるかという点もポイントでした。例えば企業では、新しいソリューションの導入に数年を費やすことがありますが、当社ではスピード感とスケーラビリティ(拡張性)を大事にしています。また、当社は銀行であるため、他の企業と取引する際のデータのやり取りに関するセキュリティ面も非常に重要視しています。クラウド上に保管されるPII(Personally identifiable information:プライバシー性が高い個人情報)の管理において、条件をクリアできる企業は少ないのですが、この点もAdobe Signを採用した理由の一つです」

後半のディスカッションでは、企業が新しいテクノロジーを導入する際の課題や、RBSの新しいモバイルアプリケーションの取り組みについて、リチャードソン氏が語っている。後編はこちら:https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/rbs-case-study-part2