ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識(4)すべてのカラーリングは、ライブカラーにおまかせ

連載

ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識

今回、取り上げるのは「ライブカラー」です。

「カラーバリエーションを作るときに便利」な機能としてIllustrator CS3から実装されていますが、カラーシミュレーションだけでなく、使いどころが多い奥深い機能です。

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一度知ったら手放せないライブカラーの魅力をとことんご紹介します。

ライブカラーって何?

ライブカラーは通称です。

正式名称は[オブジェクトを再配色]。[編集]メニューの[カラーを編集]のサブメニューにあります。


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デフォルトではキーボードショートカットが用意されていませんので、設定しておくとよいでしょう。私は「command + F3キー」を設定しています。

ちなみに、最近のIllustratorの[キーボードショートカット]ダイアログボックスには検索ボックスがあります。「メニューコマンド」に切り替えて(❶)「再配色」と入力して(❷)表示させるとスピーディです。

お好みのキーボードショートカットを設定します(❸)。

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今回のコラムでは、[オブジェクトの再配色]を実行することを、「ライブカラーを開く」、「ライブカラーを呼び出す」のように記します。

カラーシミュレーション

それでは、ライブカラーを使ったカラーリングの変更の流れをご紹介します。


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  1. アートワークを選択し、コントロールパネルのアイコンをクリックする


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  3. [オブジェクトを再配色]ダイアログボックスが開き、選択しているアートワーク内で使われているカラーがリストアップされる。右側中央の[◀]アイコンをクリックして、右サイドを非表示にしておくとよいでしょう


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  5. 「指定」タブが選択されているので、「編集」をクリックする


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  7. 中央部分が切り替わり、アートワーク内で使われているカラーが「色相環」の中にマッピングされる。

  8. [ハーモニーカラーをリンク]ボタンをクリックする


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  10. 「色相環」の中の◉をドラッグすると、連動してほかの◉も移動する


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  12. 個別に変更したい場合には、[ハーモニーカラーをリンク]をオフにして個別に編集する


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カラーシミュレーションを行う際の注意点

ライブカラーを実行する前に、オリジナルを複製してから作業を開始しましょう。

グラデーションにも対応

キーカラーが目立っているデザインの場合に、グラデーションが含まれていても、ライブカラーを使ってカラー変更を行うことができます。


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グラデーションは、グラデーションストップと呼ばれる「開始色」、「終了色」、または、中間の分岐点のカラーで構成されています。ライブカラーはこれらのカラーを制御します。


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Illustratorのカラーリング、どれで行う?

次に、冒頭で書いた「ライブカラーはカラーシミュレーションだけではない」について掘り下げていきましょう。

Illustratorには、カラー関係だけに絞っても4つのパネルが存在しています。


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Illustrator CC(17.1)以降、[スウォッチ]パネル内に[塗りボックス]、[線ボックス]が追加されているので、塗り/線の切り替えを[スウォッチ]パネルで完結することができます。

しかし、現在のIllustratorには40近くのパネルがあり、[スウォッチ]パネルや[カラー]パネルなど、なるべくパネルを開かずに作業できると、アートボードをより広く使うことができます。

パネルからコントロールパネルへ

コントロールパネル内で、[スウォッチ]パネルや[カラー]パネルを代替する方法です。

  1. 長方形などを作成し、オブジェクトを選択すると、コントロールパネルに[塗りボックス]、[線ボックス]が表示されるhttps://blog.adobe.com/media_58b59c0a8bbb9efc21318fb8d51952a4787f4c1c.gif
  2. このボックスをクリックすると、[スウォッチ]パネルが開くhttps://blog.adobe.com/media_6e1db71196d93de961aee27447a3135cec4a408d.gif
  3. shiftキーを押しながらクリックすると、[カラー]パネルが開くhttps://blog.adobe.com/media_bf0b39c6f4581c3531402f8ce3761d647a4738d6.gif
  4. カラーを設定後、パネルを閉じるには、コントロールパネルの[塗りボックス](または[線ボックス])をクリックする

このように、コントロールパネルから、[スウォッチ]パネル、[カラー]パネルにアクセスできますので、それらのパネルを開いておく必要はありません。

コントロールパネルだけでは完結しない…

「じゃ、これからはコントロールパネルのみで行こう!」と思いたいところですが、そう簡単ではありません。

まず、[ダイレクト選択ツール]を選択しているときには、コントロールパネルには[塗りボックス]、[線ボックス]が表示されません。


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また、異なる設定の複数のオブジェクトを選択しているときには、同時に変更することはできません(「?」と表示される)。


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そこでライブカラーです。

ライブカラーを呼び出せば、選択しているオブジェクトで使われているカラーがすべてリストアップされます。

ダイアログボックス下部の領域でカラー設定を行ったり、[編集]に切り換えて色相環でカラーを変更します。


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リストアップされるカラーがどこで使われているのかがわかりにくい場合には、次の手順で探すことができます。

  1. 右下の虫眼鏡がついたアイコンをクリック
  2. [現在のカラー]にリストアップされているカラーをクリック


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クリックしてカラーに対応するオブジェクト以外が薄く表示されます。

さらに、具体的な使いどころについてご紹介します。

塗りと線に同じカラーが使われている場合

ライブカラーを使えば、塗りと線に同じカラーが設定されている複数のオブジェクトのカラーの変更をスピーディに行うことができます。

  1. 塗りだけにカラーが設定されているオブジェクトを選択すれば、コントロールパネルの[塗りボックス]のカラーに反映する


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  3. 線だけにカラーが設定されているオブジェクトを選択すれば、コントロールパネルの[線ボックス]のカラーに反映する


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  5. ところが、塗り/線が混じっている場合には、[?]と表示される


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  7. しかし、ライブカラーでは1色とみなすので、同時にカラー変更を行うことができる


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アピアランス内のカラーの統一

アピアランス内でのカラーの統一にも有効です。


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まず、(自分自身の)アピアランス内では[スポイトツール]は使えません。


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  1. ライブカラーを開く


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  3. この例では、1色目の薄めのブルーを、2色目にドラッグするhttps://blog.adobe.com/media_fc9fee82611aad1704f12a9ec4a899b08f1b7a90.gif

  4. [▼]アイコンをクリックして表示されるメニューから[変更しない]を選択すると、まったく同じカラーになる(デフォルトの「色調をスケール」のままだと、まったく同じカラーにはならない)


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グループ内など

グループ内、グループアピアランス内などのカラー変更にも有効です。


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「このカラーにしたい!」

画面上のカラーを拾うときによく使う[スポイトツール]ですが、ライブカラー内ではトリッキーです。

[オブジェクトを再配色]ダイアログボックス内に[スポイトツール]があるのですが、これは「嘘スポイトツール」。こちらは、[オブジェクトを再配色]ダイアログボックスを開いた直後に戻す、いわば、「リセット」ボタンです。


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「このカラーにしたい!」を実現するには、そのカラーを含むオブジェクトを同時に選択してライブカラーを開きます。

この場合は、オレンジのバーを青いバーにドラッグすることで、どちらもブルーになります。


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なお、その際、[▼]アイコンをクリックして表示されるメニューから[変更しない]を選択するのがポイントです(デフォルトの「色調をスケール」のままだと、まったく同じカラーにはならず、色が薄まってしまうことがある)。

嘘スポイトツール

ご参考までに、Illustrator CS5までは「嘘スポイトツール」のアイコンは異なる形状でした。

また、マウスオーバーすると、色相環としてカラーリングされていました。こっちの方がよかったですよね!


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スウォッチは使えないの?

ライブカラーで「スウォッチを使えれば!」と思いますよね。ライブカラーでスウォッチを使うのは、ちょっと面倒です。

  1. 左下のカラーパネル部分のカラーアイコン(❶)をクリック
  2. [カラーピッカー]ダイアログボックスが表示されるので、[スウォッチ]ボタン(❷)をクリック


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この操作でスウォッチの一覧が表示されます。サムネール表示にすることはできません。

なお、ダイアログボックス下部の検索ボックス(❸)を使って、絞り込むことができます。

グローバルカラーとの併用に注意

グローバルカラーを使用しているオブジェクトに対して、ライブカラーを実行するのは要注意です。

グローバルスウォッチのカラーは変更されず、グローバルカラーとのリンクが切れてしまいます!


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ライブカラーとグローバルカラーを併用する

ライブカラーとグローバルカラーは「まぜるな!危険」と覚えておくのが無難ですが、次の方法で回避することができます。

  1. 変更したいカラーを用意し、そのオブジェクトを選択したまま、[カラー]パネルの[新規カラーグループ]アイコンをクリックhttps://blog.adobe.com/media_6b3b95871cc5f10b29d1305923c8ec9a8703697e.gif
  2. [新規カラーグループ]ダイアログボックスが開くので、[プロセスをグローバルに変換]オプションをオンにしたまま、[OK]をクリック
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  3. カラーグループとして登録される
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  4. ライブカラーを開き、閉じていた右サイドを開いて「カラーグループ1」を選択する

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もちろん、元々のグローバルとのリンクは切れてしまいますが、こちらの方法なら、新しく追加したグローバルスウォッチとリンクされます。

なお、[スウォッチ]パネルのカラーグループのフォルダーアイコンをダブルクリックすれば、ライブカラーが呼び出されます。

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パターン

ライブカラーのもうひとつの使いどころがパターンへの適用です。

パターン作成(編集)機能は、Illustrator CS6にて劇的に改善されていますが、今回は、デフォルトで用意されている水玉やラインのパターンを活用してみます。

[スウォッチ]パネル下部の[スウォッチライブラリメニュー]から[パターン]→[ベーシック]とたどると、「ベーシック_点」、「ベーシック_ライン」というライブラリを選択できます。


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次のように濃度の異なるパターンが用意されています(それぞれ、新しいパネルとして開く)。


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パターンにカラーリングしてみましょう。


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  1. ライブカラーを開くと、黒に対応するカラーが空白になっている(❶)。❷([配色オプション]ボタン)をクリックする


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  3. [配色オプション]ダイアログボックスが開いたら、[保持]の[ブラック]をオフにする(ここでは[ホワイト]もオフ)https://blog.adobe.com/media_9bee0a32aa5b309fb486dbcea6d450dcfe9d9969.gif

  4. 黒が変更可能になるので、カラーを調節するhttps://blog.adobe.com/media_1bdc2088e71a842bde9755566395e8123465d68c.gif

なお、パターンスウォッチは上書きされず、新しいパターンスウォッチが作成され、そのスウォッチにリンクされます。


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パターンの密度を変更する

ライブカラーから話はそれますが、パターンの濃度は、拡大・縮小のオプションで可能です。

[拡大・縮小]ダイアログボックスで[オブジェクトの変形]オプションをオフにすると、[パターンの変形]オプションのみがオンになります。

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アピアランスの場合には[変形効果]内で同様の設定を行います。


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回転(角度)についても同様です。

パターンを白抜きにする

さらに、ライブカラーから話はそれますが、パターンを白抜きにしたい場合は、描画モードを使うとスピーディです。


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[描画モード]を「スクリーン」に設定すると「白」になります。ここでは、なじませるために、さらに不透明度を下げています。


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なお、この手法が使えるのは、CMYKモードのときだけです。

パターンについては、鈴木メモさんのパターンスウォッチの色を変える方法を参照してみてください。

ExcelなどのOffice文書からのパーツの流用

最後に、ExcelなどのOffice文書からパーツを流用するケースへの応用についてです。

Excelの表やグラフなどは、Excel内でコピーし、Illustratorでペーストすれば、クリッピングマスクが複雑にかかるなどの問題はあるものの、Illustratorのオブジェクトとして扱えます。

テキストもそのまま使えますので、Illustrator内でカーニングなどの調整が可能です。

ところが、ExcelなどのOffice文書では、CYMKを扱えないため、黒い文字などが「K100」ではなく、「C100+M100+Y100+K100」に近い状態のブラックになっています。

そこで、ライブカラーを使って調整してみましょう。[配色オプション]で[ブラック]の[保持]をオフにして、カラーを「K100」(C0+M0+Y0+K100)に設定します(M1を加えるなどの調整を同時に設定することも可能です)。

まとめ

今回はライブカラーについてご紹介してきました。

などなど、Illustratorでのカラーリングは、すべてライブカラーでよいのでは?と思うほど。キーボードショートカットを設定して使うのがオススメです。

ライブカラーからはライブではない

Illustratorでの「直しに強いデータ」は、「シンク」と「ライブ」に大別できる、と第二回でご紹介しました。

ドキュメントを閉じなければ取り消しで戻ることはできますが、ドキュメントを閉じてしまえば、元に戻すことはできません。そういう意味では、ライブカラーからは「ライブ」ではありません。そのため、[オブジェクトの再配色]というコマンド名を変更しないのは、そのような理由からかもしれません。

改めて「まぜるな!危険」

ライブカラー搭載から10年。
グローバルスウォッチにライブカラーを適用すると、グローバルカラーが上書きされずに、リンクがはずれてしまうファンキー仕様のみ、変更されることを願っています。