Adobe Target: エクスペリエンスビジネスの最適化
来週のAdobe Summit 2017でも披露するAdobe Targetの新しい機能Experience Optimization Frameworkのプレビューをご紹介します。またこの機会に、エクスペリエンスビジネス(顧客体験中心のビジネス)をシンプルに実現する重要なポイントとなるガバナンス機能も説明しましょう。なぜ今か?顧客の期待値の増加、新しいアーキテクチャ上で実装される技術の基盤刷新、厳しくなるIT要件、人工知能(AI)利用の拡大。これらは、皆さんもおなじみでしょう。
最先端のmodern webの世界にようこそ。今やカスタマーエクスペリエンスは全てを支配しており、あらゆるビジネスはこれに対応しなければなりません。これまで以上に、デジタル戦略が重要となるあらゆるビジネスで、精度の高いデータドリブンな手法を通して、従来のマーケティングの枠組みを超えたCX戦略のあらゆる面で、エクスペリエンスの最適化を取り入れる必要があります。
エクスペリエンスの最適化は、CX戦略とパーソナライゼーションを組み合わせることで実現します。つまり、サイトやモバイルアプリ全般、さらにはブランド企業のデジタルと顧客の接点全てにおいて、優れたカスタマーエクスペリエンスを簡単かつ確実に提供しながら、パーソナライズされた体験を与えることです。そのためには、顧客のニーズに応え、更にはそれを上回り、それぞれに合った価値を与えることが必要です。そうすれば、求められる成果(コンバージョンレートやNPSの向上、記録的売上など)の達成につながるでしょう。それは、サイトを美しく見せるだけの基本的なA/Bテストツールや手の凝ったターゲットルールだけでは実現できません。
アドビがエクスペリエンスビジネス担当者をサポートする方法:
アドビは何年も前から、最適化とパーソナライゼーションを推進してきました。マーケターは、デジタルと顧客のタッチポイントから直接利益を創出したいと思っています。また、自らのアイデアを、わざわざITや開発チームに依頼することなく実装したいと思っています。組織内で多くの関係者に最適化できる手段があるのならば、企業はその取り組みを拡大し、成功できることということも分かっていました。
Adobe Targetの開発が進む中で、良好なガバナンスがあれば、ユーザーは重要なプロジェクトに注力できること、プロジェクトに適切な権限を与えられることが分かりました。また、UIとそのワークフローに必要な指針を組み込むことによって、最適化のベストプラクティスを遵守させることができたのです。
新しいデジタルの接点が急速に増加したことで、モバイルアプリ、キオスク端末、セットトップブックスなどといった最適化の機会が拡大しました。さらに今も拡大を続けており、例えば、電話中に最適化されたスクリプトをコールセンター担当者に提供する、AlexaのようなAIから顧客に価値のある音声サポートを行う、店員が店頭でパーソナライズされた接客を行えるようタブレットに顧客インサイトを配信する、などが上げられます。アドビは、このような機会拡大を予想してExperience Optimization Frameworkを開発しました。このフレームワークは、Adobe Targetのリーチを拡大し、web、アプリ、Connected Experienceといった主要の3領域で最適化することができます。また、共通のUI、ワークフローセット、アーキテクチャ、ガバナンスを利用することも可能です。
webと同様に、アドビも進化とイノベーションを止めることはありません。ここで、フレームワークの3つの領域全てに対応する新しいガバナンス機能の重要な特徴をいくつかご紹介します。また、今回発表となる「Enterprise Optimization Framework for web」もご紹介します。最後に、Connected Experience用フレームワークの使用方法についても説明します。これは、Adobe Targetの全コントロールが必要なとき、もしくは単に使用したいときどちらにも最適です。
ガバナンスに合わせたビジネスではなく、ビジネスに合ったガバナンスを
アドビは、技術がビジネスを制限してはならないと考えています。そうなると、スムーズに作業できず、仕事が増えます。逆に、管理を与え、ユーザーの役割と権限を柔軟に決めることができるようになれば、ガバナンスがビジネスに合うようになり、その逆にはなりません。
Adobe Targetの管理者は、ビジネスや最適化プロジェクトの構成に合わせて「プロパティ」を作成し、プロパティにアクセスできるユーザーと適切な権限を割り当てることができるようになりました。例えば、多数のブランドとそれぞれに異なるペルソナを抱えるグローバルの自動車メーカーを思い浮かべてください。このような企業では、それぞれのビジネス部門のすべてのユーザーに対し、全社横断的にエクスペリエンスがパーソナライズされている必要はありません。その代わり、ビジネス部門毎にプロパティを割り当て、共通化された一つのUIから関連付けられたサイト、アプリ、車内エクスペリエンスをユーザーにパーソナライズすることができます。
Adobe Target Premiumの新しいガバナンス機能を使って、ユーザーの作業に応じて複数のプロパティを割り当て、各プロパティ内で特定の役割と権限を割り当てることができます。
モダンなサイト用の新しいExperience Optimization Framework
アドビは、長年、好評いただいているPCサイトとモバイルサイト向けの実装フレームワークを提供し、入念に更新してきました。約1年前、現在のモダンなサイトに完全に対応するためには、仕切り直しが必要であると判断しました。アドビは、たった1行のコードによるフレームワークであっても守る必要があると考え、並行で代替の開発を開始しました。今後、提供するExperience Optimization Framework for web, AT.jsは、現代の最新技術である実装フレームワークで、今後のトレンドに対して将来性が保証されています。これは机上のフレームワークではありません。既にAdobe Targetの顧客が多数、使い始めています。
以下、このフレームワークが多数の「いいね」を集めている理由をご紹介します。
- シングルページアプリケーション(SPA)webサイトにより提供される非同期コンテンツ配信の強みを、AngularやReactなど人気のSPAフレームワークに拡張機能を提供することで活用できます。これにより、レスポンスの良い配信ができるため、顧客体験が向上します。また少ないリソースで最高のパフォーマンスを出す必要があるIT部門も大喜びです。
- アドビの拡張機能は、開発者も関わることができるので、今勢いのある熱心なSPAデベロッパーコミュニティからサポートを受けることができます。アドビは、このフレームワークをSPA用に新たに開発しました。デベロッパーなら、このサポートが何を意味しているか分かるはずです。
- Adobe Targetからのエクスペリエンスとサイトで提供されるエクスペリエンスの間の通信にバリデーションレイヤーを提供します。基本的には、データをチェックしたり、セキュリティコードを追加したりするための、まるで宇宙ステーションのエアロックのようなものです。ITにとっては嬉しい機能でしょう。最適化によりサイト修正の管理をさらに行えるようになり、セキュリティレイヤーが追加されます。
- document.write()により発生する表示遅延が減少するため、Googleが発表した低速の2Gモバイルトラフィックで document.write()をブロックするという問題が解決します。アドビは、Googleが今後もモバイルトラフィックスピードにブロックを行い、また、他のブラウザーでも同様の対処を講じる可能性があると考えています。
では、このようなことはエクスペリエンスビジネスにとってどういう意味があるのでしょうか?
マリオットのデジタルエクスペリエンス担当ディレクター リー カールソン氏(Lee Carson)は次のように述べています。「マリオットホテルでは、webテクノロジー戦略の全体見直しの一環としてAT.jsを採用しました。このモダンなアーキテクチャは、現在のwebブラウザーで極めて高速に動作させます。ページ表示のスピードだけでも数億円の売上につながると確信するだけの大きな理由があります。 Adobe APIとAT.jsは、ネイティブなデジタルチャネルだけではなくコールセンターやフロントデスクでも、オムニチャネルのエクスペリエンスとパーソナライゼーションを展開するために不可欠です。」
Connected Experiences用のExperience Optimization Framework
Adobe Target APIは、Experience Optimization Framework をIoTデバイスに拡張できるよう設計されていると思われているかもしれませんが、まさにその通りです。Adobe Targetは、ATM、店内キオスク端末、セットトップボックス、テレビゲーム機、スマートディスプレイ、さらにはコールセンターなど、どこでも利用可能です。しかし、このAPIには他にも重要な使い方があります。Adobe Targetをもっと管理する必要がある、または管理したい場合、技術的腕前があれば、webサーバー上に直接Adobe Targetを実装することができます。別の言い方をすれば、Adobe Targetをサイトのサーバー側に設置できます。
アドビでは、SaaSのサーバー側の実装に関心のある方々のトレンドを観察しています。そのような方ならば、高い技術力をお持ちのはずです。その高い技術力があれば、Visual Experience Composerを使いながら、自ら魅力的なエクスペリエンスを実現したいと思うはずです。会社の方針や業界の規制のために、管理が必要な人もいれば、追加のデータ収集や複雑なテストのために、Adobe TargetをサイトのDNAに直接組み込みたい人もいます。中には、JavaScriptベースの実装にあたり、プライバシーや性能に懸念を持つ人もいるでしょう。
サーバー側の実装を求める理由に関わらず、クライアント側の実装で得られるものと同様の性能、ガバナンス、企業スケールが期待されます。Adobe Targetのサーバー側の設置では、Experience Optimization Frameworkを用いることにより、それらを提供することが可能です。
現状に満足してはいけません
アドビは、お客様がエクスペリエンスビジネスで成功しただけで終わりだとは思っていません。カスタマーエクスペリエンス、サイト、技術変革においてトップでいられるよう、Adobe Targetは常に進化する必要があります。アドビは、最新の開発とAdobe Targetの活用により、それを実現できると考えています。
さて、次は何がくるでしょう。アドビは、ビジネスや世界にインパクトを与える新しい兆しを探しつづけ、皆さんが取り入れられようサポートします。
※本記事は、2017年3月15日にAdobe Targetのプロダクトマーケティング担当であるケビン リンゼイ(Kevin Lindsay)が投稿したブログの抄訳版です。