Adobe Summit 2017 現地レポート Vol.1
今年も圧倒的なキービジュアルのオープニングと共に、2017年のAdobe Summitの幕が上がりました。会長、 社長兼CEOのシャンタヌ ナラヤンはキーノートの中で「現状維持は戦略ではない」とし、「優れたエクスペリエンス(顧客体験)はマーケットリーダーとそれ以外の差別化要因である」と語り、昨年に引き続きエクスペリエンスの重要性を説きました。
また、テクノロジーを利用して部門間の壁(Silo)を壊し、顧客と強いつながりを作るべきであること、テクノロジーによってワークフローを刷新し、Silo化した組織を改善する重要性にも言及しました。
そんな中、シャンタヌは新たに設計された次世代のクラウドとして「Adobe Experience Cloud」を発表しました。
その後登場したデジタルマーケティング事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのブラッド レンチャーも、Experience Business(顧客体験主導型ビジネス)の重要性について改めて触れ、実現していくべき4つのポイントを紹介しました。
- Know Me & Respect Me(顧客を深く理解し気遣い)
- Speak in One Voice(一貫性のあるメッセージで)
- Make Technology Transparent(技術を意識させることなく)
- Delight Me at Every Turn(常に喜びを感じられるようにする)
そしてデジタルエクスペリエンスの業界別事例として、自動車業界からメルセデス ベンツ、旅行業界からはカーニバル クルーズ ライン(Carnival Cruise Lines)、小売業界ではドミノ ピザの実例について紹介しました。またメディア業界からは、ナショナル ジオグラフィック CMOのJill Cress氏をゲストとして迎え、同社のデジタルエクスペリエンスについて語っていただきました。
非常に歴史のあるナショナル ジオグラフィックは、元々実施してきたVisual Storytellingによって世界を変えていくといところから、現在はよりデジタルを活用したDigital Storytellingにシフトしてきており、今ではInstagramで最もフォロワー数が多いブランドになったそうです。
顧客体験の最大化するために新たな構造となったAdobe Experience Cloud
そんな中、ブラッドよりAdobe Experience Cloudをさらに掘り下げた各Cloudの紹介がありました。まず最初にAnalytics Cloud。Adobe AnalyticsとAdobe Audience Managerで構成されており、Adobe Experience Cloudの中核とも言えるCloudです。webサイトをはじめ、オフラインデータ、さらにはIoTセンサーデータなど様々なデータを収集/分析し、そこから実際にセグメントを作成し、アクションに繋げられるところがポイントとなります。
続いて紹介されたのはAdvertising Cloudです。広告配信/管理を担うクラウドソリューションで、ディスプレイ広告、サーチ広告、ソーシャル広告の他、プログラマティックTVも含めた広告をカバーするようになります。TubeMogulとAdobe Marketing Optimizer ※ とが統合され、Search、DSP、DCOとして展開されます。
※ 日本ではAdobe Media Manager
そして最後にMarketing Cloudです。ここにはAdobe Experience Manager、Adobe Campaign、Adobe Target、Adobe Social、Adobe Primetimeが含まれることになります。これまで培ってきたソリューションをベースに、パーソナライズの基盤としてより一層大きくしていくことになります。
そして、Adobe Experience Cloudはエンタープライズレベルのソリューションとして、Creative Cloud EnterpriseとDocument Cloud Enterpriseも緊密に連携することが発表されました。これにより、クリエイティブの作成から実際にアクションを取るための社内のワークフローまでを、Adobe Experience Cloudの中で実現できるようになります。
また、ブラッドよりEnterprise Cloudを統合していくための基盤としてAdobe Cloud Platformが紹介されました。顧客の情報やインサイトを統合し、標準化するものとして今後力を入れるポイントになるそうです。
シンプルなMobile UIやERP/CRMシステムだけではできないExperience Businessの実現に向けて
エグゼクティブバイスプレジデント兼CTOであるアベイ パラスニスが登場し、Adobe Cloud Platformが紹介されました。アベイによると、「Language of the Experience Business」「Open Ecosystem」「Intelligence Everywhere」の3つの信条を掲げてこのプラットフォームに取り組んでいるとのことです。
まず「Language of the Experience Business」への取り組みとして、Adobe I/O EventsおよびLaunchがAdobe Cloud Platformの構成要素として紹介されました。
Adobe I/Oは、昨年発表された開発者/技術開発者向けの資料やツールを提供するプラットフォームです。Adobe I/O Eventsは、提供しているAPIをさらにリアルタイムへの対応を図っていくことで、エクスペリエンスのスケールを拡大し、より適切なジャーニーを作れるようにすることを目指しています。
また、Launchは次世代のタグマネージャーとして、これまでのActivation (Dynamic Tag Management)をさらに進化させ、データレイヤーでの各ソリューション連携をより強化し、エクスペリエンスを担う表側ではより早いレベルでの連携を実現していきます。
また「Open Ecosystem」の取り組みとして、マイクロソフトとの共同ソリューションを発表。MicrosoftのEVP, Microsoft Cloud and Enterprise Group スコット ガスリーが登場し、Adobe CampaignとMicrosoft Dynamics 365、Adobe Experience ManagerとMicrosoft Azure、Adobe AnalyticsとPower BIの3つの連携と、業界標準データモデルの共同開発が発表されました。
これによりAdobe Experience Cloudは、Adobe Cloud Platformを通して、Microsoftのソリューションとデータ連携を行い、さらなる価値を創出することが可能になりました。
そして3つめの「Intelligence Everywhere」として、先日のAdobe MAXで発表されたAdobe Senseiのデジタルマーケティングでの取り組みにも触れました。Adobe Senseiは「Computational Creativity」「Experience Intelligence」「Understanding Content」の3つの領域を軸に、既に色々な機能で利用されており、今回それぞれのソリューションで発表された各機能でも色々なところで利用されています。
その後、これまでご紹介した製品を、プロダクト担当者やエバンジェリストが実際にデモを交えて紹介していきました。Adobe AnalyticsとPower BIの連携によるダッシュボードや、Microsoft Dynamics 365のデータをAdobeソリューションに取り込み、パーソナライズするデモなどが行われました。
また、Adobe Senseiの機能を利用し、訪問者のプロファイル属性に応じてサイトのTOPバナーを自動的に生成するデモが行われました。またカメラの前に立つだけで、その人の特徴を認識し、スクリーンのイメージあ即座に変更される、というデモも実演されました。これまでのようなwebの世界だけではなく、実際の店舗などでもAdobe Senseiを活用したコミュニケーションの可能性が示されました。
今回のSUMMITでは、昨年のテーマである「Experience Business」からさらに踏み込み、エクスペリエンスを大きく打ち出したテーマの提示、製品構成の発表となりました。また、先日のAdobe MAXで発表されたAdobe Senseiがどのように生きてくるかも見えてきました。
キーノートの後半では、より具体的な製品デモも展開されたため、次回の更新でまたご紹介させていただきます。(Adobe Summit 2017 現地レポート Vol.2 – Adobe Experience Cloud Japan Blog)