Adobe Summit 2017 現地レポート Vol.2

昨日ポストしたVol1からの続きになります。1日目のキーノートではAdobe Experience Cloudが発表され、そこに紐づく、Analytics Cloud、Advertising Cloud、Marketing Cloudの3つが発表されました。その中でいくつか具体的なデモも実演されましたので、ご紹介したいと思います。

素早い意思決定を実現するAnalytics Cloud

まず、Industry Strategyを担当するJulie HoffmannおよびAnalytics EvangelistのEric Matisoffが、Adobe AnalyticsのWorkspace機能での異常値検知(Anomary Detection)および貢献度分析(Contribution Analysis)を利用したデモを行いました。

従来の貢献度分析では、Adobe Analyticsで蓄積されたデータだけが分析対象だったのですが、今後はAdobe Audience Managerの3rd PartyデータやAdvertising Cloudのインプレッションなどの指標も含めて分析できるようになることが紹介されました。

続いて、Adobe Experience Managerのアセット管理機能についてのデモです。例えば、これまでページ内に配置する画像の選択は、担当者の直観に頼っていました。これを、Analytics Cloudのデータを連携させることにより、その画像がどのぐらい利用/閲覧されているかを確認することができるようになる、というものです。

さらにデモの中では、異常値検出などを知らせるIntelligent Alerts機能のなかで、メールやSMSへの通知設定を簡単に追加できる機能が紹介されました。これまで特定の指標にしか設定できなかったのですが、より複雑な条件指定ができるようになりました。それだけでなく、SMSで通知を受け取った際に、「Analyze」と返信すると、貢献度分析結果が返信される、という機能のデモもありました。

広告基盤として必要な全てがあるAdvertising Cloud

続いてVice President & General ManagerのBrett WilsonからAdvertising Cloudが紹介されました。広告業界が非常に混み合い複雑化していることに触れながら、それを打破していくものとしてAdvertising Cloudを位置付けています。2016年にアドビが買収したTube Mogulの機能を統合することで、広告取引の自動化、プランニング、買い付け、計測、最適化、Cross Channel 広告配信など、広告基盤として必要なすべてをひとつのプラットフォームで提供します。

Cross-Channelであり、Cross-Screenであること。サーチ広告やソーシャル広告などのチャネル横断、さらにはデスクトップ、モバイルだけでなくTVにおいても広告配信ができると説明しました。また、Analytics Cloudのオーディエンスデータを数クリックで広告セグメントとして利用し、配信設定できることについても触れました。

Zarpana Kabirによるデモでは実際に、数クリックで簡単に広告設定を実施し、その結果をcomScoreのデータも利用しながら分析できることを実演しました。また、IntelのJulie Keshmiry氏を招き、プログラマティックTVの広告買付のデモも行いました。これまでのディスプレイ広告と同じような形で、非常に簡単に、かつ、Analytics Cloudのセグメントデータを使いつつ、TVの広告枠買付ができるようになります。

顧客のために業界を変えるT-Mobile

次にT-MobileのSr. VP of Digitalを務めるNick Drake氏が登場し、エクスペリエンスに対する同社の取り組みを語りました。自らを「The Un-Career」と位置付け、他のキャリアとの差別化を図っているT-Mobileは、「全ては顧客のため」という方針のもと、複雑性を排除し、T-Mobile Tuesdayというアプリをダウンロードするだけで、様々な無料体験ができるサービスを展開しています。

セッションの中でNick Drake氏は、T-Mobileは顧客中心で、エクスペリエンスを重視したデジタル企業になっていきたいと述べ、そのためにAdobe Experience Managerをデジタル基盤とし、Adobe Analytics、Adobe Target、Adobe Audience Managerを利用し、モバイルも含めて様々な取り組みを実施していると紹介しました。

デバイスではなく人に体験を提供するMarketing Cloud

続いて、Sr.Director , Strategy & Product Marketing のロニ スタークが登場し、Marketing Cloudを紹介しました。Content、Personalization、Orchestrationの3つをポイントに言及し、新たな機能をSenior Evangelistであるマチュー ハノーズとともに紹介しました。

クリエイティブを様々な媒体で展開していくにあたり、それぞれに合わせたものを用意するのは容易ではありません。デモの中ではT-Mobileのプロモーションページを例にとりながら、デスクトップ、モバイル向けだけではなく、サイネージや店舗のディスプレイなどに合わせた体験を簡単に作成できる機能を紹介しました。

また、Adobe Senseiの活用により、Adobe Targetを利用した自動パーソナライゼーションをさらに進化させ、かつ、これまではデバイスごとに最適化されていたものを、昨年発表されたDevice Co-opの機能を活用することで、「人」ベースでの自動最適化が可能になった点が紹介されました。

またAdobe Campaignにおいては、Cross Deviceを含むAdobe Experience Cloudのオーディエンスデータを活用したワークフローを紹介し、デバイス単位ではないカスタマージャーニーでの設計ができることに触れました。またAdobe Creative CloudのDreamweaverと連携することで、Adobe Campaignで利用するメールをデザイン担当者が簡単に作成できることが紹介されました。

VRも利用したワークフローの未来

最後にテクノロジーラボとしてアドビのテクノロジーでどんなことができるか、を披露するセッションが、Adobe Fellow, VP of Enterprise TechnologyのDavid Nueschlerから紹介されました。Adobe Senseiを活用した画像への自動タグ付けから始まり、モバイルの画像を簡単に大きなダッシュボード画面へ移動し閲覧できるようにするデモが紹介されました。また、VRを利用することで、仮想の大きなダッシュボードから画像を選択する様子が実演されました。

2回にわたりAdobe SUMMIT 2017の1日目のキーノートをレポートさせていただきました。私個人としては昨年に引き続き改めて「エクスペリエンス(顧客体験)」にフォーカスする中で、それを実現するポイントとして「人へのフォーカス」「基盤の統合」「ワークフロー」といったキーワードがあったと感じています。

昨年のリリースで発表されたDevice Co-opや、昨年アドビに加わったTubeMogulを活用することにより、デバイスではなく「人」にデータを統合できるようになってきました。それに合わせて基盤を統合し、「人」単位での機能が強化されてきています。Adobe Senseiを活用し、意思決定を早くするデータの提供、そしてCloud間を含めたワークフローを整備することで、アクションしやすくし、「エクスペリエンス」を最大化していく構造です。

中には一部、日本への登場は少し先になる機能もありますが、エクスペリエンスを最大化する基盤として、Adobe Experience Cloudは非常に大きな役割を担うことを、キーノートから感じることができました。