〆切迫る4月9日13時(JST)「Make the Cut」コンテストチュートリアル | Vol.3 YouTube Space Tokyo ワークショップゲスト講師 ZUMI監督 インタビュー #MaketheCut #PremierePro25

連載

Premiere Pro 25周年「Make the Cut」コンテスト

Adobe Premiere Pro 誕生25周年を記念した「Make the Cut」コンテスト。このコンテストの応募を目指し、ミュージックビデオ(MV)を編集するポイントやコツを学べるワークショップが先日、東京・六本木の YouTube Space Tokyo で開催されました。

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ワークショップは、HKT48をはじめ多くのアーティストのMVを制作されている ZUMI監督(ドリームフィルムズ Z-CUP)をゲスト講師として迎え、ミュージックビデオ制作のポイントや実例を交えたテクニックの紹介がありました。参加者は、実際に Premiere Pro を使って「冒頭7秒を編集する」という課題が与えられ、イマジン・ドラゴンズの楽曲 “Believer” の未編集の映像素材を使って実践するハンズオントレーニングを行うなど、盛りだくさんの内容でした。アドビのビデオ製品担当の古田正剛も

ミュージックビデオ制作の極意

ポップカルチャー・エンターテイメントにおける文脈から、独自のスタイルでミュージックビデオやコマーシャルの演出を行っているZUMI監督。彼が映像制作において大切に思っている4つのポイントは以下。監督のコメントとともに紹介させていただきます。

1. 「ミュージックビデオはエンターテインメント!」

MVを見るのって楽しいじゃないですか?音楽とシンクロしていたり、歌詞の世界を感覚で体感できたり、その音楽に新たな一面を垣間見たり。作り手もそれを知っているようで、意外と忘れがち。終始ひとつのMVに没頭しすぎるとそれに麻痺してしまって良さがわからなくなってきたり、視野が狭くなってしまったりしますよね。そんな時は初心に戻って、「誰に観て欲しいか」「どう感じて欲しいか」を考えてみるようにしています。

2. 「チャレンジすること」

MVはショートフィルムと似ていますよね。プロモーションやコマーシャルの意味合いもありつつ、実験映像的な側面を持っているメディアだと思います。常にひとつのチャレンジを盛り込んでいけると、演出の引き出しも増えると思います。時には斬新なアイデア推しだけで一本作ったりするといいと思います。

3. 「スキップされないオープニング」

誰でも簡単に映像を作れる、素敵な世の中になりつつあります。一方、MVを含めあらゆる映像の「ありがたみ」が減っていて、ユーザーは「自分が見たい映像」を検索して視聴するという流れが一般的になっています。同時に拡散もされやすい世の中なので、自分で作ったMVをより多くの人に見てもらうには、簡単にスキップされないような「キャッチーでフックのあるオープニング」が大切です。印象的かつシンプルに。これが意外と難しい!

4. 「続けることが大事」

何事も続けることに意味あります。特にMVは短編映像なので、一年間作り続けているだけで十数本も手がけられます。数をこなして見えてくるものや掴めるコツもあります。目の前の課題に取り組みつつ、ゆくゆくはどういった映像を作っていきたいか考えながらひたすら作り続けていきましょう!

「ミュージックビデオは見る人を楽しませるためにある」と語るZUMI監督は、あらゆるエンターテインメント性を「誰に」「どのように」伝えるかをよく考えるそうです。海外では映画監督が実験的にミュージックビデオを撮影することもあり、短い尺ならではの「チャレンジ」が盛り込みやすい媒体です。チャレンジにはもちろん失敗がつきものですが、失敗をしてもめげずにチャレンジし続けることがその先へとつながるヒントとなります。

そして、今回のワークショップのテーマに密接に関係するのが「スキップされないオープニング」です。「Make the Cut」コンテストのような世界規模のコンテストでは全体の応募数が膨大な数になるので、最初の10秒でいかに心をつかむ演出ができるかがとても大切になります。ただし、これはコンテストだけではなく映像作品すべてに共通することであり、ありふれた映像を次々にスキップするが当たり前な現代でも、最初の10秒の演出は「見る」か「見ない」かの大きな分かれ道です。

ミュージックビデオの「つかみの演出」テクニック

今回のワークショップのでは「つかみの演出」を課題にあげています。そのヒントとなるテクニックを、ZUMI監督が自ら制作したミュージックビデオを実例に解説いただきました。

アップから始まりトラックバックすると同時に、暗い照明から明るくなる、といったオーソドックスな演出。さらには、冒頭に衝撃的(印象的)な1カットを長めに入れることで「この後どうなるんだろう?!」という気持ちを掻き立て、そこから畳み掛けるような忙しい流れをつくることで前後の対比と、長めの1カットを活かす演出。

また、モデルや女優として活躍している人物が主役の場合などは、最初にみんなの知っている顔を見せることによって誰のミュージックビデオが始まるのかをわかりやすく、アーティストのキャラクターや雰囲気に合わせてあえて説明文を入れることで、ミュージックビデオのなかでの物語に入りやすくなるなど、普段何気なく見ているミュージックビデオですが、その奥には隠されたテクニックがいろいろと組み込まれているのです。

「Make the Cut」コンテスト提供素材を編集する

ワークショップ後半では、ZUMI監督がお手本として制作した課題曲 イマジン・ドラゴンズの “Believer” のミュージックビデオを例に、「Make the Cut」コンテストで実際に配布されている素材の様々な使い方を紹介していただきました。

素材をそのまま使うだけでなく、「色の調整」、「速度の調節や逆再生」といった基本テクニックを使用して「そう見せる」編集がプロならではの高い視点です。また、シーンの切り替えやアクションを、音にハメて編集することでビートが強く感じられるテクニックも使い所次第でかなり効果的な演出になることが解りました。

ワークショップの最後には、ZUMI監督、司会のマグナロイド氏、アドビ のビデオ製品担当 古田正剛 による、参加者の制作したミュージックビデオの講評が行われ、コンセプトと技術面に関してのアドバイスを、一人一人に丁寧に伝わっていました。

「一つの楽曲からさまざまなコンセプトが生まれるように、枠にとらわれずにやりたいことをやってみるのが大切です。たとえそれが失敗したとしても、その積み重ねがスキルの向上に繋がります。」

「コンテストに出すのは勇気のいることかもしれませんが、「Make the Cut」コンテストという機会にチャレンジするという姿勢が大切なので、ぜひ参加してほしい!」

と、ZUMI監督から熱いメッセージも。

最後に、ZUMI監督にコンテスト応募のための勘所やMV制作のヒントを詳しくうかがいましたので、皆さんも応募作品を作るための参考にしてください。

映像ディレクター ZUMI監督 インタビュー

Q. ずばり、コンテストに応募する時の心構えを教えてください。

A. 自分が審査員だったらということを考えて、その立場になって考えるようにしています。
今回のようにグローバルなコンテストだと全体の応募数が多くなってくるので、「開始10秒」で審査員のハートを掴む「オープニング」が大事になってくると思います。盛り上がりを後半に持っていくのはもったいないですね。冒頭から見所いっぱいの作品にするのがいいと思います。

Q. ご自身が「Make the Cut」コンテストに応募するとしたら、どんな作品で応募しますか?

A. 映像素材は同じでも、編集によって全く違った見え方になります。ツールは Premiere Pro だけにとどまらず、 After Effects を使用して映像素材(ソース)を加工するなど、オリジナリティのエッセンスを加えて、素材の新しい使い方を提案できるようなミュージックビデオを作ると思います。

Q. コンテスト課題楽曲「Believer」の印象は?

A. かっこいいですよね。男・信念強さ・ストイックさ・孤独 というテーマを感じました。
冒頭からビートが印象的なので、音でハメ(※)ながら編集するのが楽しそうですね。

※音ハメのテクニックは、アドビのビデオ製品エヴァンゲリスト Jason Levine が「 How to Edit to the Beat, Using Markers & Automate to Sequence | Adobe Premiere Pro CC 」で、マーカーをリアルタイムにタップしながら解説。

Q. 賞金は日本円に換算すると約280万円($25,000 USD)ですが、もし監督が受賞したら何に使いますか?

A. 休暇をとって海外に旅行したいですね。行ったことのない場所に行くのは最高のインプットだと思いますので。
※ZUMI監督は、コンテスト関係者のため実際には応募しません。

Q. コンテスト課題楽曲を提供してくれた「Imagine Dragons」の次回作を撮影するとしたら、どんなプランでいきますか?

A. 海外からみた日本って、クールジャパンというか日本に対してある一定の期待値があると思っています。「ジャパニーズ、クレイジー!クール!」と思ってもらえるような、演出の自由度を持って取り組みたいですね。フラッシュアイデアですが「Imagine Dragons」のメンバーと一緒に車に乗って旅に出るような、主人公主観のドキュメント映像から始まって、旅が進むにつれて奇想天外な事件が起こったり、CGの世界に飛び込んだりなど、不思議なことが起こっていく!みたいな企画はどうでしょうか?

MV監督のプロも興味津々の「Make the Cut」コンテスト。楽曲や映像素材のクオリティの高さが、作品制作のモチベーションにつながります。ZUMI監督に負けない自由奔放なアイデアの作品を Premiere Pro で編集してみましょう!
コンテストの応募締切は4月9日(日)です。

ZUMI(Soichi Nakazumi)

1987年生まれ 広島出身 東京都在住
京都精華大学デザイン学部卒業後、フリーランスの映像監督として活動を開始。
実写映像から2Dモーショングラフィック/3DCG/手描きアニメーションまで、表現方法は多岐に渡る。
2012年 屋号を “ドリームフィルムズ Z-CUP “とする。

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