「テキストライティング」の達人・松尾茂起さんに学ぶ
Webデザインの新しい参考書【達人に学ぼう】
こんにちは! Webデザイナーのくれまと申します。
Webデザイナーとして働くためには、幅広いスキルが必要ですよね。アプリをはじめ、仕事を重ねるほどに深さを実感するWebデザインの世界ですが、単にキレイなだけではない、**「成果の出るWebサイト」を作成できるのは、デザイナーと『ほかの専門家』の力が化学反応してこそ、**ではないかと感じています。
そこで、より良いWebデザイナーになるためのヒントを求め、同業のさくらさんと一緒に、Webデザイナーとして気になる分野の達人から教えていただく新シリーズをお届けいたします。
第一回は、「Webライティング」が知りたい!
さくら:
くれまよ。おまえは『沈黙のWebライティング』を知っているか……?
くれま:
ちょ。さくらさん、急にハードボイルド調になっちゃって、どうしたんですか!?
さくら:
あ、すいません! これにすっかり影響されて、ハードボイルドのヒロインになりきっちゃいました(笑)。
『沈黙のWebライティング』と、続編の『沈黙のWebマーケティング』は、単行本にもなっているWebコンテンツで、面白いし共感できるな〜って思っていて、私、連載第1話からのファンなんです。
全編を通して、ハードボイルドでドラマチックな世界観で分かりやすくWebライティングの神髄を教えてくれるんですが、なかでも、主人公のWebマーケッターボーン・片桐が、Webデザイナーにこんな風に語る回があるんです。
『沈黙のWebマーケティング』 PAGE02.「偽りと本質のWebデザイン」より
くれま:
「言葉をデザインできないWebデザイナーは、Webデザイナーではない」……かぁ。刺さる一言ですね。
さくら:
私、デザインもライティングも本質は同じで、相手に自分の意図を伝えるための手段だなと思っているんです。だから、この一文を最初に読んだときはすごく共感して。なんだか、ライティングの考え方から、デザイン制作のヒントも得られそうですよね。この「ボーン・片桐」の生みの親に会いに行きませんか?
くれま:
Webデザイナーとしては、ライターさんならではの視点で、これからのWebサイトがどうなっていくのかというお話にも興味があります!
さくら:
それも興味深いですね。きっと私たちが思わぬような発見がありますよ。では早速行ってみましょう!
今回の「達人」はこんな人! 松尾茂起さんのキャリアを解剖
ということで、こちらが松尾茂起さん。
って、間違えた、これはマンドリルの置物でした。(なんでマンドリルの置物があるの……?)
ゴ、ゴホン、気を取り直して。
こちらが、松尾茂起さんです。
テキストライティングに悩むWeb制作者向けの話題の書籍、『沈黙のWebマーケティング』、『沈黙のWebライティング』の著者で、Web業界に足を踏み入れる前は、舞台音楽制作に関わるお仕事をなさっていました。
そんな松尾さんがどうやってSEOの達人になっていったのか、そのキャリアをちょっと紐解いてみましょう。
松尾さんはこんな人
奈良県生まれの38歳。京都在住。
音楽畑でキャリアスタート
ヤマハの音楽投稿サイトにアップロードした作品が後に在籍する会社社長の目に留まり、舞台音楽制作会社に就職。舞台音楽の制作やヤマハの音楽番組「ハミングパーク」に「シゲシゲ王子」というキャラクターで出演するなど、音楽畑で活躍。
ピアノ伴奏素材集「超!ピアノMIDI素材集」の成功
独立後、ベストセラー『ウェブ進化論』筑摩書房(http://amzn.asia/7Edx0B4) に感銘を受け、読後3日で得意のピアノ伴奏を「MIDI」というデータ形式で収録の上、SEOを独学し、プロデューサーや作曲家向けにWebサイト上で販売開始する。「ピアノ伴奏」「ピアノMIDI素材」等のキーワードで上位表示されるようになり、大好評を博す。
他社サイトのコンサルティングを開始
自サイトの成功をきっかけに、知人のWebサイトのSEOを依頼されるように。
SEOテンプレート「賢威」発売
ピアノMIDIの販売サイトから約1年後、SEOのノウハウを商品として販売開始。当時世の中に存在しなかった「SEO」と「テンプレート」を組み合わせたホームページテンプレート「賢威」は、大ヒット。2017年現在に至るまでバージョンアップを続け、販売実績を重ねている。
2010年に「ウェブライダー」法人化
SEOのパワーで「まだ誰にも知られていないようなニッチな商品」を売る楽しさを実感。テンプレート「賢威」の購入者からもコンサルや制作の依頼が増え、2010年に法人化。
書籍執筆、そしてCSS Nite登壇
法人二期目に、出版社より「SEOに詳しくWordpressのこともある程度わかる」ということで打診を受け、書籍執筆を開始。本をきっかけに商品がまた売れたり、仕事の依頼も増えたりし、その流れで「CSS Nite」などのWeb系セミナーに登壇する。
……ここまでが2013年くらいまでのお話。どうやら、松尾さんのルーツを理解するには「ピアノ演奏」、「舞台音楽」と、そのベースとなる「演劇」がキーワードになりそうです。
ではまず、そのあたりから、お話を伺っていくとしましょう!
演劇から影響を受けたライティング手法
さくら:
松尾さんは、Web制作関連の勉強会「CSS Nite」で、2013年と2015年にベストスピーカー賞に選ばれていますよね。そういった実績はもちろんですが、書かれた文章を読んでも、松尾さんは「話す」と「書く」という行為が常に一体になっている方だという印象があります。
松尾:
僕の中ではライティングの定義がすごく広くて、**「ライティングとは、自分の考えを言葉にする行為」**だと思うんです。
僕はもともと演劇の世界出身なのですが、といっても超下っ端ですが、演劇の世界というのは、言葉の力がとても強いんです。
舞台音楽制作の仕事をしていた時代、とある演出家の舞台の仕事をしていました。
その方は、「口立て(くちだて)」という手法を使い、現場でどんどん台本を変えていく。演者さんがしゃべったセリフのニュアンスが違ったら、その場で全部、台詞を書き変えていくんです。
役者さん一人ひとり言葉の使い方は違うので、演出家は「お前こう言え」と口でしか言わないんです。「これ合わない、じゃあ次こう言え、こう言え」って。
「口立て」の手法を突き詰めていった結果、台詞だけでなく役柄設定自体が見直しになったこともありました。
そのきっかけは**「言葉が合わない」**からですよね。
「なぜこの演出家は、決まっている言葉を変えていくんだろう」というのが、当時すごく疑問だったんですけど、いまこういう仕事をしていると、すごく分かるというか。
そういう経験をしたことで、紙媒体もWeb媒体も、歌詞も演劇の世界も、僕の中では全部がライティングになっていて。
プレゼンの時にどういう言葉を紡ぐかというのも、ある意味ライティングだと思うんです。
そういうところは、他のライターさんとは、若干感覚が違うのかもしれません。
くれま:
松尾さんの『Webマーケッター ボーン』シリーズですが、少年漫画的な「お約束」の中で、伝えるべきことをきちんと掲示しているんだなと思いました。私は過去、いろいろな技術書を読んできたんですが、頭にするっと入ってくる本って少ないんですよね。
その点、『Webマーケッター ボーン』シリーズは、上手い「パッケージ」に入っているからスラスラ学べるな、というのはすごく感じました。
『Webマーケッターボーン』シリーズは対話形式でストーリーが進む。各章末には裏付けとなる読み物があり、知識を補完できる。
さくら:
もともとKDDI ウェブコミュニケーションズさんのレンタルサーバー(CPI)の広告として作られたコンテンツなんですよね。
松尾:
KDDI ウェブコミュニケーションズの方から、「自社の専用サーバーのことをもっと多くの人に知ってもらいたい」という要望があったんです。
「もし、予算を用意したら、松尾さんだったらどのような施策をおこないますか?」と言われたんですが、専用サーバーのことに興味がない人たちに「専用サーバーを契約しましょう」と言っても多分借りてもらえない。そもそも、多くの人は専用サーバーを契約する必要性を感じていない。
そういった人たちに専用サーバーの大切さを伝えるためには、「なぜ専用サーバーでないといけないのか?」という理由を、身近な話題に絡めて伝えていく必要があると思ったんです。
Webにかかわる人にとって身近な話題といえば、たとえば「Web集客」があります。
そこで、その「Web集客」という話題に絡めて、専用サーバーの大切さを啓蒙しようと考えてつくったコンテンツが『沈黙のWebマーケティング』だったんです。
分かりにくいレンタルサーバーの知識を題材に扱うためには、先程話に出た「パッケージ」自体に魅力がないとダメで、これまでネット上には「ボーン」のようなハードボイルド調のヒーローが活躍するというコンテンツが無かったので、こういうのがあれば面白いんじゃないかなと、消去法的に設定を考えました。
くれま:
消去法的だったんですね。そして、とても戦略的。
「わからない読者」の代表として書く
くれま:
サーバーだけではなく、松尾さんには色々な業界からご依頼があると思いますが、その中でもこういうジャンルならやりやすい、あるいはやりづらいというのはありますか?
松尾:
自分が日常的に関係しているジャンルであれば、全部得意かなと。苦手なものは、自分が日常的に接点がないジャンルですね。でも、書けと言われればなんでも書けると思います。うちの会社や僕自身のポリシーとして、**「わからない人が書くから意味がある」**というのがあって。
わかる人が書くと、論理を端折ったり、読み手がわからない言葉が出てきたりするんです。
なので、自分にとって難しいジャンルはあるとは思いますが、、やれと言われてできないジャンルは、多分無いなと思います。
くれま:
わからない読者の代表として、松尾さんがわかる人に訪ねていって記事を書くという……。ちょっとだけ、通訳と似てるなと思いました。
松尾:
通訳に似ているというのはおっしゃる通りです。
うちでは「翻訳する」という言葉をよく使うので、**このコンテンツを誰に向かって翻訳するの?**というのは社内でよく言い合うんです。
逆に、専門家が読者ターゲットで、「BtoBで専門家同士をつなげてくれ」という案件は、専門用語を使わずに一般の言葉で書いてしまうと、まどろっこしくなってしまうので、どんな言葉で、どのように翻訳するのかという点にはいつも気を付けています。
ここがポイント!
松尾流「伝えるライティング」のコツは、**「わからない人の代表として書く」**ということ。その分野に初めて触れる人ならではの「素朴な疑問」を大事に、文章を構築していこう。
ライター&編集者のチーム編成で記事を書く
さくら:
御社で記事を書かれる際に、よそから編集の方が入ることはあるんですか?
松尾:
別会社からの編集者が入ることは、ほとんどないですね。
お客さんから、細かい部分で「この表現はこちらに変えてください」と言われることはありますが、コンテンツ演出全体に関しての駄目出しもありませんし。
ただ、うちでひとつの記事を作る時は、「全員野球」のような体制をとります。
基本的には各案件ごとにライター&編集者のコンビで進めていくのですが、記事をチェックする場合には、ライティング業務に従事しない人にもフィードバックをもらいます。
なぜなら、記事に携わる人たちって、自分たちがインプットをすればするほど、どんどん賢くなっていってしまうからです。
つまり、読者の視点から遠ざかってしまうケースがあるんですね。
最初は知らなかったのに、回を重ねるごとに、そのジャンルの玄人になってきちゃって、そうなるとその人は初心者の気持ちには戻れないんです。
そうなってしまった時に、セカンドポジションで素人視点での意見を言える人たちがいると、「これってどういうことかわからない」って指摘ができるんですよね。
この体制により、「そういや、これって分からないよね?」と気づけるようにしています。
ここがポイント!
書いていくうちにどうしても対象に詳しくなってしまうという状況に対応し、きちんと「わからない人の代表」として書いていくためには、第三者視点を持った人たちとチームを組むことも効果的だ。
「口立て」手法を使って、合う言葉を徹底的に探す
さくら:
そういえば、『Webマーケッター ボーン』シリーズの書籍化の際には、編集者の方が修正されたりはしたんでしょうか?
松尾:
漢字の表記などの他は、編集の方から指摘されて修正するということはありませんでした。その代わり、内容については全社員にツッコミを入れてもらいました。
くれま:
松尾さんの会社であるウェブライダーさんが、ライティングと編集を両方にやっていらっしゃるから、ワンストップで完結できちゃうんですね。編集プロダクションとは名乗っていませんが、実は、編集プロダクションの役割を持っているという。
松尾:
そうかもしれないですね。うちの会社内では、こんな風にフィードバックしています。
くれま:
これはPDFドキュメントにAcrobat Proを使って注釈を入れてるんですか?
松尾:
はい。Acrobatを普段はよく使います。注釈機能がものすごく便利なので。ただ、『Webマーケッター ボーン』シリーズの場合は、関わる人数が多かったので、Googleのスプレッドシートなどを使っています。
書籍版の初稿には沢山の指摘が入りました。たとえば、本編に登場する「ヴェロニカ」という女性のキャラクターがいるのですが、そのキャラクターが「心配かけてごめんなさいね。」というのは違和感があるから、「心配かけてごめんなさい。」に変えるとか。
くれま:
えー! 「ね」を入れるかどうかの判断ですよね。細かい……。
さくら:
ああ。でも、これって、先ほど演劇の話で出てきた「口立て(くちだて)」の手法で書いていったんですね。
松尾:
はい、うちの業務の風土として、**「少しでも違和感を感じるものは放置しない」**ということがあります。
だから、誰かひとりでも「これっておかしいのでは?」と言ったのであれば、その指摘が納得できるものであれば、直しちゃうんです。
ただ、「これはダメ」というのはカンタンに言えますが、「なぜダメか」ということを言葉にするのは大変です。「なんとなく」じゃ相手に伝わりませんから。
だから、何がおかしいのか、どうおかしいと感じるのかを言語化して相手に伝える必要が出てきます。これが超大変。
ただダメ出しするのなら誰でもできるのですが、その理由を言語化するとなると、ダメ出しための労力が相当かかる。とはいえ、それをやらないと、結局コンテンツの質は上がらない。
だから、うちでは、ダメ出しを出すモチベーションを高めるために、ダメ出しに対して感謝し合う風土を大切にしています。「こんな細かいところまでチェックしてくれて本当にありがとう!」って。
まあ、「M」の集団ですよね(笑)
『沈黙のWebライティング』も、皆から徹底してダメ出しをもらいました。
僕が徹夜しながらがんばっていることを皆知っているにもかかわらず、「ここがダメです! なぜなら~」とか「ここはおもしろくないです! なぜなら~」という容赦ないツッコミを浴びせてくる。
普通の人なら「オレはこんなに頑張ってこの文章を書いたのに、そんなにダメ出ししなくてもいいじゃん……」って落ちこみそうなところですが、僕はダメ出し大歓迎なので、「みんな本当にありがとう!」って感激して(笑)
ほんと、Mですよね。ちなみに、僕のイニシャルはS・Mですけど。
『沈黙のWebライティング』はそんなこんなで、ウェブライダーのみんなの愛あるダメ出しのもとに完成したコンテンツなんです。
『沈黙のWebライティング』より。フィードバックループ!
くれま:
指摘を採用しないケースはあるんですか?
松尾:
指摘の理由が納得いくものであれば、すべて採用します。でも、どう考えてもそれは個人の感覚でしょ?というものは採用しません。とはいえ、それは滅多にないですが。
ですから、「何か変だ」と思った人のことは、よっぽど変なことを言わない限り、極力聞くようにして、90%くらいは採用するようにしています。
さくら:
『Webマーケッター ボーン』シリーズは松尾さんの単著としてクレジットされていますが、社員一丸となって作られた本なんですね。
くれま:
まさに**「チームライティング」**。会社として書くメリットですね。
ここがポイント!
「合う言葉」「合う表現」を見つけるまで、チェックする側が「これを指摘してはいけない」というタブーを作らずに、チーム内で徹底的にフィードバックしあっていこう。
2017年のライティングの流行は「アプリライクな縦長コンテンツ」「文中の写真/動画演出」
くれま:
話題は変わりますが、ライティングに流行はあると思いますか?
松尾:
それに関しては、僕なりの持論がありまして。ライティングに流行があるのだとすれば、「どんどん縦に長いコンテンツが作られていること」だと思いますね。
縦に長ければ長いほどいいわけではありませんが、縦に長いページにはメリットがあります。それは、ユーザーが必要とする情報を一気に提供できることです。
縦に長くなりすぎて、結果的に見づらくなったり、わかりづらくなるのはダメですが、見やすくてわかりやすければ、自分が欲しい情報が一箇所に集まっているほうがいいですよね。
最近思うのですが、大切なのは記事に「機能」をもたせることだと思います。
たとえば、検索エンジン経由で記事を見る人は、記事を読みたいというより、自分の悩みを解決したかったり、願望を叶えたいだけです。
その際、記事というのは、その悩みを解決するために使われる「ツール」なんです。それって、もはやスマートフォンの「アプリ」とかと同じですよね。
記事を「アプリ」として考えると、どのような機能にすれば使いやすくなるのかが見えてくると思います。
もちろん、縦に長い記事のほうが機能として使いづらいケースも出てくると思います。その際は、あえて短い記事にすればいいでしょう。
ただ、僕が言いたいのは、楽天さんのLPとかの話題を出すときもそうなのですが、縦に長いからこそ、便利だと感じてもらえるケースはたくさんあるということです。
「縦に長いページはダサい」という考え方がもう古いんです。
今の人たちは、ガルちゃん(ガールズちゃんねる)や2ちゃんねるまとめなどで、スマホの縦スクロールに慣れていますし、スマホ自体縦スクロールに適したUIになっています。
くれま:
松尾さんがよくおっしゃっていることですが、「ユーザーは、Webサイトに文字を読みにいくんじゃなくて、記事にある情報から問題を解決したいんだ」という話とも通じますね。
松尾:
それから、最近面白いと思ったのは、「筆者がブログ記事の内容を高速で喋っている動画を、記事内に埋め込んだブログ」の演出が凄いなと思いました。
さくら:
ブログの文章と動画が一体になってコンテンツの文脈が成立するのは面白いですね。
松尾:
ブログの記事だけを読むと、「なんだかこの人小難しそうだ……」と感じるのですが、その記事のあとに埋め込まれている動画を観れば、その著者がその記事の内容を動画で読み上げているという……。
でも、その動画を観ると、その筆者の人としての温度感を感じられるので、その前の文章がなんだか温かく感じるようになったりするんです。
こういうのが今後増えてくると思うんです。文章だけじゃ伝えきれない空気感を、動画や音声で伝えるという。
今後新しいメディアが生まれてくるとしたら、こういう違った演出があるメディアが流行るのかなと思っています。
実は、「Eternal Writing」という、「ライターとして働くすべての人に捧げる渾身のナンバー」を発表したんです。書いて書いて書き続ける怒濤の日々を送り続けるすべてのライターたちのための“解放宣言”として書きました。
くれま:
お、さっそく聴いてみますね!
読者へのメッセージ
くれま:
では、最後に、Webライティングに興味のある方へのメッセージをお願いします。
松尾:
僕が伝えたいことは、Webライティングをはじめ、コンテンツのほとんどは、誰かの悩みを解決したり、願望を叶えるという目的をもって作るべきだということです。
自分の好きな文章だけを紡いでいては、それはアートです。アートで飯が食えるならいいのですが、ほとんどのライティングの仕事は、前述のような目的があって発注されます。
だから、自分の書く文章がターゲットの悩みをきちんと解決できているだろうか?という視点を大切にしてほしいと思います。
あと、僕が気になっているのは、ほとんどの記事が公開されてそのまま放置されているということです。
Webの最大の利点である「いつでもどこでも更新できる」ということが活かされていないんです。
基本的に、情報というものはどんどん古くなります。
そのため、もし、誰かの悩みを解決する情報を発信したいのであれば、きちんと定期的にリライトするべきなんです。
なので、うちの案件では、公開後のリライト予算というものを組んでもらうようにしています。
さくら:
公開後に誤字脱字を見つけたから修正するというのはまだ分かるのですが、どのような時に、公開後のリライトおこなうのでしょうか?
松尾:
たとえば、目標としていた指標に届かなかったときなどです。
これくらいの検索順位を獲得しようと思っていたのに、順位が上がらない場合には、そもそも、検索ユーザーにとってその記事が読みづらい・わかりづらいと思われているケースもあります。
また、1万字書いたのに、平均滞在時間が3分しかないとかの場合にも、リライトをしたほうがよいでしょう。1万字の記事を頭から最後まできちんと読んでもらえれば、普通は7分以上は滞在時間が記録されますから。
さくら:
なるほど、そういうところも含めた「品質」なんですね。
松尾:
「読みやすい文章」というのは、読む人の語彙力やバックグラウンドによるので、人によって定義が本当に違います。
自分が読みやすいと思っていても、世の中に出すと「分からない」と思われることって、あると思うんです。
「オレの文章は完璧だぜ!」という人ほどリライトをするのを嫌がるかもしれませんが、基本的には、記事を読みにくるユーザーは記事を読みたいわけではなく、その記事にある情報を知りたいわけですから。
世の中のアプリってずっとアップデートを繰り返してるじゃないですか。なんで文章はアップデートされないんだろうって思うんです。
くれま:
反省点を次の記事に活かすというのはよく見聞きするんですけれども、ひとつの記事の中でPDCAを回すのは初めて聴きました。
さくら:
今、**「あっ、直して良いんだ!」**って思いました。
更新できるのがウェブメディアと紙との違いですもんね。言われてみれば、本来活用すべきところなんですよね。基準が曖昧だと揉めてしまいそうですが、リライトの基準と目標となるKPIをきちんと決めていらっしゃるので、とても効果的だと感じました。
松尾さん、お忙しいなか、お時間を割いていただき、ありがとうございました! 〆は、ウェブライダーさんのシンボルであるマンドリルちゃんとのツーショットで。
まとめ
くれまのまとめ
一度世に出した記事を推敲することなどなかった私は、松尾さんの話を伺いながら、冷や汗がたらたらと流れていました。文章を「ツール」として使いこなすための、丁寧なお仕事ぶり、ぜひ取り入れたいと思います。まずは、この連載の記事をブラッシュアップするところから……!
さくらのまとめ
松尾さんの文章は頭の中で音読してみると、とてもリズミカルで読みやすいんです。松尾流「ライティング」の意識と、チームによる徹底したフィードバックがそのヒミツだったんですね。徹底したフィードバックはWebデザインや日頃の仕事全般でも意識したいところです。まずはこの納得感と満足感を皆さんと分かち合えるだけのライティング力を、私も磨いていきたいな!
ツイートで応募!『沈黙のWebマーケティング』&『沈黙のWebライティング』をセットで5名様へ
松尾さんと版元のMdNさんのご厚意により、今回本文でご紹介した、松尾さんの著作『沈黙のWebマーケティング』と『沈黙のWebライティング』の2冊を、期間内にこの記事をシェア頂いた方の中から抽選で5名様へプレゼントいたします。
『沈黙のWebマーケティング』
『沈黙のWebライティング』
- 応募期間:2017年4月20日 23:59 まで
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