ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識(5)CC以降、テキストの扱いで変わったこと

連載

ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識

今回は、CC以降のIllustratorのテキスト関連の機能強化や微調整についてまとめてみます。

「よく使うフォントをスピーディに選択したい」というフォント選択だけでも、大きく手が入っていますので、棚卸しとしてご一読ください。

チェックリスト

Illustrator CC以降、変わったことを棚卸しするためのチェックリストです。ここに挙げたものは「古い常識」。まずは、チェックしてみてください。

  1. フォントを指定するには、いつも長いリストを開く必要がある
  2. フォントを指定するには、フォントの1文字目を[文字]パネルの[フォント]フィールドでタイプする
  3. 直前に使ったフォントは、[最近使用したフォント]から指定できるが、Illustratorを再起動するとクリアされてしまう
  4. ドライブにないフォントは、購入するなどして、自力でインストールする必要がある
  5. ドキュメント上のテキストに対して、フォントを指定するには、[文字]パネル(など)で、フォントを選択する必要がある
  6. 「均等配置(最終行左揃え)」を指定している段落内で強制改行を行うと、その箇所は左揃えになる
  7. テキストを編集中にスクロールしようとスペースバーを押すと、テキストとしてのスペースが挿入されてしまうので、スクロールはできない
  8. 「1を①」、「高を髙」のように変換したい場合には、[字形]パネルを開き、そこで変換する
  9. ダミーテキストを入力したい場合には、自力でがんばる
  10. 文字ごとに位置、大きさ、角度などを調整したい場合には、テキストをアウトライン化、グループ解除してから、アートワークとして調整する(文字列やフォントなどに変更が生じる場合には、すべてやり直し)
  11. ポイント文字をエリア内文字に、エリア内文字をポイント文字に変換するには(面倒だが)がんばる
  12. エリア内文字の領域内にテキスト量が少ないとき、あふれているときには、手動で大きさを調整する
  13. 文字スタイル/段落スタイルを適用するには、パネル内でoption+クリックする

フィルター機能を使ってフォントを絞り込み表示する

パレートの法則よろしく、たくさんフォントをインストールしていても、実際、使うのは一部のフォント。常に長いリストを表示するのでなく、よく使う使うものを選びやすくできないの?と、おそらく全Illustratorユーザーが願っていたことでしょう。

それを実現するのが、フォントのフィルター機能。Illustratorユーザー積年の夢がようやく叶いました! ちょっと大げさですが、Illustrator CC以降の最大の強化ともいえます。

「フィルター」ということばでは、ピンと来ない方は、「設定した条件に合うものだけを絞り込む」機能とお考えください。

お気に入り

[文字]パネルでフォントのリストを表示し、ぱっと呼び出したいフォントの左側の☆をクリックします。

[フィルター]の★をクリックすることで、★を付けたフォントのみが表示されるようになります。

次のような機能が実装されると、さらに使い勝手がよくなりそうです。

分類と類似フィルター

「分類」は、セリフ、スラブセリフ、サンセリフ、スクリプトなどのカテゴリから絞り込みます。選択中のフォントとは無関係です。

一方、類似フィルターは、 選択しているフォントと似たフォントをフィルターするというもの。

残念ながら、分類フィルターと類似フィルターは、現在、欧文フォントのみが対象です。和文フォントにも対応したら、とても強力な機能になりそうですね。

なお、[〜〜]が四角形の中央に来ていないのと、[類似フィルター]が[似たフィルター]となっているのは、ご愛敬… ローカライズ担当の方、減給ものですよ!

検索(任意の場所)

従来から[文字]パネルの[フォント]に、テキストを入力すると、そのテキストからはじまるフォントが表示されました。

Illustrator CC以降、フォント名の最初だけでなく、フォント名すべてが検索対象になりました。

たとえば、「太めのフォントで指定したい」といった場面で「bold」と入力すれば、フォント名にboldが付くものだけがフィルターされます。

さっき使ったフォントをスピーディに選択する

ひとつの制作物内では、繰り返し同じフォントを使うことが多いでしょう。

そんなとき、[書式]メニューの[最近使用したフォント]には、直前に使ったフォントが表示されますので、ここから選択すると効率的です(Illustrator CS以降)。

デフォルトは5つまで。環境設定の[テキスト]カテゴリ内で「15」まで変更することができます。

さりげなく便利な機能ですが、Illustratorを再起動するとクリアされてしまうという残念仕様でした。

Illustrator CCでは、再起動しても覚えてくれるようになりました。特に、Illustratorがクラッシュしてしまったときに嬉しい進化です。

ただし、このメニューをクリアしたり、並び順を変更するなどの機能はありません。常に直近に使用したものが最上部に表示されます。

[最近使用したフォント]の表示方法

[最近使用したフォント]は、テキスト上で右クリックして表示されるメニューにも表示されます。

また、[書式]メニューの[フォント]のサブメニューの一番上のセクションにも表示されます。

[書式]メニューの[フォント]のサブメニューは、上から次のような構成になっています。

フォントリスト上をマウスオーバーするだけで、どんな風に適用されるかを確認できる(「ライブプレビュー」)

選択している文字列にフォントを適用するには、実際にフォントを選択する必要がありました。

フォントフィールドをアクティブにして、↓キー(↑キー)でフォントをスクロールしながら適用することもできますが、それでも煩雑な操作です。

Illustrator CCでは、[文字]パネルの[フォント]のリストを開き、マウスオーバーするだけで、そのフォントがどのように適用されるかを確認できます。

なお、コントロールパネルからでも同様にプレビューできますが、[書式]メニューの[フォント]では、なぜか、プレビューできません。

互換性(均等配置を適用時の段落改行に注意)

Illustrator CCでは(InDesignとの互換性のためか)「均等配置(最終行左揃え)」を指定している段落内で強制改行を行うと、その行も均等配置されてしまうようになりました。

これによって、文字数によっては“間延び”して見えてしまいます。

この変更は、Illustrator CC 2014から。

Illustrator CC以降、ドキュメントバージョンは、同じ「v.17」になっているため、アラートなどがでませんので注意が必要です。

Typekitによって2,450個以上のフォントを使える

ドキュメントを受け渡すとき、ドキュメント内で使用しているフォントを相手先が持っていないとき、フォントを購入してもらったり、アウトライン化する必要がありました。

Creative Cloudメンバーは、「Typekit」サービスを介して、2,450個以上のフォントを利用することができます。Creative Cloudメンバー同士で、Typekitでサポートしているフォントを使う限り、フォントの互換性に関する問題がクリアされます。

さらに、次のような利点があります。

Typekitフォントを追加するには

Illustratorでは、[書式]メニューの[Typekitからフォントを追加]をクリックします。

ブラウザーが起動し、Typekitの設定画面が開きますので、そこで設定します。

Typekitフォントのフィルター

[文字]パネルでフォントリストを表示し、[Tk]ボタンをクリックすれば、Typekitフォントのみが表示されます。

Emigreフォントも!

往年のEmigreフォントなんかも入っています。

ドキュメントを開くときの設定

ドキュメントを開く際に、Typekitのフォントが必要な場合には、[フォントを同期]ボタンをクリックすれば同期できます。

テキスト編集中のスクロール

[手のひらツール]以外のツールを選択しているとき、スペースバーで[手のひらツール]に一時的に切り替えを行うことができまが、テキスト編集時には文字としてのスペースが入ってしまいます。

Illustrator CC以降、テキスト編集時にoptionキー(Altキー)を押すと[手のひらツール]に切り替わるようになりました。

テキスト編集時以外にも統一して使えるように、option+スペース(Alt+スペース)を利用するとよいでしょう。

異体字の変換をコンテキスト表示から

ドキュメント上でテキストを選択すると、異体字の変換候補が表示されます。

候補内にない場合には、[>]ボタンをクリックして[字形]パネルを呼び出すことができます。

オフにできないの?

同様の機能がPhotoshop、InDesignでも実装されており、PhotoshopとInDesignでは、環境設定でオフにできるのですが、Illustratorのみ、オフにすることができません。

[文字タッチツール]を使っているときにも表示されてしまうのは、ちょっと煩雑です。

ダミーテキストの割り付け

Illustrator CC 2017から、文字ツールでクリックすると「山路を登りながら」という8文字のテキストが挿入されます。

従来通り、サンプルテキストなしにしたい方は、環境設定の[テキスト]カテゴリ、[新規テキストオブジェクトにサンプルテキストを割り付け]オプションをオフにします。

なお、挿入される文字列を変更したいときには、「/Application/Adobe Illustrator CC 2017/Support Files/Resources/ja_JP/Lang-Resources/Illustrator.ztx」の9,068行目「”$$$/PlaceHoldeText/Word2=山路を登りながら”」を書き換えます。

デフォルトはオフにし、エリア内テキストにダミーテキストを挿入したいときのみ、[書式]メニューの[サンプルテキストの割付]をクリックして、必要なときのみ挿入するのが現実的な使い方でしょう。

パス/シェイプへのテキストの読み込み

これまでIllustratorでは、ファイルの配置とエリア内文字の入力は別ものでした。

Illustrator CC以降、ファイルの配置でテキストファイル(.txt、.rtf)を選択し、配置したいオブジェクト(パス/シェイプ)のパス上でクリックすることで、一連の流れでテキストを配置できます。

ポイント文字/エリア内文字の切り換えと、エリア内文字の自動調整

「ポイント文字」と「エリア内文字」の切り換えを行うことができるようになりました。

「ポイント文字? エリア内文字?」という方もいらっしゃると思います。

「ポイント文字」は、過去には「テキストオブジェクト」と呼ばれていました。[文字ツール]でクリックして入力するテキストのこと。

「エリア内文字」は、[文字ツール]でドラッグして入力するテキストのこと。過去には「テキストボックス」と呼ばれていました。

なぜか、呼び方が変わったのです。まとめると次のようになりますが、「ポイント文字とポイントテキスト」、「エリア内文字とエリア内テキスト」は、アドビのウェブサイトでも激しく揺れています(つまり、表記が統一されていません)。

変換方法(1)

気を取り直して、変換方法です。

ポイント文字をエリア内文字に変換するには、[書式]メニューの[エリア内文字に切り換え]をクリックします。

エリア内文字を選択しているときには[書式]メニューは[ポイント文字に切り換え]に変わります。

変換方法(2)

ドキュメント上のテキストの右側に表示されるウィジェットをダブルクリックする方法もあります。

注意しなければならないのは、エリア内文字を変換する場合。エリアから文字がオーバーフローしているとき、右下に赤い[+]が表示されます。

この状態で右側に表示されるウィジェットをダブルクリックすると、次のアラートが表示されます。

[はい]推しですが、文字が消えてしまうと困りますので、これは「絶対押したらアカン」ボタンです。

よほどのことがない限り、[いいえ]ボタンをクリックして踏みとどまってください。

なお、「オーバーセットテキスト」とは、「オーバーフローテキスト」のことです。これも、なぜか呼び方が変わりました。

スクリプトの利用も検討

エリア内文字をポイント文字に切り換えるときには、次の問題があります。

イラレで便利さんのエリアからテキスト抜き出しというスクリプトを使うと、文字あふれがあっても消失することはありませんし、また、強制改行も入りません。

ヘビーにお使いの方は、このスクリプトの使用を検討されてみてください。

1分で作るカレンダー

段組設定と[ポイントテキストに切り換え]を使うことで、次のようなカレンダーを短時間で作成することができます。

ご興味ある方は、DTP Transitをご覧ください。

エリア内文字の自動調整

ドキュメント上のテキストの下に表示されるウィジェットをダブルクリックすると、文字の量に応じてエリア内文字の高さが自動的に伸縮するようになります。

[エリア内文字オプション]ダイアログボックスの[自動サイズ調整]オプションと連動しています。

環境設定の[テキスト]カテゴリ内、[新規エリア内文字の自動サイズ調整]オプションにチェックを付けておくと、次から作成するエリア文字の自動調整オプションはオンになります。

スタイルの適用

文字スタイル/段落スタイルを適用するには、パネル内でoption+クリック(Alt+クリック)する必要がありましたが、Illustrator CCでは、クリックだけで適用できるようになりました。

文字タッチツール

文字ごとに位置、大きさ、角度などを調整したい場合、アウトライン化するのが正攻法ですが、フォントやサイズはもちろん、テキストの修正もできなくなってしまいます。

[文字タッチツール]を使って調整すれば、アウトライン化を行わずに編集できます。

ダウングレード保存しても、アウトライン化されずにテキストは保持されますので、「直しに強いデータ作り」という観点から望ましい改良です。

詳しくは、(2)直しに強いデータ作り[複合シェイプ、文字タッチツール編]をご参照ください。

まとめ

テキストまわりだけでも、非常に多くの改良点があり、まとめながら驚きました。特筆すべきは、フォントのフィルター機能でしょう。

最後にそれぞれの機能が、どのバージョンから可能になったのかの一覧表を掲載しておきます。

ぜひ、手を動かして使ってみてください!