今後10年間でデジタルマーケティングはどう進化する?
ほとんどの人は、ウェブやアプリでのプログラマティッグ広告という言葉を聞いたことがあるだろう。ほんの5年前までは手動で行われていた多くのメディア買付を自動化できる技術だ。だが、プログラマティックTVについては、あまり耳にしたことがないのではないだろうか。比較的新しいこの技術は、TV広告スポットをプログラマティック的に売買することを可能にする。
Webやアプリ以外のチャネル(TVなど)への拡大の他にも、プログラマティックの最先端を行くこの技術は、「商品に関連するオーディエンスを選択する」「関連するアトリビューションモデルを適用したキャンペーンの成果報告から知見を掘り出す」など、現在も手動に頼っている作業の自動化に取り組んでいる。
同様の技術は、顧客とのインタラクションをあらゆるタッチポイントでパーソナライズすることを可能にする。このようなインタラクションは、あらゆる種類の画面で起こりうる。ウェブやアプリで従来使用されているデジタルディスプレイでも、空港やショッピングモールのデジタルスクリーンでも。消費者として言わせてもらえば、チャネルに流れるメッセージに整合性がないブランドなど言語道断だ。
マーケティング会議の場で、このところ急に、オムニチャネルが繰り返し議論されるようになったのも頷ける。最近仕事をした銀行関連の顧客は、全支店に掲示するデジタルディスプレイを制作中だが、前を通る顧客によって、ローンやカード、その他の金融商品など、スクリーンに表示する内容を変える。
デジタルディスプレイにはNFCやジオフェンシングを採用し、こんな商品がありますよと通り過ぎる人に伝え、顧客からの問い合わせを促し、フォームに記入させたり、サービスに関する意見を書かせることに成功する。記入内容は保存され、ウェブやアプリなど、他のチャネルでのブランド展開に利用する。その時点からユーザージャーニーが始まるというわけだ。
上記のシナリオはどちらとも、『すばらしい新世界』のようなSF小説の一場面のようだが、これが現実になるのはそう遠くない。ビル・ゲイツもこう言っている。「私たちはいつも、今後数年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけないんだ。」
複数のタッチポイントにユーザージャーニーを設定・管理するコミュニケーションは、デジタルマーケティング 戦略の未来だ。技術は、このようなエクスペリエンスの実現だけでなく、自動化の軸となる。近年、どれだけ多くのAIが各種システムに使われているかを考えると、コンピューターはコンテクスト(文脈)から学び、判断する能力を蓄積している。
機械がマーケティングに関する意思決定を行い始めたら、すなわちキャンペーンの開始や終了、チャネル全体の調整、推奨などの実行が自動化されたら、人間はこの中でどんな役割を果たす余地があるのだろう。
自分が専門家としてデジタルマーケティングを評価するなら、この動きは10年前あたりから加速し、おそらく現在、そのピークを迎えていると考える。デジタルマーケターの役割が今後10年でどうなるかは、誰にもはっきりわからないが、確かに言えることが1つある。
それは、今とはまったく異なった様相になるということだ。数字の照合に頭を悩ませたり、不完全なペルソナに対処せねばならなかったり、チャネルを縦割りに扱うなどということは、確実になくなっているだろう。
※本ブログはアジア太平洋で公開されたAdobe Digital Dialogue記事の翻訳です。