ユーザーテストの主要な5つの手法

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エクスペリエンスデザインの基礎知識

製品やサービスを利用するユーザーのために働く業界にとって、ユーザーテストは重要です。ユーザーテストの主な目的は、デザイン作業に有益な、利用者の観点からの情報を得ることです。ユーザー中心設計は、リアルユーザーのためのデザインに焦点をあて、ユーザーが誰か?製品をどのような状況で使用するか?何を達成しようとしているのか?といった答えを見つけるためにユーザーテストを行います。

UXの研究者達は、多くのテスト手法を開発し、そのアイデアの謙称を行ってきました。施設の整ったラボに呼んで行うテストから、勝手にオンラインで操作させるもの、そしてゲリラテストなどもあります。

この記事ではいくつかのよく使用されるテストを解説します。ユーザビリティテスト、フォーカスグループ、ベータテスト、A/Bテスト、アンケート調査、の5つです。

1. ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストは、実際のユーザーが製品を使う様子をじっくりと観察し、本当に役に立っているかを検証するプロセスです。ユーザビリティテストトは、サイトやアプリを使うユーザーの本当の体験を知るのに最良の方法です。情報を収集する範囲を柔軟に調整でき、他の手法と組み合わせることも簡単です。ユーザビリティテストはUX実践の礎と言えます。

ユーザビリティテストに関する最も重要な判断のひとつは、モデレーター(進行役)を使うかどうかです。

管理されたユーザビリティテスト

管理されたユーザビリティテストは、実際のユーザーからのフィードバックを得ようとする専門家によって実践されます。テスト中、モデレーターはテストの参加者と対峙し(直接、または離れた場所から)、作業を指示し、質問に答え、その場でフィードバックを処理します。テスト参加者と直接やりとりできるのは、この種のテストの強みです。参加者の様子を生で見るのに勝るものはありませんし、何をしているのか確認するための質問もできます。

参考: 管理されたユーザビリティテストを行うときは、これら20のヒント(英語)に従うようにしましょう。

管理されたユーザビリティテストは、通常ユーザビリティラボ内で行われる 著作権 : usabilitygeek

使用に適した状況

管理されたユーザビリティテストは、まだ完全には出来上がっていないデザインがある段階で行うのがお勧めです。テストを行うことで、作業中のプロトタイプに潜む潜在的な問題点を見つけることができるでしょう。参加者のプロトタイプに対する反応を見れば、使い辛い製品をデザインして開発するのに費やしていたかもしれない多くの時間を省略するための基本データを収集できます。

注意点

モデレーターは、参加者が理解を深めるのを助け、作業に集中させ、混乱したら明確にさせることができます。しかし、その際にモデレーターがよく犯す過ちは、参加者に何をするのか伝えてしまうことです。ユーザーの誘導と支援の間には明確な違いがあります。従って、参加者が、作業の手順からは外れずに、一方で自然な体験の邪魔にならない、ちょうど良いバランスを見つけることが必要です。このバランスを正しく保てれれば、もっとも入り組んだ作業からのフィードバックも相応の見返りのあるものになるでしょう。

管理されない、遠隔からのユーザビリティテスト

管理されない遠隔からのユーザビリティテストは、モデレーター無しで遠隔地からテストを行います。迅速に、コストをかけず、しっかりとしたテスト結果を得ることができます。

管理されないテストは、対象としての基準を満たす人がいれば、実質的にいつでもどこでも実施が可能 著作権 : UserZoom

通常、この手法は、自動的に参加者のフィードバックを収集し、参加者の振舞いを記録するテストツールの使用を前提に行われます。

使用されるツールは、参加者に、製品を使って一連のタスクを完了するよう指示し、その体験についての質問に答えるよう求める

この方法には以下の利点があります。

使用に適した状況

注意点

2. フォーカスグループ

フォーカスグループはユーザーと調査員の間で会話する真の方法です。フォーカスグループでは、6-12人のユーザーを集め、UIの機能に関する課題や考慮点について議論します。通常、約2時間ほどかけて行われ、モデレーターがグループの焦点を維持する役割として司会します。

参考: フォーカスグループによる効果的なユーザーテストを行う方法についてはThe Use and Misuse of Focus Groups(英語)をご覧ください

フォーカスグループは、人々が製品について最も重要と考える項目の見通しを提供する

使用に適した状況

フォーカスグループは、システム開発のための強力なツールになります。製品をデザインして公開するずっと前の段階で、ユーザーの必要性や感覚を知る助けになるでしょう。Webサイトやモバイルアプリの開発で、フォーカスグループによりデザインのユーザビリティを評価するのは、正しい使い方ではありません。製品に何を求めているのか、ユーザーの個人的な考えや好みを発見するために使いましょう。

注意点

3. ベータテスト

ベータテストは、完成に近い製品を使い、協力的な個人が提供するフィードバックを確認します。この手法では、実際に新しい製品を利用した後に、使い方を尋ねたり、バグ報告を記入させることができます。

使用に適した状況

このテスト手法は、製品が完成に近い状態で、実際のユーザーからの声を集めたいときに使用すべきです。製品を改良するための見直しに、建設的な意見を集めるのにはベータテストは適した手段です。

注意点

製品を顧客に提供する前に、十分にテストを実施すべきです。当然、ユーザーからのバグ報告よりは、機能や操作性に対するフィードバックを得たいからです。

4. A/Bテスト

A/Bテストは、デザイナーが競合する2つの案からの選択に悩んでいるときに適切なテスト手法です。このテストでは、2種のどちらかを、ランダムに選んだ同数のユーザーに表示し、どちらのグループが特定の目標をより効率的に達成できたかを分析します。

A/Bテストにより、異なる条件におけるユーザーの振舞いを学習する機会を得られる

参考: UXの研究を通じてより強力なA/Bテスト(英語)を行うバリエーションが定義されています

使用に適した状況

A/Bテストは、デザインにおける小さな違いを比較したいときに使います。新しく更新した画面を古いバージョンを比較するのには特に有用です。

注意点

A/Bテストは使用されたバリエーションの中の最適なものを見つけるだけです。テストに使用するバリエーションの選択は慎重に行いましょう。内部の経験や意見のみでバリエーションを選ぶと、最適なデザインを見つけられないでしょう。

5. アンケート調査

アンケート調査は、大量のユーザーからの情報を最小限の時間で集められる手軽な手法です。調査には、Wufoo, SurveyMonkey, Google Formsなどを使用して作成した質問項目を対象に送り、数分で完了する回答を数百件受け取ります。正しく設問すれば、顧客の求めるもの、期待、困っている点を見つけだせるでしょう。

参考: 調査を作成するのにとても役立つ手順を示したガイド(英語)です

使用に適した状況

アンケート調査は、全体的なユーザーの満足度など、定量的なデータの収集による分析に役立ちます。

数百の回答を一覧できる 著作権: SurveyMonkey

アンケート調査は、全くの新機能に対する意見を収集する場合にも適しています。

注意点

まとめ

ユーザーテストはデザインプロセスの重要な一部で、ユーザーがどのように製品に接しているかを理解するすばらしい方法です。これまで紹介したように、異なる目的には異なる種類の手法を利用します。最終的に最適なテスト手法は、製品が何か?それについて何を学びたいか?利用できる時間はどのくらいか?に完全に依存します。従って、製品のユーザー体験に関する最も価値のあるフィードバックを集めるために最適な手段の判断は、テストするあなたにかかっているのです。

この記事はThe Top 5 User Testing Methods(著者:Nick Babich)の抄訳です