Adobe XD Meeting #4レポート:来日中のAdobe XDチームを迎えて
4月20日、大崎のアドビオフィスで4回目のAdobe XD勉強会が開かれました。 最初に、来日中のAdobe XDチームから、製品紹介、初期の頃からのAdobe XD開発の様子、そして、今後の方向性と開発中の機能についての話があり、休憩を挟んで、鈴木氏とスダ氏によるLT、最後は、Adobe XDチームに直接要望を伝える大変貴重な時間となりました。
司会をする勉強会を主催した湯口氏
Adobe XDチームが考えるツールの現在とこれから
今回来日したのは、製品を統括するAndrew、製品マネージャーのJoan、デザインチームのリーダーTalin、それから通訳係としてPriscillaの4名です。
アドビが開発中の新しいデザインツールとして注目を集めているAdobe XD。そのチームの主要メンバー達それぞれの立場から話されたAdobe XDストーリーの中で印象的だったのは、PhotoshopやIllustrator以外の新しい「考える速さでデザインできる」ツールの必要性が繰り返し説かれていたことでした。曰く、
「PhotoshopやIllustratorが登場した頃、今日デザイナーが直面している問題は存在していなかった」(Andrew)
「後から機能は追加されできることは増えたが、他にツールの選択肢が無かったことから、当初の想定を越えた使い方がされてきたという面もある」(Talin)
「以前、アドビが行った調査によると、プロのデザイナーが使っているPhotoshopの機能は、**全体の3%**に過ぎない」(Priscilla)
「画面の中の静的な状態しかデザインすることはできなかった。また、仕様を共有するための作業に多くの時間を費やしていた」(Talin)
すなわち、より多くの役割を求められるようになった現世代のデザイナー達には、本当に欲しい機能をストレス無く使えるイマドキのデザインツールが必要、という訳です。
もちろん、これはAdobe XDチームの視点であって、PhotoshopチームやIllustratorチームも、それぞれがデザイナーに向けた機能を充実させようとしていることでしょう。ですが、XDチームとしては、それらとは異なる領域で強みを発揮できることに確信を持っているようです。その証左として、PhotoshopチームがPhotoshopのデザインにXDを使い始めたことを挙げていました。
開発中のAdobe XDの機能について話すAndrew
Adobe XDの機能については、5つの領域に分けて説明が行われました。覚えておくと、製品の機能を整理したり、開発の方向性を議論するのにも役立ちそうです。
- デザイン(機能の充実)、プロトタイプ(もっと本物っぽく)、共有
- デバイスプレビュー(クラウドベースでも可能に)
- クラウド(ファイルの同期、バージョン管理、チーム内共同作業)
- 関係者レビュー(プロトタイプ共有、コメント)
- 開発者ワークフロー(仕様を共有、拡張用のSDK提供も)
これらの中で、まだ提供されていない目新しい機能は、3番目のクラウドによるドキュメント管理機能と5番目の開発者ワークフローです。以下、簡単に説明しますと、
- クラウド連携は、XDドキュメントをどこからでも編集できるようクラウド上に管理して、バージョン管理機能も持つというもので、既に開発は進んだ状態にあるそうです。タイムラインによる視覚的なバージョン管理は、昨年秋のAdobe MAXで紹介されて以来、心待ちにしている方も多いのではないでしょうか?
- 開発者ワークフローは、デザイナーが開発者のためにスペックを記述する手間を減らすための機能で、こちらは詳細を検討中の段階とのことでした。SDKの提供やAPIの公開も検討されていて、サードパーティーがワークフローを拡張できるようになれば、デザイナー以外の立場の人にも便利な環境が実現されることになりそうです。
最近公開されたばかりのWindows版を使って機能紹介をするJoan
Adobe XD始まりの物語:SparklerからCometそしてXDへ
プロジェクトの始まりから関わっていたTalinによれば、Adobe XDには開発初期から変わっていない理念があります。
- シンプルで(デザインを描く邪魔をしない)、簡単(作業が楽になる)
- つくって、見せて、学ぶ、を繰り返すデザインプロセスに集中できる
どちらもAdobe XDの使用経験がある人には、納得できる言葉ではないでしょうか?こうした考えは、既存のツールを自社の物も他社の物もとにかく試し、それらを実際にユーザーがどのような目的で使用しているか?を調査する中で形成されたものだそうです。
また、Adobe XD自体が、とりあえず「つくって、見せて、学ぶ」の繰り返しから始まった製品とのことで、最初はアドビ社内のデザイナーとプロトタイプを共有し(この頃はSparkler)、次にコミュニティーを巻き込んで(この頃からComet)、2015年のMAXで一般にお披露目され、翌年3月に最初のベータ版の公開(いよいよXDに)と製品化が進められていますが、UserVoice等を使ってユーザーと一緒に学びながら開発する姿勢は、今でも一貫して継続されているそうです。
Adobe XDが現在の形になるまでの背景を解説するTalin(右)と通訳のPriscilla(左)
休憩の後はLTタイム
1時間半の長いセッションの後は10分休憩を挟んでLTタイムです。
一つ目のLTは、株式会社つみきの鈴木慎吾氏から「XDでアプリの画面遷移を検証」というタイトルで、エンジニアからの手戻りが発生した経験から、iOSアプリではモーダル遷移の使いどころに注意が必要だが、静止画だと違和感のある画面遷移に気づきにくいこと、だからプロトタイプを作って遷移を検証することが有効である、というお話でした。
二つ目のLTは、遠隔地からという理由で動画での参加となったコソアドデザインのスダシュウゴ氏から「Illustrator一筋だったWebデザイナーがAdobe XDを使ってみた」というタイトルで、リピートグリッドとプロトタイプモードの使い方が紹介されました。
画面遷移の確認の重要性について語る鈴木氏、スダ氏は録画した動画を披露
最後は、XDチームに生リクエスト
2つ目のセッションは、「UserVoice Live!」と題して、Adobe XDチームに直接欲しい機能をを伝えようという企画でした。事前に集めた要望ひとつひとつについて現在の開発状況を教えてもらいました。
「機能を追加する際は、それがちゃんと使われるために、本当にデザイナーの問題を解決するのかを確認してから公開する。そのため、明確な期日は約束はできないけれど」と前置きした上で、5月から8月の毎月のアップデートで要望の中からいくつも実装される予定であることが明かされました。
ちなみに、この数ヶ月で公開予定とされた機能は以下の通りです。楽しみですね。
- シンボル内の要素にプロトタイプリンク設定
- プロトタイプリンクもコピー&ペースト
- シンボルのスタイルの上書き
- シンボルのCCライブラリ経由での共有と自動更新
- ポイントテキストとエリアテキストの切り替えボタン
(なお、破線をサポートしてほしいという要望に対しては、Illustratorで作成してSVGとして読み込めば、色等を変更して使えるという回答がありました。破線ツールは無くても、Adobe XDとして処理する機能は持っているということです)
質問者にはXD靴下がプレゼントされた