#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.6 イラストレーター JENNY KAORIさん

連載

Illustrator 30_30

Photo: Taio Konishi Photography

Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第6回にご登場いただくのは、イラストレーターのJENNY KAORI(ジェニーカオリ)さん。原宿系ファッションブランド「galaxxxy(ギャラクシー)」のコンペティションでグランプリを獲得し、ドリーミーでちょっとミステリアスなイラストで瞬く間に人気に。それ以降、galaxxxyやWEGOとのコラボレーションアイテムやプライベートワークなどを発表し続けています。JENNYさんとIllustratorの関係とは?

ファッションも絵も大好き!そんな思いをイラストに

galaxxxyは、日本の原宿系ブランド。そのファッションの世界にはアニメや音楽、ストリートウェア、ネットカルチャーの要素が散りばめられている。店内には、ジェニーさんの作品も。

ーークリエイターになったきっかけは?

JENNY:「galaxxxy」の新キャラクター募集のコンペティションでグランプリを獲ったことをきっかけに、お仕事をいただけるようになり、実績がつきはじめてからは自分で企画の持ち込みをしたりするようになりました。それまでは「いつかはイラストを仕事にしたいな」と思いつつ、どうしたらプロになれるのかわからなくて、ただひたすら描いて人に見せるだけだったんです。

ーーコンペはかなり激戦だったのでは?

**JENNY:**6,000通ぐらい応募があったそうです。galaxxxyは昔から好きで、洋服を作りたくて面接を受けたりしていたんですけど、当時は相手にされませんでした。だからコンペには「どうしても受かりたい!」という気持ちで挑みました。今はフリーとして作品を提供したりgalaxxxyとコラボレーションしたり、幅広く活動できるようになったのでありがたいです。

JENNYさんのイメージを実現するツールたち

**ーー普段はどんなツールを使っていますか?
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**JENNY:**今は鉛筆、マジック、ミリペンなどのアナログツールとPhotoshop、Illustratorオンリーです。基本は、鉛筆で描いた絵をスキャンしてパソコンに取り込み、Photoshopで色を塗って仕上げます。Illustratorは、文字入れをするときや、アウトプットするフォーマットに合わせ、必要に応じて。Tシャツ用のグラフィックをつくるときは、必ずPhotoshopで描いた絵をIllustratorでパスに変換させてから納品します。Photoshopで描いた線って、拡大するとボワっとしているじゃないですか。印刷するとそれが影響してチープな感じになっちゃうので、ファブリックに出力するときはIllustratorが欠かせません。

ーー初めてIllustratorを使ったのは?

**JENNY:**小学校2年生の時です。父がグラフィックを作るのが好きで、家にMacがあったんです。でも当時はベジェ曲線がうまく使えず、ペンタブとPhotoshopを使って気ままにお絵描きしていました。本格的に使い出したのは、二十歳ぐらいのとき。「グラフィックで絵を描きたい!」となったときにハウツー本を見て独学で覚えました。高校生のとき、服飾の道に進むかアニメーションを選ぶか迷い、結局グラフィックの専門学校にいったんですよ。それでもファッションへの憧れが尽きなくて、独学でテキスタイルのグラフィックの作り方を勉強しました。

ーーIllustrator Drawは使われていますか?

**JENNY:**はい、最近使い始めました。Apple Pencilの使い心地が良くて、デスクトップとほぼ同等のクオリティのアートワークがつくれます。iPad Proはその場でラフを描いたり、色のイメージを共有できたりするので、打ち合わせのときに便利ですね。

「前はスケッチするときにノートを使っていましたが、Illustrator Drawはノート代わりに使えます」とJENNYさん。

女の子が楽しめるギミックとは?

**ーーJENNYさんの手がけられたグッズは若い女性たちに人気です。
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**JENNY:**中学生から20代ぐらいの女の子たちがTwitterInstagramで私のことを見つけてくれるみたいです。基本的には自分が好きなものしか描かないんですけれど、女の子の好みを意識して描くことも多いですね。たとえばこれは着せ替えのシールがついたiPhoneケースなのですが、着せ替えって乙女心をくすぐるじゃないですか。そういった女の子にうけそうな要素をギミックとして取り入れ、楽しませています。

**JENNY:**私はマイナーカルチャーやアングラ、クラシックが好きなんですけれど、女の子が集まってキャピキャピしてる感じも好きなんです。CYBERJAPAN DANCERSも好きだけど、映画『Eraserhead(イレイザーヘッド)』も好き。可愛いものに「自分はキャピキャピした感じにはなれないんだろうな」という憧れを抱きつつも、鬱屈した雰囲気の文化に魅了されている。私の絵はそういった極端なもののハイブリッドなのかもしれません。絵のなかに、自分しか楽しめないようなネタを入れて、反応の無さを楽しんでいます(笑)。

背景の右上に、映画『Eraserhead』のポスターが!

いい作品ならデジタルもアナログも関係ない

「BLOSSOM BLAST “What It Means to Be a Woman” #IWD2017 BAE day」UltraSuperNew Gallery (Photo: SKiRE) Special Thanks: Bae Tokyo

ーー今までに手がけられたなかで思い出深い作品は?

**JENNY:**先日「BLOSSOM BLAST “What It Means to Be a Woman” #IWD2017」という展覧会のBAE dayというイベントのために、デジタルのデータをB1のパネルにプリントした作品です。デジタルツールで描いた作品をアナログメディアにアウトプットすることになんのメリットも感じていなかったんですけれど、実際にやってみたら予想以上に絵の魅力が引き出されて。グッズは消費されている感がありますが、やっぱり大きい作品や新しいことにも挑戦していきたいし、絵そのものの奥行きやメッセージ、本質で評価されたら嬉しいですよね。

ーーデジタルとアナログ、両方の良さが生かされた作品ですね。

**JENNY:**いい作品なら、デジタルもアナログも関係ないと思いました。今ポピュラーであるデジタルツールで描くことに、今の時代に表現する意義を感じたりします。Adobeがなかったら実現しなかった作品はたくさんありますよね。近い将来、この功績を美術史に残してください(笑)。

First Snow Day in2017 by jenny kaori

ーー作品を手がけられる上で大事にしていることを教えてください。

**JENNY:**徹底的に好きなものしか描かない。好きな色しか使わない。でも、クライアントワークでは売れるものを作ることを心がけています。たとえばピンクはよく売れるのでクライアントワークではよく使います。プライベートワークでは、ピンク以外の色も可愛く見せられるように工夫しています。

ーーこれからのクリエイターに必要なことはどんなことだと思われますか?

**JENNY:**尊敬する方がご存命だったら、話を聞く。先人のクリエーションには、敬意を払う。若い人たちと話していると、作品の元ネタとかルーツを知らない人たちがけっこういるので、絵を描いてるなら昔の作品を知る事も大事だと思います。私は作品のルーツを調べるのが好きで、古きから新しきを知ることも多いです。それから、作品を好きでいてくれる方たちに感謝することも大事にしています。でもそこに甘えないで、新しいものを見せていきたい。それが見てくれている方への感謝になると思っています。

ーーこれから作りたいものは何ですか?

**JENNY:**私の絵のプロポーションのマネキンを作り、インスタレーション作品を作りたいです。マネキンは、海洋堂のフィギュアを作っている原型師のBOME(ボーメ)さんとコラボレーションできたら最高ですね。いつもフィギュアはすごいと思うんですよ。日本の伝統文化とリンクするところもあって。マネキンには、私がデザインした服を着せたい。今はイラストのお仕事が中心ですが、もっとイラストとファッションの線引きを曖昧にしていきたいですね。

ーー今回の作品「Illustratorと私」はどのようなテーマで描かれましたか?

Tokyoに住んでいる渋谷が遊び場の女の子達。いつものように渋谷で皆で集まっておしゃべりしたり、買い物したり。でもいつか、渋谷できっと有名になるあの子。そんな女の子の日常といったテーマで描きました。

ーー今回、作品を制作するにあたり iPad Pro でモバイルアプリに挑戦いただきましたが、いかがでした?

普段は自宅にて線画をアナログ、Photoshopにて着色と編集をして制作しておりますが、
今回は iPad Pro を用いりIllustrator DrawとPhotoshop Sketchのみで従来の作風やディティールのクオリティをキープしたまま制作する事が出来ました。普段は自宅でしか出来なかった作業が、iPad Proを使用する事により場所を選ばず制作できるので電車の中や仕事合間の時間に描いたり塗ったり出来たのが時間の短縮にも大きく繋がりました。

ーー最後に、座右の銘を教えてください。

JENNY:「まあいいか」。

JENNY KAORI (ジェニーカオリ)

専門学校にてアニメーションを学んだ後、2013年、ファッションブランド「galaxxxy」のコンペティションにてグランプリを獲得。イラストレーターとしてのキャリアをスタートさせる。galaxxxy、WEGO、NYLON×MICHIKO LONDONなどとコラボレーションするほか、展覧会でも精力的に発表を続ける。5月19日(金)渋谷のSankeys TYOで開催されるイベントBae Tokyoにライブペイントで参加。

http://kaochanxxx.tumblr.com/
https://twitter.com/jenny_kaori/

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。