#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.11 イラストレーター Mariya Suzukiさん

連載

Illustrator 30_30

photo: Taio Konishi Photography

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Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第11回にご登場いただくのは、イラストレーターのMariya Suzukiさん。ラフなタッチの線画と豊かな色彩感覚で国内外のプロジェクトのイラストや壁画、『FIGAROjapon』の誌上企画「FIGAROjapon x Louis Vuitton」などを手がけ、幅広く活躍されています。奈良県のご出身で、現在は東京を拠点に活動されているMariyaさん。そんな彼女とIllustratorの関係とは?

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表参道にあるカフェ「The Local」にて。顔なじみの店員さんやお客さんと会えるお気に入りの場所です。

物心ついた時から「アーティストになる」と思っていた

——クリエイターになったきっかけは?

小さな頃から絵を描くことや手で何かをつくることが好きで、物心ついた時には「アーティストになる」と思っていました。なぜかそれが自分のやることだと思っていて。父が日曜大工をしているところや、ピアノの調律師の母が絵を描いているところを見て育ったので、両親の影響も大きかったと思います。音楽や美術館も大好きでした。それで早い時期から大学で絵を勉強すると決めていて、カリフォルニアの州立大学のイラストレーション学科に入ったんです。当時はとにかくよく描いていましたね。今とは少し違って、写実的な絵が得意だったんですけれど。

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——何か作風が変わるきっかけがあったのでしょうか?

当時はリアリスティックな絵は得意だったんですけれど、本当はもっとゆるい絵が描きたくて、それがジレンマでした。そんな時にネットでゆるい感じの線画を描くアーティストを見つけて、すごくいいなあと思ったんです。それからタンブラーをフォローし合うようになって、その方と実際にお会いすることができたんですよ。その時にその方が「とにかく早く描く練習をした」と言っていて。私もその言葉に触発されて練習をしていたら、早く描くと描ける情報量が限られてくるので、より的確に、ゆるい絵を描くことができるようになったんです。

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カフェのカップにその場の風景を写しとるドローイングシリーズ。

——大学卒業後、すぐにイラストレーターとして活動を始められたのですか?

そうですね。ずっと絵を描き続けてきたので、いつから仕事になったのかは、あんまり覚えていないんですけれど…デザイン会社からイラストを依頼された時に「あ、ほんまっぽい仕事が来た」と思いました(笑)。

——現在は東京を拠点に活動されています。

大学卒業後に日本へ戻り、しばらくは実家のある奈良に住んでいたんですけれど、東京で活動しているイラストレーターのエイドリアン・ホーガンやルイス・メンドと出会って「Mariyaも東京においでよ」といってくれたので、その後押しもあって2014年から東京に拠点を移しました。東京に来てからいろんな人に出会えて、仕事の幅もぐっと広がりました。

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FIGAROjapon x Louis Vuitton

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Artist Caravan 2015

Illustratorは、最初は苦手でした

——普段使っているツールを教えてください。

アナログはペンと色鉛筆、マーカーがメインです。お客さんの希望によって水彩絵の具を使うことも。デジタルツールはPhotoshopとIllustrator。イラストはデジタルデータで納品するので、PhotoshopとIllustratorは必須です。絵はアナログツールで完成させ、絵をスキャンしてパソコンに取り込み、Photoshopで要らない線を消したり、コントラストを調整してから納品しています。Illustratorはベクターデータでほしいといわれた時や、フライヤーのデザインをする時などに使っています。

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ペンはゲルインクボールペン「ユニボール シグノ」(三菱鉛筆)を愛用。「普通のペンだ、ってよくいわれます(笑)」(Mariyaさん)。

——初めてIllustratorを使ったのはいつでしたか?

大学の授業で習ったのが最初だったんですけれど、最初はすごく苦手でした(笑)。今はフライヤーの文字をレイアウトする時に、めっちゃ助けられています。

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「チェロキー寄席」フライヤー

——手書きの文字がいいですね。どうやって作っているのでしょうか?

まず文字をたくさん書いて、その中からいい文字を選んでスキャナーで取り込み、Illustratorでベクター化して、1文字1文字ガイドラインの上にのせていくんです。Illustratorはパキッと印刷できるのもいいですね。この「チェロキー寄席」のフライヤーの細かい字のところも、1文字1文字配置しています。文字量が多いと時間がかかりますが、結構楽しいです。

——これまでに手がけられたお仕事の中で思い出深かったのは?

TokyoDexという会社と一緒にやった、Expediaのオフィスに壁画を描いた仕事です。Expediaは旅行会社なので旅の絵がいいといわれて、長さ11メートルの壁に世界中の風景を巡っていくようなイメージの絵を描きました。この時は最初にもらっていた設計図の壁の形が、後から違っていたことがわかり、ラフを作り直さなくちゃいけなくなってしまったんですけれど、Illustratorでラフを作っていたので、大分修正が楽でした。画面上でコラージュをするようにレイアウトしたり、大きさを自由に変えられるのがいいですね。壁画を描く時は、Illustratorでラフを作ることが多いです。

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エクスペディア オフィス(2016) 壁画はすべて手描き。現場でプリントアウトしたラフと風景写真を見ながら、その場で描いていった。

その時々の日常をスケッチに落とし込んで

——作品を作られる時にテーマにしていることは?

私にとって、日々身のまわりのものや風景を描くことがけっこう大事で、おのずと「日常」がテーマになっています。私は記憶力が悪いので旅行の後に友達から「どこ行ったん?何やったん?」と聞かれても「何やったっけなー」という感じなんですよ。でも、スケッチブックを開くと旅先で出会った風景や人たちの姿が描かれていて、「そうそうこの日はここに行って、それからここに行って…」というのが全部説明できる。私にとって絵って、「足跡」みたいなものなんですよね。絵を描くことが生活の一部になっています。

——これから手がけたいお仕事は?

いろんな場所へ行き、その場の情景を記録したり、発信したりするということをもっとやっていきたいです。今年の4月にPETIT BATEAU(プチバトー)というファッションブランドの仕事で南仏へ行き、イエール国際フェスティバルの絵を描いてInstagramで発信するということをしたんですけれど、現場でスケッチするのがすごく楽しくて。やっぱりその場の雰囲気に触発されて描くのが、一番おもしろい。写真を見て描く時も、いかに本物を見た時の印象を表現するか、ということに気をつけています。

自宅やカフェで仕事をすることが多いというMariyaさん。カフェもスケッチの格好の場。

——今回、iPad Pro と Illustrator Draw を使って「Illustratorと私」を制作していただきましたが、どのように制作されましたか?

普段からペンと紙を使って目の前に広がる景色をその場で描いているので、「Illustratorと私」でもその手法を使いました。今回の作品は、そのようにしてアナログで描いたものや撮影した写真を Adobe Capture CC でベクター化して、Illustrator Draw上で写真と一緒に加工したり、構図のバランスをみながら描き加えたり色を変えたりしました。シェイプとして取り込んだものは、絵の中でベタ塗りの要素として使いました。さらにレイヤーで分けた画像をコラージュ感覚で動かして遊べ、楽しかったです。左右の街並みは、ひとつの景色のように見えますが、実際は別々に描いた絵をコラージュしてあります。

——iPad Proとモバイルアプリは使ってみていかがでした?

最初のうちは直接スクリーンに描くことになかなか慣れなかったので、ちょっと発想を変えていろんな使い方を試してみました。面白かったのは、その場で撮った写真をベクター画像にできるAdobe Capture CC。アナログにはない早さと気軽さで色々試せるのもいいですね。複数の絵をコラージュしたいときや、素早く構図を調整したいときにとても便利だと思います。ベクターなので大きさや色の変更、それぞれのパーツの移動も簡単で、より多くの可能性を短時間で視覚化できるのもいいと思います。

——最後に、座右の銘を教えてください。

「ポジティブ」。1年半ぐらい前から周りにポジティブな人たちが増えてきて、それまではポジティブ/ネガティブってその人のもっている自然な状態だと思っていたんですけれど、ポジティブな人を見ていて「違う。これはチョイスなんや」って気づいたんですよ。それからポジティブであることを心がけるようにしていたら、どんどんポジティブになってきました。今でも気をつけていないとネガティブになっちゃうので、油断できないんですけれど(笑)。

Mariya Suzuki(まりや・すずき)
http://www.mariyasketch.com/
https://www.instagram.com/mariyasuzuki/

奈良生まれのイラストレーター。カリフォルニア州ロングビーチでイラストレーションを学び、現在は東京をベースに活動中。国内外の多くのミュージシャンや食のプロフェッショナル、本や雑誌など、幅広くイラストを提供している。紙媒体に加え、インテリアのアクセントとなるような壁画も手がける。まちを歩きながら、心に響く形やストーリーのあるものを描くことが好き。

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。