#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.12 グラフィックデザイナー 杉山峻輔さん
Illustrator 30_30
photo: Taio Konishi Photography
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「Illustratorと私」の制作作品
Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第12回にご登場いただくのは、グラフィックデザイナーの杉山峻輔さん。VHSを活用したVJ「VIDEO BOY」としての活動や、「Maltine Records」でのイベントグラフィックやジャケットデザインのほか、でんぱ組.incのアートディレクション、tofubeatsやG.RINAのMVディレクターも担当。“スケブリ”の名で広く知られているクリエイターです。スケブリさんとIllustratorの関係とは?
「スケブリっぽさ」の理由
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スケブリさんの作業環境。IBMのモニタがシブい
**ーーこちらはご自宅兼事務所ですか?
Sugiyama: 最近引っ越したんです。杉並エリアは都心から離れていないのに、自然が多くてお気に入りです。静岡出身なので、自然がないと落ち着かないんですよ。
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**ーー杉山さんがクリエイターの道に進んだきっかけは?
**Sugiyama:**僕が進学したのが、メディアアートなどを教える学校だったんです。そこでMax/MSP,jitterから3DCAD、After Effects、3Ds MAX、あとは木工やら金工までやらされるところだったんですね。その在学時代に僕は「クラブにタダで入れる」という動機でVJをやらせてもらって、次第にクラブイベントのフライヤーのデザインを頼まれるようになったのが、Illustratorを触り始めたきっかけです。
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スケブリさんのビデオ
**ーー今現在使っているツールを教えてください。
**Sugiyama:**一番使ってるのはIllustrator。次がPhotoshopとInDesign。Premiere Pro、After Effectsも使います。大学に置いてあったパソコンに入っていたIllustratorやPhotoshopに触って以来なので、もう13年ぐらいAdobe製品を使っています。
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**ーーグラフィックから映像まで、様々なジャンルのデザインのなかに「スケブリっぽさ」があると思うのですが、その特徴はなぜ出来るのでしょうか?
**Sugiyama:**そのような作家性のようなものがあるとは自分では思っていないのですが、デザインする場合に、自分でルールを決めて、そこからはみ出さないようにする、ということが結構あります。例外処理を行わずに無理矢理押し切ったりするので。
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雑誌「アイデア」 ばるぼら× 野中モモ:日本のZINEについて知ってることすべて 第7回 2000年代のジン パート1―プリント・イズ・ノット・デッド
**ーー自分で何かしらの制約を作っているということですね。コンセプト主義というか。
**Sugiyama:**依頼内容にもよりますが、どちらかというと見た目重視の人間なので、結果的におもしろいビジュアルのものが出てくるのであればそこにたどり着く方法にこだわりはないですね。Illustratorで遊んでいたらできてしまったようなものもたくさんあります。制約をつくって制作した例としては、雑誌「アイデア」でばるぼらさんと野中モモさんの連載のエディトリアルデザインをした時には、グリッド上でどれだけ遊べるかというテーマで作っています。マージンを少なく設定したりして自由度が高くはしてありますが、あくまでグリッド上には乗っているというものです。かなりゆるい制約ではありますが。僕は明日の自分が信用できないので、今日の自分が決めたルール(グリッド)を明日以降の自分が守ってくださいねと言う感じで。
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グリッドのファイル
**ーー他にはどんなルールがあるんですか?
**Sugiyama:**他には、マルチネレコーズのイベントのフライヤーですが、出演者とタイムテーブルを表記しているものですが、合成フォントで”a〜e”や”1〜8”までだけが変なフォントになるような設定を作ったり、先にある部分に文字スタイルを設定しておいて、綺麗に組んだ後にパラメータを全部一気に変えるようなことをしたりしています。
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**ーーユニークなビジュアルですよね。
**Sugiyama:いままで散々マルチネのフライヤーを作ってきたので、「もうそろそろ読めないフライヤーでもいいだろう」と思って提出したら「読めないとまずいっす」と怒られてしまいました。そこで親切設計として2つ並べて、色違いでレイアウトしています。
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マルチネのイベント「Maltine SEED STAGE 01」フライヤー
「Maltine SEED STAGE 02」 のフライヤー
Illustratorで絵を描く理由
**ーーこうしたデザインのもとには、スケブリさんがIllustratorでドローイングをされている作品があると思うのですが、そもそもどうしてIllustratorで絵を描くのですか?
**Sugiyama:**理由は、単純に絵が描けないからで、自分の手で描く線を信用していないんです。でもベクターならやり直しや微調整があとから可能なので。あとは「効果」などで変な結果になるものを見つけたりするのが楽しいですね。例えばこれは10角形を点線にしたものに旋回をかけるなどしていますが、回すたびによくわからない見た目になっていいなと。それがすごく綺麗だし、ゲームで裏ワザを見つけたときみたいな気持ちになります。
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**ーーイラストの制作時間は?
**Sugiyama:**ひとつ15分〜2時間ぐらいです。大学卒業後、実家にいたときに何かしなきゃという危機感はあったのですが、そもそも依頼してくれる人も少ないので、2年間こういうものばっかり作っていました。最近はそういう時間を取ることが難しくなってきていますが、普段仕事中にできてしまったものなどアートボードの外に置いておいて、また別の仕事で使用したりする例もあります。
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Illustrator Draw
**ーーIllustrator Drawは使ってみていかがでしたか?っていうかペンじゃなくて手で描くんですね。
**Sugiyama:**僕は普段もマウス派なので、ペンは直感的すぎました。筆圧や速度も切ってますし。そもそも絵を描かないからだと思うんですが。ハンドルなどで微調整できるようになると個人的にはうれしいですね。
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ーー今回の作品「Illustratorと私」はどのように作られましたか?
Illustrator Draw で指で描いたものをIllustratorに持ってきて細部を調整しました。Illustrator Drawはサクサク動くのがよかったです。ざっくりとしたラフなどを作るのに向いていそうだなと思いました。ペンツールやハンドル的なものもあると、ディテールまでいじれるので、個人的にはかなり使いやすくなるなと思いました。
ーー最後に座右の銘を教えてください。
**Sugiyama:**こだわらない。
ーーこだわらないんですか?
**Sugiyama:**こだわっちゃって自分がそれに縛られて不自由になってしまっては大変じゃないですか。あと自分が飽きっぽいので、何か背負っちゃうと後々苦労しそうで。
ーーありがとうございました。
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杉山峻輔
1985年静岡県生まれ。大学卒業後、フリーランス。2010年『SHIFTカレンダーコンペティション2010』のカバーに選出。でんぱ組.inc「WORLD WIDE DEMPA」のアートディレクション、G.RINA「愛のまぼろし feat. tofubeats」のMV制作、tofubeats「No.1 feat. G.RINA」のMVを細金卓矢と共同で監督するなど、グラフィックデザインを中心に、WEB,書籍、映像など様々な分野の制作を行う。
◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。
本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。