弁護士 水野祐さん×KDDI知的財産室 大野拓哉さんが語る、ストックフォト著作権セミナー #AdobeStock
Adobe Stock アップデート
現在、9000万点のロイヤリティフリーの画像を提供するAdobe Stock。Adobeの主要アプリと密接に連携される唯一のストックフォトサービスだ。一昨年から始まった時は4000万点のアセットだったが、世界中のコントリビューターが毎日4〜5万点を投稿し、ついに9000万点を突破した。本日は、2017年06月28日(水)に品川で行われた『「安全」に使って「安心」できる、ストックフォト著作権セミナー』をレポートする。登壇したのは、クリエイティブやイノベーション領域での活動で注目を集めているシティライツ法律事務所の水野祐弁護士と、Adobe Stock導入企業であるKDDI株式会社の知的財産室 知財渉外グループリーダー大野拓哉さんだ。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_2017-06-28-15.59.32.jpg
左:KDDI 大野拓哉さん、右:水野祐弁護士
ストックフォトのユーザーといえばデザイナーなどのクリエイターがまず思いつくが、実は一般企業でも導入して成功している事例がある。KDDIもその一社だ。同社では社員に著作権についての啓発活動を行っており、さまざまな業務用資料を作る際には知的財産室が社員の質問を受けてきた。しかしインターネットで画像が氾濫する時代に、「ここまではOK、ここからはNG」と線引をすることは難しい。そこで著作権について安心して使えるAdobe Stockを導入したそうだ。
大野:インターネットからダウンロードした素材も、社内資料だったら「検討の過程のための利用」が適応される場合もありますが、社内のイントラには上げられない。企業での著作権問題は、社員への啓発活動と仕組みの両輪が必要になるんです。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_20170628-CCE-Design-Seminar5.jpg
Adobe Stockは、ストックフォトの「マーケットプレイス」。コントリビューター(素材提供者)がマーケットプレイスに投稿し、利用者が購入する。ここで重要なのは、著作権はコントリビューター(撮影や制作したアーティスト)に帰属していること。ロイヤリティフリーといって、ライセンスによって、利用者が使える幅も変わってくるのが特徴だ。画像の著作権に関わるトラブルが社会の注目を集めるなか、水野弁護士はどのように考えているのだろうか。
水野:インターネット以降、世界中でいろんなものづくりがされていく中で、トラブルが起きやすくなっています。昔から、かたちが似ているクリエイションはありましたが、国や文化圏が違うと眼につく機会がなかった。法律的には、偶然似たものは著作権侵害にならず、見て作られたということを立証しなくてはならないんですが、今はインターネットによって昔は見つかりにくかったものが発見されやすくなったということでしょうね。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_2017-06-28-15.48.07.jpg
モデレーターのアドビ栃谷宗央氏
水野:これからは、”似ているものがあるのは当たり前”ということを前提としたものづくりが求められるでしょう。プロセスとか過程、ストーリーが違うものは”パクリ”とは違うということを社会で認識していかなくてはいけない。実は東京オリンピックのエンブレムのデザインも、法的には問題ないのに企業にとってのレピュテーションリスクが高いということで使われなかった。それを社会がどう乗り越えていくのかが課題になると思います。
「レピュテーションリスク」とは、企業に対する否定的な意見が広がることで、企業の信用やブランド価値が下がり、損失が生まれるリスクのこと。著作権の問題は、企業のレピュテーションリスクに関わってくる。
大野:いま、コンプライアンスやレピュテーションにはすごく敏感な時代です。社内でも画像の著作権関係の質問は多く、Web上のフリー素材の細かい使用条件を社員がいちいち確認できるかというと難しい。あれもこれも著作権侵害になってしまう、という状況で、啓発活動と並行して実効性がある「安心して使えるもの」を社員に提案しなければならないということでAdobe Stockを導入しました。導入後は本来の業務に集中できるようになり、業務効率も上がっていると思います。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_20170628-CCE-Design-Seminar1.jpg
業務の効率化といえば、2017年6月のアップデートで、Microsoft Office PowerPoint内から直接Adobe Stockにアクセスできるようになった。”Adobe Sensei” のマシーンラーニングを活用したビジュアルサーチを使うことで、イメージに近い画像を利用し、最適な素材を簡単に探すことができる。PowerPoint用アドインは無償。また検索機能がさらに充実し、「絞り込みフィルター」も発表された。これは「被写界深度」や「色の鮮やかさ」から画像をサーチ出来るという新しい試みだ。詳細はこちら。
そして登場したのは、著作権への興味をはかる問診票。トラブルは起こった後ではなく、起こる前に防ぐもの!是非クリエイターの皆さんも参考にされてほしい。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_20170628-CCE-Design-Seminar4.jpg
最後、水野弁護士から、クリエイターや企業がAdobe Stockを使う、もうひとつのメリットについてのお話が。
水野:著作権のトラブルの場合、素材の入手作情報など、創作のプロセスを残して置くことがすごく重要になるんです。Adobe Stockで作れば、履歴が残るので、創作プロセスを示す価値を持ちますよね。弁護士にとっては、その証拠があるとすごくありがたい。裁判での訴訟でも有力な証拠になります。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/th_20170628-CCE-Design-Seminar7.jpg
またAdobe Stockのエンタープライズ版では、ダウンロードした素材を社内で共有できるというメリットもある。「会社で働くクリエイターも、Adobe Stockから自分の作品を発信するとさらによいエコシステムが生まれるのでは」という提案も生まれ、会は幕を閉じた。
https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2017/06/st.jpg