ウェアラブル端末向けアプリをデザインするときに覚えておきたい11項目
エクスペリエンスデザインの基礎知識
ウェアラブル端末はiPhone以来の注目のテクノロジーかもしれません。現在6人に1人の消費者が所有し、ウェアラブルを身に付けています。16歳から24歳の70%以上がウェアラブル端末を購入したいと考えています。今日の市場には数百万のウェアラブル端末(腕時計、リストバンド、眼鏡、イヤホン、指輪など)が存在し、更に多くの端末が登場しようとしています。こうした端末のためのデザインをしたことがなかったとしても、あなたがデザイナーならおそらく時間の問題でしょう。
しかし、ウェアラブルは、デザインに関して固有の課題を提示します。デバイスは様々な制限を持ち(極小画面、限られた情報量、少ないバッテリー)、ユースケースも異なり、つまりは異なるデザインルールが求められることになります。
スマートフォンのために考えられたデザインルールが、スマートウォッチの小さな画面でも有効とは限らない
この記事では、ウェアラブル端末のためにデザインするとき、覚えておくべき11の原則を紹介します。
1. 一瞥したときの分かりやすさ
ウェアラブル端末のデザインに関して、パッと見たときのわかりやすさほど語られてきた言葉は無いでしょう。一瞥性は、ごく短い時間のインタラクションのためにデザインされた情報を対象にする言葉です。最初にこのコンセプトが登場したのは、画面のない、光を使ってユーザーに状況を知らせるフィットネストラッカーでした。
情報の提供を光に頼るフィットネストラッカー。 画像著作権: Digitaltrends
スマートウォッチでは、この用語は少し異なった使われ方をしています。視覚的なフィードバックの簡素化という側面よりは、ユーザーに何が本当に必要かを、常に見つけ出すことに重きがおかれれます。
インターフェースを整った読みやすい状態に保つ。 画像著作権: Google
ウェアラブルの限られた貴重な画面には、最も大事な情報のみ表示するよう注力することがきわめて重要です。スマートウォッチのコンテンツは、ユーザーが5秒以内に理解できるものであるべきです。
スマートウォッチは、腕をひと目見るという単純な使われ方が基本。情報はその一瞬のためにデザインする必要がある。OnefootballのApple Watchアプリは、開始時刻、現在のスコア、経過時間をひと目で伝える良い例
2. 状況に合わせたデザイン
デザインの根幹となるのはユーザーが画面を見た瞬間の状況であり、そこから提供する情報を特定すべきです。デバイスに組み込まれているセンサーを活用して、ユーザーの状況を判断するよう試みるのは良い考えです。例えば、ユーザーが位置情報サービスを使用しているときは、ユーザー体験の拡張に利用できるかもしれません。
タイムリーな情報は、ウェアラブルのUIを有効なものにする。Android Wearの Google Nowは、状況を分析して、その時その場に適した情報を提供する
3. 軽量なインタラクションデザイン
デスクトップやスマートフォンのアプリであれば、長く操作が継続する場合もあるでしょう。しかし、ウェアラブルの体験は可能な限り短くすべきです。もし、インタラクションに10秒以上かかるなら、インターフェースの見直しが必要というサインです。インタラクションを最小に、インターフェースは簡素にし、表示はユーザーの作業完了に本質的なものだけに限定します。例えば、ユーザーがスマートウォッチからメッセージに返事をするとき、文字をタイプさせるのは避けるべきです。すばやく返信できる手段を提供し、長い返事が必要な場合のためには音声を入力する手段を用意します。
文字入力はスマートフォンでも十分に困難であり、スマートウォッチの画面では更に無理がある。スマートウォッチの画面サイズは、ひとつのジェスチャー(タップまたはスワイプ)以上に向かない
4. 簡潔さを保つ
有名なKISSの原則は、デスクトップやモバイルのUIより、おそらくウェアラブルの領域でより意味のあるものでしょう。たくさんの機能や情報をウェアラブルに詰め込みたいという欲望に負けてはなりません。以下のルールに従うべきです。
- ひとつのユースケースに集中し、ユーザーがそれをすばやく完了できるような効率の良い手順をつくる。ユーザーに必要以上の操作や情報を配置すると、ユーザー体験の邪魔になる
- インタラクションは可能な限り簡単に。ユーザーが一時に一つの事だけ見て、操作に集中できるようにする
Shazamは、単一のユースケースに焦点を当てたアプリの例。タスクの完了に必要な手順数を削減した
5. ミニマリズムを明確に意識したデザイン
ユーザーにとって、画面に表示されるあらゆるものを読むことができ、動いている最中でも容易に操作できることは必須です。ミニマルデザインは、ウェアラブルとは最高の相性です。色もタイポグラフィもすべてシンプルで分かりやすくあるべきです。
- はっきりとしたコントラスト
コントラストは小さな画面ではとても重要。瞬時に見て読み取るのを容易にするため、個々の要素をはっきりと示し、要素間を十分に区分けする - 簡素なタイポグラフィ
ウェアラブルのタイポグラフィは簡素にする。線幅が一定のサンセリフはもっとも読みやすい選択の一つ。 - 要素間の十分な隙間
小さな画面での「空白」はデザインの良し悪しを決める。多すぎる空白はコンテンツの場所を無くしてしまうが、少なすぎる空白はコンテンツを読み難くする。機能とユーザビリティーに役立つ適切なバランスを見つけなければならない。
これらをすべてこなしたなら、小さな画面で見栄えの良い(そして、できれば使いやすい)何かが出来上がることでしょう。
Runtasticは、暗い背景色の上に、見て分かりやすい明るい色相の色を使っている。要素間のコントラストは、可読性と操作性に貢献している
6. 割り込みを避ける努力をする
スマートフォンでも通知や警告を邪魔に感じることはあるものです。もし、身に付けたウェアラブルデバイスが頻繁に注意を惹こうとするならば、人々は使用を止めるかもしれません。ポケットの中のデバイスが振動するのと、肌の上で直接振動するのは、全く異なる体験です。
ウェアラブルを一日中身に付けていると、通知を無視できなくなる。 画像著作権: niemanlab
以下は、ウェアラブルにおける通知をデザインするための、いくつかの基本的なルールです。
- ウェアラブル経由でユーザーに通知される情報は事前に選別する。通知の頻度は最低限に抑え、装着しているユーザーを絶えず邪魔してイラつかせることの無いように
- 通知が本当に必要になったときは、通知の品質に配慮する。中断を意味のあるものにするために、ユーザーが実際に必要とする情報を理解する。適切なタイミングで求められている情報をプッシュするのは、優れたウェアラブルアプリになる鍵
- ユーザーに、通知を受け取るタイミングやその種類を選べるようにし、必要に応じて簡単に通知を停止できるようにする。また、通知方法も選択できるように(振動と画面の発光の組み合わせ、あるいはどちらかだけ、のように)
7. プライバシーを優先する
ウェアラブルの優位な点は、スマートフォンをはじめ他のどんなモバイルデバイスよりもユーザーに物理的に近い場所にあることです。同時に、個人的な目的で使用され、身内との会話などプライベートの情報を表示するという面も持っています。ポケットに収まるスマートフォンとは違って、ウェアラブルは周囲の目に入る場所にあります。デザイナーは、よりプライバシーを重視する方向で選択を行うべきです。以下に具体的な例を挙げてみます。
- デバイスの向きを意識し、内向きであれば個人的な情報を表示、外向きであれば何も表示しない状態を標準とする
- 通知のときは、まず振動で知らせ、次に情報を表示する
8. 見えないインターフェースを活用する
“the best interface is no interface(最高のインターフェースは存在しないインターフェース)”は、特にウェアラブルに関して当てはまります。視覚的な要素へのこだわり過ぎは、デザインを制限します。テキストメッセージ入力やスケジュールの設定に音声を使ったり、音や振動を使ってユーザーに通知する手段を検討しましょう。
9. 他のデバイスとの連携は重要
ウェアラブルは孤立した存在としてデザインするべきではありません。ウェアラブルデバイスと、ユーザーが保持している他のデバイスを統合させることは重要です。そして、ウェアラブルの強みを生かしましょう。例えば、スマートウォッチで血圧と心拍数を計測し、収集したデータの確認や分析をスマートフォンで行うといった連携が考えられます。
画像著作権: UX Agency Ramotion
10. オフライン時の使用を考慮する
他のデジタル機器と同様に、ウェアラブルもネットワーク接続の問題が起きることでしょう。主要な機能はオフラインで使えるように設計し、それが不可能な場合は、少なくとも何が起きているのかを説明するよう配慮すべきです。
Apple Watchはインターネット接続がないと地図を読み込むことができない
11. 実現性を確認する
ウェアラブル向けのアプリをデザインする際、実行環境の機能と制限を考慮することは重要です。SDKでできることや、デバイスの持つ物理的な機能を十分に研究しましょう。事前学習無しで始めたら、実現不可能なデザイン案に終わってしまいかねません。例えば、Apple WatchのTo-Doアプリに下の例の様なアニメーションを使うのはすばらしいアイデアのように見えますが、Apple WatchのSDKでは実装できない動きが含まれています。
画像著作権: Jakub Antalík
まとめ
この記事で紹介した原則は、単純すぎて退屈なものに感じられるかもしれません。しかし、デバイスの大きさに関わらず、実際に使えるアプリをデザインするには役立つものです。すべてのインターフェースは、ユーザーが望む行為をすばやく簡単に行う助けになるようデザインされるべきです。もちろん、これは、ウェアラブル以外のすべてのインターフェースに対してもいえることですが。
※ この記事はDesigning for Wearables: 11 Things To Keep in Mind(著者:Nick Babich)の抄訳です