#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.16 グラフィックデザイナー 三重野龍さん

by 宮越 裕生

Posted on 07-11-2017

連載

Illustrator 30_30

photo: Taio Konishi Photography

「Illustratorと私」

Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第16回にご登場いただくのは、グラフィックデザイナーの三重野 龍さん。赤塚不二夫・マンガ大学展のロゴデザインやショップ&ギャラリー「VOU」のグラフィックデザインを手がけるほか、ペイントユニット「uwn!(うわん)」の一員として活動するなど、幅広く活躍されています。三重野さんとIllustratorの関係とは?

学生時代から続く、誰かと何かをつくる仕事

——クリエイターになったきっかけは?

大学へ進学する際に「美大でもいくか」と思い立ち京都精華大学のグラフィックデザインコースへ進んだんですけれど、そこでいい仲間たちと出会えて、ライブペインティングを始めイベントに参加したりしていました。ライブペインティングを一緒にやっていたイラストレーターの岡村優太君と看板屋兼グラフィックデザイナーの廣田碧さん、コンタクトゴンゾ(※1)の松見拓也君とNAZE君、「VOU」をやっている川良謙太君なんかとはよく一緒にいました。楽しかったですね。

グラフィックデザインを本格的にやろうと思ったきっかけは、デザインなら誰とでも関われると思ったからです。僕はもともと絵を描いていたんですけれど、自分には無理だと思い始めて、それでも誰かと何かをつくる仕事をしていきたいと思った時に、グラフィックデザインなら皆の力になれるし、自分にもできるんじゃないかと思ったんです。絵を描いていたせいか、今でもコンピューターの画面を絵だと思って作っているところがありますね。

※1 コンタクトゴンゾ:肉体の衝突を起点とする即興的なパフォーマンスや映像、写真作品の制作、マガジンの編集などを行う集団/彼らが実践する方法論の名称。

bonna nezze kaartzによる展示「現代の奇書となりますように」(2016年 京都、Division)

——当時の仲間たちとは、今でも活動を?

写真家の松見拓也君、詩人の野口卓海君と月に1回『bonna nezze kaartz (ボンナネッツェカーツ)』という紙媒体を作っています。予算は5,000円以内、毎月50部と決めて、自分たちへの宿題のような感じで。また、VOUには当時の友人たちが大勢関わっていて、僕はグッズのデザインなどを担当しています。

「bonna nezze kaartz」写真家の松見拓也、デザイナーの三重野龍、詩人の野口卓海による紙片。現在2年目になるが、一度も欠かさず発行している。

bonna nezze kaartzによる作品『bonna nezze kaartz 号外3』(2016)京都のアート&カルチャーを発信しているホテル&アパートメント「ホテルアンテルーム京都」に展示されている。

——現在も京都を拠点にされていますね。

デザイナー1人、カメラマン3人とオフィスをシェアしていて、僕はここに住んでいます。ほとんど部室ですよ(笑)。打ち合わせの場所として使ったり、飲み会をしたり、人が集まりやすいのがいいですね。

マンガの影響がデザインに

——デザイナーとしてやっていこう、と思うきっかけとなったお仕事は?

卒業直前に作った「赤塚不二夫・マンガ大学展」(2011年 京都国際マンガミュージアム)のグラフィックですかね。赤塚プロの素材やマンガミュージアムに所蔵されているイメージを自由に使っていいと言われたので、キャラクターのベクター素材をバラバラにしてロゴをつくったり、4枚でひとつの絵になるちらしをつくったり、とにかく自由にやらせてもらいました。大学の時によく手塚治虫さん辺りのマンガを読んでいたのですが、僕のデザインにはマンガの影響があるかもしれません。

赤塚不二夫・マンガ大学(2011年 京都国際マンガミュージアム)

デジタルとアナログをバランスよく

——初めてIllustratorを使ったのはいつでしたか?

大学の授業で、CS 4だったと思います。初めてさわった時は難しいと思いました。ベジェ曲線の描き方なんかは授業で習いましたけれど、ちゃんと使い方を覚えたのは卒業してからです。仕事で必要になる度に新しいことを覚える、みたいな感じで。今はデジタルとアナログ、それぞれのいいところをバランスよく使えるようになったと思います。

——普段つかっているツールを教えてください。

デジタルツールはIllustrator、PhotoshopInDesign。アナログツールは、その時に応じて色々。ロゴをつくる時は、基本的に手から始めます。ペンで描いたものをスキャンして、Illustratorでライブトレースして修正して、また手描きで修正して、ということを繰り返したりします。好みの曲線を描く時は、マウスを通すより手の方が思ったように描けるんですよね。ペンタブレットは使ったことがないです。

字の形をした“もの”を作っている

——デジタルツールによってクリエイティビティが広がったと実感したことは?

クリエイティブチーム「CEKAI(せかい)」の方たちとよく映像を作っているんですけれど、『彦根に集え!』という彦根城のプロモーションムービーでは、僕がIllustratorで作った文字を彼らが動かしてくれて「おおーっ」となりました。そういうことを実現できるのがデジタルの面白いところですよね。僕は普段から「動き」や「レイヤー」についてよく考えているので、打ち合わせもすごく話が早かったです。

——「動き」について考えているというのは、どういうことでしょうか?

平面というよりも、字の形をした“もの”を作っているような感じなんです。一つの文字が複数のパーツからできていてバラバラに動かせるようなイメージなので、動画に転用しやすいんだと思います。Illustratorは「配置」しながら作っていくソフトなので、ものを動かしている感覚がありますね。

クリエイターがちょうどいい距離感で集う、VOUの仕事

——これまでに手がけられたお仕事で思い出深い仕事は?

現在進行形なんですけれど、やっぱりVOUの仕事には思い入れがあります。大学を卒業して4年ぐらい経って、また皆とやれるようになったというのは嬉しいですよね。そういう場所がひとつあることでお互いに補い合えるし、動きやすくなる。かといって癒着しているという訳でもなくて「何かあったら一緒にやろう」という感じが気持ちいいな、と。今日もこれから「Get湯!PARTY」というイベントがあって、遊びに行くんですよ。

VOUの「きょうと」キャップ。発売後、「きょうと」を「ぎょうざ」と読み間違える人が続出したことから、誤字シリーズ「ぎょうざ」キャップも生まれた。

——仕事をする上で大事にされていることは?

うーん…頼んでくれた人のリクエストには応えたいし、自分がやりたいこともあるので難しいんですけれど、「今こういうことをして面白いかな」ということを気にしています。そのデザインが綺麗に見える方法とか、よく見える方法をいろんな角度から見てバランスをとりつつ、今これをつくることがデザイン的に面白いかな?、と。

庭劇団ペニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」フライヤー(2016年、京都国際舞台芸術祭実行委員会)

それから、いつも仕事を頼んでくれた人が一番喜んでくれたらいいなと思っています。僕には不特定多数の人を喜ばせたいという気持ちがあまりないんですよね。だから、VOUの仕事に関わり、初めてグッズを手がけたんですけれど、何が売れるのか全然わからなくて。それで結局「好きにしよう」と思いました(笑)。

——今回はiPad Pro使って「Illustratorと私」を作成頂きました。いかがでしたか?

普段やっているレイヤーの作り方や、文字のテクスチャーのつけ方など、その時に応じて使うことで非常に役立ちそうだなと思いました。デジタルとアナログの中間のようなものだと思うので、手書き → Capture CC → Illustrator Draw → Illustratorの流れで作る方法をもう少し試してみたいなと思っています。ラフのイメージ作りにも便利なんじゃないかなと思いますね。

——今後手がけたいお仕事は?

動物が大好きで、図鑑のデザインを手がけたいです。意外と痒いところに手が届く図鑑というものがない気がして。「その角度じゃなくて、もうちょっとこっちの角度から見たいねんけどな」とか(笑)。子供の頃、誕生日プレゼントにリクエストするぐらい動物図鑑が好きだったんですよ。ずっと憧れみたいなものがあるのかな。

「芸術植物園 BETWEEN BOTANY AND ART」

——最後に、座右の銘を教えてください。

「無理しない」。

三重野 龍(みえのりゅう)

http://mieno-ryu.com/wp/
https://twitter.com/ryumieno1988

1988年、兵庫県生まれ。2011年京都精華大学グラフィックデザインコース卒業。大学卒業後、京都にてフリーのデザイナーとして活動開始。現在までなんとか生き延びている。

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

Topics: クリエイティブ, グラフィックデザイン

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