企業の競争力を高める働き方改革、プロジェクト型企業への移行と「適材適所」という考え方の大きな変化 #AdobeSign

連載

働き方をデザインしよう

働き方改革が企業にとって喫緊の経営課題になっている。多くの経営者層が同じ問題に取り組みつつも、その企業に合った解決策を模索している。アドビが開催したセミナー「Future of Work 2017はたらく力を最大化する~生産性と満足度の向上を両立させる、これからの働き方~」では、様々な業界から20名のエクゼクティブが参加し、新しい働き方やダイバーシティの取り組み、労務管理の課題に至るまで活発な議論を展開した。

2035年の働き方とは

東京大学大学院 経済学研究科・経済学部教授で、厚生労働省の「働き方の未来2035」を執筆した柳川 範之氏によると、2035年頃には、働き方のほか、企業のあり方や産業構造までが変化し、労務管理のあり方や人材教育が大きな課題になるという。柳川教授は力説する。「テクノロジーの進歩、例えばクラウドソーシング、クラウドワーキングなどが進み、昔のように物理的に同じ時間、場所で全員が仕事をする概念は無くなり、その結果、時間と空間に縛られない働き方が主流になります。一方でUberやAirbnbのように既存の産業構造や垣根までを破壊する企業が現れ、新しい産業分野が次々に生まれます。特にAIの急速な進展は、従来の業務を大きく変える可能性があります。」

2035年の働き方と社会
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/2-1.png
AI・ITの急速な進展
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/%E7%84%A1%E9%A1%8C-4.png

柳川教授によると、企業はこれらの大きな変化をチャンスとして捉え、これに迅速かつ柔軟に対応できる小さな組織、あるいはその集合体に変わっていくという。「ビジネス毎にその都度編成されるプロジェクト型企業が増えると考えています。そこで経営に求められるのは業務の再編成能力です。企業と働く人の関係がプロジェクト単位になり、兼業、副業が当たり前になります。また、技術革新に合わせてどこまでをAIに任せ、どこまでを人で行うかの判断が重要になってきます。」

プロジェクト型企業では今までの適材適所いう概念がまったく変わるという。適所が必ずしも社内にあり続けるとは限らないからだ。柳川教授は、将来の企業の人材教育にあり方を次のように予測している。「技術革新が進むにつれ、新しいスキルが必要になり、今まで以上のスキルアップやキャリアチェンジのための支援と、変化に合わせた能力開発が課題になります。自律的、主体的に働ける人をより多く持つことが企業の成功のカギになります。一方で盲目的に働く社員の業務はAIにとって代わることになるでしょう。」


https://blogs.adobe.com/japan-conversations/files/2017/07/%E7%84%A1%E9%A1%8C-1.png

東京大学大学院 経済学研究科・経済学部教授 柳川範之氏

カゴメの生き方改革

働き方を改革するということは社員にとっては生き方の改革そのものであり、社員が活き活きと働ける環境を企業が用意することこそ、企業の競争力を高める源泉になる。それはカゴメの企業理念そのものだ。カゴメ株式会社 執行役員 経営企画本部人事部長 有沢正人氏はカゴメに入社後、ダイバーシティ推進のための先進的な取組みにより、新し時代の働き方を実現しようとしている。ダイバーシティの核に据えたのが、「女性活躍」と「介護」だ。全社員向けには社内報で社長からのコミットメントを表明し、定期的にダイバーシティ特集を連載。また、社長を委員長としたダイバーシティ委員会を発足し、全社員に会社の本気度を伝えた。女性従業員向けにはワーキングマザーおよび女性管理職向けに専用サイトを設置し、ネットワーキングを推進、そのコンテンツをワークライフセミナーやマネージメント研修などに活用した。役員や管理職向けには、社外取締役や専門家を招いた勉強会の開催、イクボスの推進などを行った。

女性向けネットワーキング
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/2-2.png
ダイバーシティは経営戦略そのもの
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/%E7%84%A1%E9%A1%8C-5.png

これらのダイバーシティ推進に向けた取り組みを通じて有沢氏は強調する。「カゴメの推進するダイバーシティは単に女性の活躍だけを謳ったものではありません。男女に関係なく長く活き活きと働き続け、休職や時短のハンディを乗り越えてキャリアを積み、自然にリーダーシップが取れるような組織にしていくことです。それは誰のためでもなく自分の成長のためにやっていくものだと思います。新しい価値観を取り入れることで人は成長し、さらに異なる価値観を受け入れることでイノベーションが生まれます。それが将来の成長や、ひいては社会に貢献する価値を生み出す強いカゴメを作ることだと信じています。」

カゴメ株式会社 執行役員 経営企画本部人事部長 有沢正人氏
https://blogs.adobe.com/japan-conversations/files/2017/07/%E7%84%A1%E9%A1%8C-2.png

カゴメ株式会社 執行役員 経営企画本部人事部長 有沢正人氏

デジタル化がもたらす働き方改革

アドビ は、デジタルトランスフォーメーションは新しい働き方や社員のモチベーションアップを生み出しやすいと強調する。「例えば、創業290年の英国メガバンクRBSはローンの申請プロセスのデジタル化に踏み切り、申請時間を14日から4時間に短縮し、業務プロセスを劇的に改善しました。RBSが開発したシステムは「Digi Doc」と呼ばれ、電子サインを含むデジタルドキュメント処理のクラウドソリューション「Adobe Document Cloud」が連携しています。仮に未成年者が口座開設の申請を行う際、保護者の承認サインが必要になりますが、その認証プロセスのデジタル化にAdobe Signの電子サインの機能を活用しています。また、申請時に自身のパスポート等の身分証明写真をオンライン上でアップロードする際に、自動的に画像の文字認識を実行し、50以上の項目にわたって本人の身元審査を行う仕組みとなっています。

RBSの事例効果
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/%E7%84%A1%E9%A1%8C-3.png
キーポイント
https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/files/2017/07/2.png

RBSはこのシステムを4名のチームでわずか16週間のアジャイル開発で立ち上げました。実施できた成功要因は、優れた顧客体験を提供するという企業理念と、それにはデジタルの力を活用する事をRBSのデジタルチームが理解していたからです。これは新しい取り組みではありましたが、顧客体験の向上というミッションに対して失敗を恐れず、チャレンジする企業文化が重要だと聞いています。テクノロジーによって生産性を向上し、本業、つまりその先にいるお客様に集中できた結果、チームメンバーが生き生きと働ける環境を創り出すことができたのです。」