PDF 2.0 でドキュメントを次世代のステージへ
ISO(国際標準化機構)は 7 月 28 日、PDF バージョン 2.0 をリリースしました。専門家たちは 8 年間にわたり、さまざまな分野、業界、国を越えて連携することにより、971 ページにわたる PDF 仕様書を新たに作成しました。Adobe のエンジニアとコンピューター科学者は、その作成において先導的な役割を担いました。次世代の PDF では、 ドキュメントのセキュリティが強化され、アクセシビリティが向上し、グラフィックスを多用するメディア(3D、ビデオ、地図情報、印刷)の管理や表示が容易になりま した。デバイス間で共有、保持、表示、印刷する必要のある他の重要なドキュメントと同様、PDF 仕様書 PDF ファイル形式で配布されています。
ユーザーのニーズに合わせた PDF の進化
セキュリティ:クラウドでつながる世界では、ドキュメントレベルのセキュリティがこれまで以上に重要となります。インターネット経由のファイル転送では、ドキュメント自体が安全でないと、コンテンツに不正にアクセスする隙を与えることになり ます。PDF 2.0 では機密性の高い素材に対するセキュリティ管理が向上されています。強力な最先端の暗号化機能が適用され、パスワードに英字以外の文字(Unicode)を使用できるようになりました。また、使用している暗号化方法の情報が含まれている 「ラッパー」を、暗号化せずに使用できるようになりました。これにより、Acrobat Reader などの PDF アプリやプログラムでは、権限を持つユーザーがコンテンツを表示する場合、復号化オプションをより簡単に使用できるようになりました。
アクセシビリティ:PDF はコンテンツのアクセシビリティを向上する機能をいくつかサポートしています。例えば、読み上げ変換、点字リーダーなど、支援テクノロジーで使用される画像の代替テキストを使用できます。PDF 2.0 ではアクセシビリティが向上され、柔軟性が高まり、発音辞書といった新機能を可能にするためのタグ付けアーキテクチャが拡大、拡張されています。
3D とマルチメディア:一部の業界では PDF ファイルを 3D モデル(航空宇宙、機器の 試作、建築、バイオテクノロジーなど)やマルチメディアコンテンツ(オーディオ、 ビデオなど)の変換に使用しています。PDF 2.0 では、アドビが最初に開発したリッチ 3D モデリング言語である「PRC」がサポートされるようになりました。さらに、PDF 2.0 ではユーザーがリッチメディアコンテンツを表示、測定、注釈付けすることを可能にする新しいツールが用意されています。
地図情報:PDF 2.0 に用意されている地図や 3D 地図情報オブジェクトは、参照用の座標空間や投影法に関連付けることができます。これにより、地理情報シス テム(GIS)のデータをより効率的に使用できるようになります。また、地形や科学的コンテンツ(衛星画像、惑星科学、海洋学、天文学、都市計画、森林管理など)を効果的に活用できるようになります。
印刷カラーの再現性:印刷ワークフローではカラーの精度が重要になります。PDF は現在のカラー管理方法をほかに先駆けて確立しました。このため、商業用プリンターでは早い段階から最終的なジョブコンテンツの変換に PDF が採用されてきました。PDF 2.0 では、印刷ワークフローのカラー管理向けに重要な機能がいくつか追加されています。
- ページレベルの出力プロファイル:PDF 2.0 では 1 つのジョブ内でページごとに異なるカラープロファイルを関連付ける機能が追加されているため、異なるストック、インクセット、プレスで印刷される複数ページのジョブの管理、ルーティング、自動化の柔軟性が高まりました。
- 黒点の補正:Photoshop 5(2006)には BPC が導入され、画像のカラースペースを縮小する際に影の詳細を保存できるようになりました。PDF 2.0 では任意のオブジェクトに BPC のスイッチを追加できるため、ワークフローの最後(最終出力時など)に BPC の変換を実行する(または実行しない)ことが可能です。
- スペクトルでカラーを定義:PDF 2.0 では、スポットカラーをスペクトル値で定義できるようになりました。これにより、デジタル校正デバイス上でのスポットカラーのエミュレーションや最終的な印刷の再現性の精度が大幅に向上しま した。精度と信頼性が向上したことで、ブランドマネージャーはパッケージ印刷、工業用印刷、テキスタイル印刷に役立てることができます。
アドビの製品チームでは、仕様書の発行が Acrobat DC、InDesign CC、Illustrator CC、Photoshop CC、Adobe PDF Print Engine をご利用のユーザーのワークフローにどのような影響が及ぶかを調査し、新しい PDF 機能を活用するためのアプリケーション機能やツールを新たに開発する方法を検討していきます。
アドビでは、PDF 2.0 のリリースを業界標準の進化の節目となるものとして歓迎しています。弊社では企業ワークフローの創造性が広がることを期待しつつ、ドキュメントを作成、共有、発行、表示するすべてのお客様へこれらのメリットを積極的に還元するように努めてまいります。
この記事は、2017/8/8(米国時間)に投稿されたTAKING DOCUMENTS TO THE NEXT LEVEL WITH PDF 2.0を翻訳したものです。