未来がそこまで来ている!アドビが見せた11のわくわくするテクノロジー
ラスベガスで開催中のクリエイティビティ・カンファレンス「Adobe MAX 2017」から、製品に搭載されるかもしれないわくわくする機能が紹介された「Sneaks」の模様を速報でご紹介します。
1. すごい速さでデータビジュアライゼーションを行う「Lincoln」
データビジュアライゼーションはとても手間のかかる作業です。これまでは、ドローイングツールで描くか、テンプレートを使うか、プログラムを書く必要がありました。Lincolnはこれをごく簡単に実現できてしまう機能です。
まずシェイプを作り、リピートグリッドのハンドルをドラッグして繰り返し要素を作ります。
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このシェイプを、データとバインド(関連付け)するだけでこの通り、数値に応じた長さに一つ一つのシェイプが変更されて棒グラフが出来上がります。
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グラフにラベルを表示するのも、リピートグリッドに配置したテキストにデータをバインドするだけです。だいぶグラフっぽくなりました。
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長さが可変の要素の後ろに、他の要素を付けたい場合は、スティッキーアンカーを作って要素の間をつなぎます。すると、位置関係が自動的に調整されるようになります。下の図では、グラフの右端から等距離に画像が配置されています。
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画像や色もデータとバインドできます。下の図では、項目ごとの国旗や性別のアイコンが、バインドしたデータに沿った画像になっています。これでグラフの完成です。
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棒グラフ以外のチャートもつくれます。同じように都市の最低と最高気温のデータをバインディングして円グラフを作りましょう。カラーコントロールを適用すれば下の図ができあがります。
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ここまでの作業、わずか数分。SVGで書き出してIllustratorでレイアウトすれば、ポスターの完成です。
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今まで絶望的な時間がかかっていたこういう作業が、Lincolnなら1時間もかからない作業になるかもしれません。すぐにでも使いたい、製品に搭載されるのが待ち遠しい機能です。
2. ポートレートのスタイルを変える「Puppetron」
ポートレートのスタイルを、「お手本」の絵や写真に合わせて変えてしまう機能です。
右がポートレート、左がお手本の絵です。
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お手本の絵に合わせてポートレートのスタイルが変わります。
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ちょっとやりすぎましたかね。どのくらい忠実にスタイルを合わせるか、調整できます。もう少し人間成分を増やしてみましょう。
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お手本は絵である必要はありません。写真でも大丈夫です。
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目の部分が元の写真のままで変わっておらず、なんだか凄い違和感を感じます。ここは人工知能、Adobe Senseiの力を借りましょう。
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この通り、うまくスタイルを合わせられました。銅像だって大丈夫です。もはや元のポートレートがどんなものだったか思い出せませんね。
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ここまでは静止画だったのですが、なんとCharacter Animator CC上でリアルタイムにこの機能が動いていました。
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お手本のスタイルのキャラクターが、発表者の表情に合わせてリアルタイムに変化します。これはすごい。
3. 他の写真を使って塗りつぶす「SceneStitch」
例えば写真自体は気に入っているものの、手前の道路が気に入らないとクライアントが言っているとします。
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Photoshopにはすでに「コンテンツに応じた塗りつぶし」があるので、これを使ってみましょう。
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悪くないのですが、どうしてもまわりと似たパターンで塗りつぶしされてしまいます。結果が気に入らないときは、他の写真の一部を使って塗りつぶしてしまえばいいのです。SceneStitchは、Adobe Senseiの力を借りて、Adobe Stockの画像から使えそうな部分を見つけて候補を表示します。
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なんという魔法でしょう。複数の候補が表示されるので、最初に表示された画像が気に入らなければ他の候補から選ぶこともできます。
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別の例を見てみましょう。
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建物の前の芝生の部分(赤い線から下)が気に入らないとします。そんな場合は、他の写真に置き換えてしまうことができます。
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なんとテニスコートになってしまいました。単に切り抜いて置いているわけではありません。画像をうまく再生成しています。他にももいろんな風景が合成されています。
Adobe Stockにある膨大な数の画像をセマンティックに検索し、合いそうな写真をみつけて塗りつぶしてくれるすごい機能です。ストックフォトの意味が変わりそうですね。
4. 色付けを自動で行う「Scribbler」
白黒写真の色付けを、人工知能Adobe Senseiの力を借りて、自動的に行ってくれる機能です。
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アインシュタインもあっという間にカラーで塗られてします。白黒写真だけでなく、イラストでも大丈夫です。
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イラスト上にテクスチャーの断片を貼り付ければ、それを利用して着色してもらうこともできます。
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5. シェイプの中にうまい具合に敷き詰める「Physics-Pak」
何種類かの猫のイラストを、シェイプの中に隙間ができないようにサイズや形を変えながら敷き詰めたいとします。
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Illustratorのパペットワープ機能でもやれますが、3時間はかかるでしょう。これを3分で終わらせます。
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物理シミュレーションを使ったグラフィックス処理ということでした。人工知能Adobe Senseiを使ったセンセーショナルな機能ですね!
6. 絵の具のように色を混ぜてパレットを作る「Playful Palette」
まずは基本となる色をいくつか選びます。
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絵の具を混ぜるように好きな色を作っていけます。使用した色は、円の外周に履歴として残っていきます。
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混ぜる前の基本の色を変えれば、混ぜたあとの色も変わります。描いた後から色の選択をやり直すことができるわけです。他にも、肌と目で別のカラーパレットを使い分ける機能などが利用できます。
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7. 360度動画の音を可視化して編集する「SonicScape」
360度動画の編集の問題の1つに、どこから音が来ているかわからず、映像と音の方向を合わせることが難しいことが挙げられます。
これは全方位の音を録音したアンビソニックス・オーディオをビジュアライズする機能です。光の点の塊として表示されたものをドラッグするだけで、音の位置をコンテンツに合わせられます。
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環境音に加えて、ディテールの音(例えば海鳥の鳴き声)を、シーンにオブジェクトとして配置することも可能です。
8. フラットに見えるVR動画を立体的に見せる「Sidewinder」
VR動画はものがフラットに見えるのが問題です。まわりをそのまま録画しているので、頭を動かしても、見えているものは変化せず、立体感を感じられません。
この技術はデプスマップを生成して、映っているものを3次元的に見せます。頭を左右に動かせば壁の横が見えるようになり、少しかがむと下のほうが見えるようになります。
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9. ラフなイラストから3Dモデルを見つける「Quick 3D」
凄くラフな、こどもが描いた絵のようなものから、3Dモデルを見つけてくる機能です。アドビのインターンが作った機能だそうです。
人工知能Adobe Senseiが、何のイラストか理解し、それに近い3DモデルをAdobe Stockから探してきます。
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10. いい感じに塗りつぶしてくれる「Deep Fill」
Photoshopの「コンテンツに応じて塗りつぶす」機能は、画像を理解しているわけではないので、あくまでもまわりのピクセルを複製するだけの機能です。
例えばこの写真の目の間の部分には、絆創膏のようなものが貼ってあります。
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「コンテンツに応じて塗りつぶす」だと、目がコピーされて増えてしまいます(右の画像)。そんなとき、人工知能Adobe Senseiなら、目や鼻などのパーツの意味を認識して、正しく塗りつぶします(真ん中の画像)。鼻は鼻として塗りつぶされているのがわかります。
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11. 動画の中の不要なものを消す「Cloak」
動画に消したいものがあるとします。Photoshopで1フレームずつコンテンツに応じた塗りつぶしをやってもうまくいきません。
この機能は、ソースビデオとマスクビデオがさえあれば、動画でコンテンツに応じた塗りつぶしを行うものです。
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動画から、影も含めて人を丸ごと消してしまうこともできます。なんという魔法でしょうか!
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いかがでしたか?昨年に比べて、人工知能が支援する機能が大幅に増えたように感じました。
Sneaksでは、アドビ社内のエンジニアやデザイナーが、大勢の観客がいる前に出てきて、短い持ち時間の中で未来のテクノロジーを紹介します。ステージに登場するのは社内の厳しい選考を勝ち抜いてきた選りすぐりの技術だそうです。Sneaksは、2日目最後のイベントということもあって、お酒を飲んでいる参加者も多く、ものすごい歓声につつまれます。
アドビが見せてくれたクリエイティビティの楽しい未来に、会場のみんながわくわくしました。これからが楽しみですね。
以上、アメリカ・ラスベガスからお伝えしました。