2016年の「ホリデーショッピングに関する予測」から考える2017年の傾向と対策

小売業界ではよく知られていることですが、年末に向けてのホリデーショッピングシーズンは、街行く人が暖かなセーターやスカーフを身につけ始めるずっと前から始まります。先を読むのに早すぎるということはありません。

2016年秋にAdobe Digital Insightsが発表した「ホリデーショッピングに関する予測」(英語)は、小売事業者が同年のホリデーシーズンの準備中に経験するであろういくつかのトレンドを予測するものでした。

来たるホリデーシーズンに関するアドビの2017年版レポートはまもなく公開されますが、2017年シーズンに備えるにあたり、2016年の予測がどの程度現実に近かったか、そしてそれが小売事業者のマーケティング戦略にどのような意味を持つかをあらためて振り返ってみたいと思います。

アドビの調査結果から明らかになったのは、トレンドを認識することと、その認識を上手に活用することの間には、依然大きなギャップがあるという点です。昨年の記録的な売上達成により、小売事業界、特にeコマース業界は大きな利益を得ました。しかし、2017年のホリデーショッピングにおける小売事業の売上は昨年に比べて低迷し、2016年の4.8%の売上増から、2017年はわずか2%増にとどまるとアナリストは予測しています。これはつまり、小売事業者が今年も成功を収めようとするならば、昨年以上の努力が必要になるということです。

アドビの2016年の予測を振り返り、現実の結果と照らし合わせたところ、来たるシーズンにも当てはまると思われる、いくつかの重要なインサイトが得られました。

1. オンラインショッピング

**予測:**アドビは、2016年には消費者のオンライン購入が増加する一方で、オンライン購入の動機が変わると予測しました。消費者は、お買い得品を探す(2015年から11%減)よりも、店舗までの移動や長い行列を避ける(2015年から4%増)、職場から買い物できる(2015年から7%増)といった利便性を求めるようになると予想しました。

**現実:**ホリデーシーズン中のオンラインショッピングは、前年比で11%増加しました。興味深いことに、買い物客の多くが「あとで送る」オプションを利用したので、収益増の大部分はホリデーシーズンの終盤に発生しました。売上があまり増加しなかった小売事業者は、オンラインで購入する実質的な新規顧客が少なく、サイトの訪問者数が停滞期に達していた可能性があります。

**2017年に向けての示唆:**従来型の小売事業者にとって注目すべきは、いかにオンラインショッピングが伸びていても、ほとんどの顧客は引き続き実店舗での購入を好み、オンラインショッピングはあくまでも補助的な手段であるという点です。一方、オンライン小売事業者にとっては、オンラインショッピングの増加は朗報です。

成長指標を高めるには、モバイル広告とディスプレイ広告(下記参照)への投資を増やすことが重要になります。これはつまり、オンラインチャネルとオフラインチャネルをまたぐシームレスな購入体験の提供が不可欠であることを意味します。

したがって、既成概念にとらわれず、オンラインブランドとオフラインブランドをまたぐシームレスな購入体験を生み出すようなホリデーシーズンキャンペーンを展開することが推奨されます。

昨年は駆け込み購入による収益の増加が見られたので、プレゼントの駆け込み購入を後押しする店舗受け取りサービスやエクスプレスシッピング(お急ぎ便)のような利便性重視のプロモーションも効果的と思われます。

2. モバイルショッピング

**予測:**2016年のホリデーショッピングにおいて、アドビはモバイルが大きな役割を果たすと予測しました。つまり、ホリデーシーズンに買い物客をwebサイトに誘導する効果において、モバイルが初めてデスクトップPCを上回ると予想しました。

**現実:**デスクトップPCは引き続き最多の訪問者数と売上(それぞれ50%と73%)を生み出しましたが、史上初めて、スマートフォンのトラフィックがデスクトップPCのトラフィックを上回った日が6日ありました。

**2017年に向けての示唆:**モバイルショッピングの持続的な成長をビジネスに活かすためには、小売事業者はモバイルサイトを強化する必要があります。顧客や利用者との接点という意味ではモバイルサイトが最も優勢ですが、まだ期待したほどのコンバージョンは得られていません。

小売事業者は、訪問者が気軽に購入に進めるようにするために、買い物客がゲストとして会計できる機能を用意する必要があります。モバイルアプリの活用も、購入体験の向上に役立ちます。

そのためには、モバイルアプリと他のコンテンツ管理システム、商品データベース、ERPシステムまたはCRMシステムとを柔軟に接続するAPIを備えた基盤を使用することが望まれます。これにより、顧客が特定の商品を検索できるように最適化されたモバイルエクスペリエンスを設計しやすくなります。

3. ディスプレイ広告

**予測:**昨年のレポートでは、特定の割引商品や人気のカテゴリーにアクセスさせるための最適な方法はデジタルディスプレイ広告であると指摘しました。このような予測をした理由のひとつは、SMSやテキストメッセージによるセール告知を好む顧客が減少しているという傾向が見られたためです。

**現実:**検索連動型広告がブラックフライデーの売上を大きく押し上げました(前年比16%増)。この事実は、買い物客を特定の商品やカテゴリーの検索に誘導するためのパーソナライズされた広告の最適な配信手段は、ディスプレイ広告であるというインサイトを裏付けます。

**2017年に向けての示唆:**小売事業者、特にeコマースを取り扱う小売事業者は、強力なペイドメディアキャンペーン戦略を持ってホリデーシーズンを迎えるべきです。成功を収めるには、有料広告戦略の中にサードパーティによるプラットフォームを含める必要があります。

他の小売事業者が所有するデータを活用することで、ディスプレイ広告のターゲティングを拡大し、GoogleやAmazon向けの戦術を補完して、検索連動型広告の費用対効果を最大限に高めることができます。このような有料広告は、オンラインのショップだけでなく、物理的な店舗にも顧客を呼び込みます。

また、顧客がwebサイトで以前に閲覧した商品にもとづいてメッセージを変化させる動的ディスプレイ広告も忘れてはなりません。このようなタイプの広告は以前よりも手軽に制作、配信できるようになっています。ただし、忘れてはならないのは、顧客の注目をより多く集め、より多く買わせようとする競争は果てしなく続くということです。

数ヶ月後に到来するホリデーショッピングの熱狂に備えて、小売事業者は万全の準備を整え、あらゆるチャンスを利益につなげるマーケティング戦略を展開する必要があります。昨年見られたトレンドの多くは2017年も続くと予測されますが、Adobe Digital Insightsがまもなく発表する2017年版の「ホリデーショッピングに関する予測」でどのような提言がなされるのか、我々も楽しみにしています。引き続きご注目ください。

筆者:アドビ小売事業チーム

※本ブログは米国で公開されたAdobe Digital Marketing記事の翻訳です。