ビジュアルトレンド – どっちつかずと呼ばれる世代に生まれて #AdobeStock

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Adobe Stock ビジュアルトレンド

アートは時代の喜びや不安を写し出します。そこで今回は、若いアーティストたちが伝えていかなければいけないことについて考えてみます。彼らは、政治色の強い、経済的に不安定な世界で成人となりました。そして、前の世代と同様に、自分たちの両親や祖父母と同じ過ちを避け、世界を変えたいと考えています。目まぐるしく変化する政治、それ以上に急激な発展を遂げているテクノロジーの時代に、新世代はどのように頭角を現していくのでしょうか?


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Eugenio Marongiu/ADOBE STOCK

どっちつかずの世代

ミレニアル世代が社会人になったのはまさに経済変革の時代。彼らの社会経験の特徴を最もよく表している言葉は「不透明感」です。New York Times 紙は彼らのことを、経済が再び安定するのを期待する「どっちつかずの世代」と呼びます。英国では、昨年のEU離脱投票で残留を強く望むミレニアル世代が古い世代に押し切られた結果となって以降、仕事に関する懸念や金融不安が益々強まっています。

キャリアの見通しが良くなることを願う一方、多くの若者が将来の道筋を付けられずに両親と暮らし、古い世代よりも経済的な安定を得るために多くの時間を割いてるといいます。New York Times紙が、大学を出たての若者Amy Kleinに、そうした状況について尋ねたところ、ハーバード時代の彼女のクラスメートたちがどのような考えを持ち行動しているか、Amyは次のように語りました。「皆、成功や職の安定に対する従来の考え方に従うより、自分の興味の赴くままに、独自のライフスタイルを追い求めようとしています」。

Amyにとってそれはパンクロックバンドのツアーに加わること。意義のある仕事を見つけるためにボランティアを行ったり、自分の芸術的な才能を開拓したりする人もいます。こうした流れが希望の光になることを期待したいところです。自らの創造性を高め、自分自身の声を見つけようとするミレニアル世代が、アートの世界を予想外のワクワクするような方向へ推し進めてくれるかもしれません。


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ysbrandcosijn /ADOBE STOCK

分断という時代背景

もちろん、自分の表現手段を見つけるのは簡単ではありません。ましてや、この複雑な時代であればなおのこと。たとえば、Eric Yahnkersは、ポップカルチャーを利用して、人種差別や性差別、エリート主義についての答えにくい問いを意図的に投げかけています。最近Ericは、自身の作品について、また、政治色の強い今、ミレニアル世代やジェネレーションX世代が自分たちの場所を見出すことがいかに難しいかについてVICEで語っています。

「私の最近の作品は、現在の新進歩主義的、社会政治的な時代精神というものに焦点を当てています。より具体的に言うなら、主に白人の教養のある中流から中上流階級のミレニアル世代とジェネレーションX世代のグループです。彼らは、全面的な社会改革と平等のための戦いに参加したいと思いつつ、自分たちの特権や先祖代々続く恥ずべき行いとの結びつき、といった不名誉を拭い去ろうともがき、どっちつかずの状態にあるのです。その内部の葛藤が、しばしば過度な償いや不注意な無知、差別などの不適切な状況を生んでいます」。

Yahnkersは、現在の政治論争を背景に、親しみのあるポップカルチャーのアイコンを配置します。たとえば、彼の描画“Purple Lives Matter”は、パープルのベルベットのスーツに身をつつんだプリンスが、あのミステリアスなまなざしでバイクに跨っていますが、両脇に描かれている警官から銃を向けられています。

「これは自分でもちょっと気まずさを感じる作品のひとつ」と、EricはVICEで語っています。「『Black Lives Matter 』※(黒人の命も大切)VS『All Lives Matter』(すべての命が大切)という対立の枠組みを真っ向から取り上げています。この枠組みは、運動の反対者、つまり、あからさまに、あるいは密かに偏見を持っている人をあぶり出すシンボルやリトマス紙とも言えます…。プリンスのパーフェクトな紫の色調が、権力と無知の間の混乱した空間でメッセージを強固にしています」。

※『Black Lives Matter 』とは、白人警官による黒人射殺事件に端を発した米国の黒人差別に対する抗議運動。

不快なら、真逆のことを。

今のクリエイティブなトレンドの中には、現状を疑問視せずに受け入れることへの若手アーティストの拒絶があります。たとえば、新アプリBemeでは、ユーザーが短い動画を撮り、投稿することができますが、動画をアップする前に内容を確認したり、編集したりすることはできません。これは、コンテンツを徹底して厳選するソーシャルメディアの世界を解体しようという大きなムーブメントの一部です。「すっかり身近なものとなったフィクションより、真実の方がずっと面白いということです」とBemeのクリエーター、Casey Neistatは述べています。


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PeWi / ADOBE STOCK

同様にWanted Designは、私たちの個人情報との関わり合いに疑問を投げかけるため、ポップアップインスタレーション、DataCafé.bizを立ち上げました。DataCaféでは、企業が個人情報を収集し、売買していることをただ受け入れているのではなく、この取引を呼び物にしています。献血をまねたシステムで、ユーザーは自分の情報と引き換えに、インターネットへのアクセス、クッキー、そして、「本日情報を提供しました」という示唆に富むメッセージ入りのステッカーを手にします。

更なる狭間の世界

本ブログでは今後も、若手デザイナーによる自己や狭間の世界の表現の仕方についてさらに踏み込んで見ていきますので、ぜひ引き続きお楽しみください。目まぐるしく変化するクリエイティブツールを彼らはどう使いこなしているのか、新しいトレンドに乗るのか、自分のやり方を貫くのか、その決断のタイミング等についても尋ねていきます。不確かな狭間の世界に関連のある画像を厳選した特集ギャラリーも併せてご覧ください。

この記事は2017年10月6日に Adobe Stock Team により作成&公開された Caught in Limbo: Art and Life in an in Between World の抄訳です。