経験者に聞く、ストリーミングTVのUXとUIをデザインする方法
エクスペリエンスデザインの基礎知識
NetflixやHuluのようなストリーミングTVは、ケーブルや衛星TVよりもずっと速く成長しています。Business Insiderによれば、2015年だけでも29%の成長を遂げています(ケーブルは3%)。これはストリーミングの大きなポテンシャルを示すものでしょう。
多くの企業がストリーミングの世界に参入しています。今年の前半にはTouTubeがYouTube TVを開始し、視聴者にショーやニュースやライブスポーツ中継などを提供しています。ストリーミングはTVには限りません。Amazonは、ビデオゲームを大勢の観客にライブストリーミングできるプラットフォームTwitchを所有しています。
ストリーミング人気が高まる中、この分野で成功するために何が必要か、YouTube TVとTwitchそれぞれで働くUXデザイナーにインタビューをして、彼らの視点を聞いてみました。
ニール・コミカンはYouTube TVのデザインマネージャーで、それ以前はCiscoのTVテクノロジー部門で10年勤めるなど、エクスペリエンスデザインの深い経験を持つ
テイラー・ホーはプレミアムコンテンツチームのUI/UXデザイナー。デザインとUXへの執着は若い頃の趣味として始まったが、今ではやりがいのある職種となった
観客のためにデザインする
2人のデザイナーの座右の銘は、「観客を理解する」です。これは良いデザインの基本です。コミカンは、「ユーザーが既に知っていることを無視しない」と表現しました。
さもなければUXの問題に向き合うことになります。彼のチームは、YouTubeでTVを操作する全く新しい方法の発見に着手したとき、これを直に体験しました。彼らがすぐに理解したのは、ユーザーがTVの使い方については既に固定された考え方を持っていて、新しい操作方法を導入してそれを変えようとしたなら、多くのUXの問題を引き起こすだろということです。
「今のTVを全く否定するようなものを公開したら、私達はしっぺ返しを食らっていたでしょう」、と彼は言いました。代わりに、彼のチームはユーザーが欲しがっている物を提供しました。YouTubeでお馴染みのものと、TVの使い勝手の組み合わせです。
YouTube TV
さて、Twitchの場合です。ホーはユーザーとコンテンツとの関わり方が鍵であることを発見しました。Twitchユーザーは、オンラインでストリーミングを見ているときの行動が、受動的か非常に活発かのどちらかなのです。
「私達のチームが注目していた種類のコンテンツでは、観客はリラックスしながら遠くから視聴するるか、お互いに直接的な交流をするかのどちらかになる傾向にありました」とホーは説明しました。
Twitch Donation Portal
予測可能性の過剰と欠如
ストリーミングサービスはまだ新しい分野で、UIデザインをするデザイナーが直面する問題のいくつかはそれが原因です。YouTube TVが直面した最も大きな課題の一つは、押し付けがましくならないライブコンテンツの提供手段を見つけることでした。この問題の解決には、TV視聴の体験の特性が役立ちました。ユーザーに自然に面白そうなコンテンツを発見させるようにしたのです。
「私達は、ユーザーが良いコンテンツにめぐり合う助けになるよう、TVで偶然発見するという特性を、製品にどうしても組み込みたかったのです。私達のTVガイドは、TVでチャネルを切り替えているようにチャンネルをスクロールすることができ、この実現に一役買っています」とコミカンは言います。「もう一つの機能は、サービスの至る所で使われているビデオプレビュー用のサムネイルです。これはどのショーが現在ライブなのかを示しています。これらの戦略はとても成功していて、大半のサービスの視聴がライブコンテンツになっています」
YouTube TVモバイル版
一方、ホーの最大のデザイン上の課題は「未知」です。これに対応するための彼の手段の一つは、トライ&エラーによって、彼が作った製品から学ぶことです。
ホーによれば、「私は、より積極的なアプローチで学ぶことにより、へまを最小化しようとしてます。まず十分な調査をして、もっとも容易に理解できると思われるデザインをしてから、適切な人々にそれを見せて確認し、それから公開します。その後は、自分自身で集めたデータから学び、そこから更にプロセスを繰り返します。または、全部放り投げてしまいます」
Twitchユーザーフロー
デバイス間の一貫性
ストリーミングサービスは消費者にとってありがたいものです。好きなコンテンツを好きな場所で好きなデバイスを使ってみることができるのです。しかし、UXチームにとっては、これは迷惑なことかもしれません。なにしろ、全てのデバイスに使いやすいUXを一貫して提供しているかどうかを確認しなければならないのです。
YouTube TVの場合には、全てのデバイス上での共通レイアウトの採用が功を奏しました。「デバイスごとに、縦横比、大きさ、入力方法は異なりますが、基本的な画面レイアウトを似せることが重要でした。ホームフィードは中央に、録画は左に、ライブは右という具合です」とコミカンは言いました。
更に、彼のチームは、コンテンツをグループ化しました。エピソードは公開の順番や再生数に応じて編成されました。N/N グループのUX専門家が良いUXのために必須と考える、ユーザーの認知負荷の削減のためです。これはユーザーの繰り返し作業を減らす効果をもたらしました。
ライブストリーミングの将来と自動化
コミカンとホーは、ストリーミングの将来は明るく、ライブコンテンツと自動化が強みであるという点で一致しています。
コミカンの言葉です。「ライブはこれからも大きな役割を果たすでしょう。多くの視聴者が、スポーツ中継やニュースが従来のサービスの何分の1かの料金で提供されていることを理由に、私達と契約しています。ストリーミングサービスは、こうしたタイプのコンテンツを中心に進化すると予測しています」
彼の信じる将来は、ユーザーがコンテンツや情報を意味のある形で得られるようになることです。そこに自動化が絡んできます。「自動化のある状況を考えてみてください。ライブ中継がリアルタイムで様々な言語に翻訳される。他には、視界に入った他のストリーミング発信者のアバターを取り込んで表示する。二人の放送の衝突の様子を目撃できるのです」
ストリーミングサービスのUXデザイナーになるには、謙虚になって学ぶこと
デザインは主観的なものです。ユーザーは、デザイナーが良いと思ったUIやUXに同意するとは限りません。批判の声から逃れることはできないでしょう。
「フィードバックは時には聞くのが辛いこともあります。しかし、それをちゃんと取り上げて、そこから学ぶことが大事です」とコミカンは言います。
デザイナーにとって学びに終わりはありません。スキルを拡げて成功体験を重ね、チームからの尊敬を集めることが次につながります。
「インタラクション、ビジュアル、そしてモーションデザインのスキルを高めて、その上にプロトタイプの作り方やコーディングも学びます。チームの仕事を明確にして理解できると、リーダーとしてのフィードバックに、チームからの反応が良くなります」、と彼は付け加えました。
この記事はAsk the UXperts: How to Design UX and UIs for Streaming TV(著者:Marc Schenker)の抄訳です