たった1人の職員が推し進めた電子サインの導入により、1.8万人の働き方改革を実現。 ハワイ州政府が取り組むデジタル変革とは? #AdobeSign
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今日、急速に進むワークフローのデジタル化の流れは、行政サービスにおいても着実に拡がっており、様々な変化が起こっている。例えば日本では、昨年施行されたマイナンバー制度と、それに伴って始まった保育園入所などの行政手続きのオンラインサービスが記憶に新しい。9月14日に開催されたAdobe Symposium 2017において、政府関係者向けに行われたセッションでは、「国民サービス向上のためのデジタルファーストの取り組み」をテーマに、米国と日本のデジタルトランスフォーメーションの施策を紹介した。今回は、Adobe Signを導入したハワイ州の政府CIO、Todd Nacapuy氏のデジタルトランスフォーメーションの取り組みを紹介する。
40年前のシステムを使う税務署、職員の高齢化・・・ デジタル改革に立ちはだかるハワイ州政府の様々な課題
「ハワイ州政府の取り組み~ペーパーレスがもたらす市民サービスの向上」と題して登壇したNacapuy氏は、2015年に州政府CIOに着任して以来、行政の効率化と効果を強化するために、様々な州政府機関を横断してデジタルトランスフォーメーションを指揮している。
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着任した当時、州政府は数多くの課題をかかえていたと語るNacapuy氏。州政府機関が使用する多くのシステムは40年経過しており、到底信頼できるものではなく、また基準となるIT規程が存在していなかったため、9つのメールシステムが利用されているなど、統制のとれた管理体制が存在していなかった。さらに、州政府職員の高齢化も、IT改革を進めるうえでの大きなチャレンジであったという。
エンタープライズテクノロジーサービス室(ETS)の発足とその成果
これらの課題を解決するべく、Nacapuy氏はまず、当時分散していた4つの部署、1)会計、2)情報管理技術、3)情報通信サービス、4)一般サービス を統合し、「エンタープライズテクノロジー室(ETS)」を2016年に発足。ここで、州政府機関の様々なITプロジェクトを監督する管理体制を構築した。発足して間もないが、高速ネットワークの構築、税金管理システムや給与計算システムの改新、電子サインサービスの開始など、すでに多くの取り組みが進んでいるという。
たった1人の職員が推し進めた電子サインの導入
電子サインが採用された始まりは、知事室の試験的な導入からだった。電子サインに大きな期待を寄せていた知事は、知事室からの承認が必要な書類はAdobe Signのみで執り行い、紙でのサインは受け付けないことを決めた。その後、電子サインによる承認の便利さを知った職員たちは、個々の部署でも導入をはじめ、今では多くの部署がAdobe Signを採用している。2016年から本格的に導入されたばかりの電子サインサービスだが、現在では既に26万件を超える承認が電子サインによって行われている(注)。
組織で新しいツールを導入する場合、コンサルティング会社を介して導入するというのが常だが、ハワイ州政府がAdobe Signを導入した経緯は違った。驚くことに、約1.8万人の職員が働く州政府で電子サインサービスのシステムを推し進め、取りまとめているのはたった1人の職員だという。このように、Adobe Signのプラットフォームを採用した大きな理由が、容易にドキュメントワークフローを管理できる点だったという。
Adobe Signの導入により、州政府の効率は格段に上がった。最大15のステップが必要だった従来の承認プロセスは、Adobe Signを利用することで5つのステップに減り、2週間程度かかっていた承認までの時間も、数時間に減らすことができたという。
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なぜ「改革」できたのか?州政府が大切にした4つのプリンシプル
ではハワイ州政府はどのようにこれだけの改革をスピーディーに実行へ移していけたのだろうか?職員の高齢化が進む州政府では、新しいメールシステムへの移行や、電子サインの導入などといった新しい試みに対し、積極的ではなかったという。そこでNacapuy氏は、次の4つの指針(プリンシプル)を徹底し、変革を進めたという。
①職員への権利の委譲。すべての職員は変化を起こす力がある
例えば新しいツールを導入する際、強制的に取り決めるのではなく、ツールを提供し、まずは使ってもらい、職員に「選択」させる様にする。
②「失敗してもよい」という環境づくり
失敗は早いうちにして、今後の糧としようとする考えを徹底する。電子サインの導入はこの考えが経緯で始まった。
③州政府の最大の資産は「職員」
人材育成を一番のプライオリティとし、多くのトレーニングを実施。職員にポジティブな「体験」をしてもらう。
④コミュニケーション。職員は「なぜ」を知る権利がある
新しい取り組みを導入する際、職員に「なぜそれをやるのか」という疑問を持たせるようにする。そして視覚的なロードマップで進む方向性を共有し、取り組みの意義を理解させる。
この指針について、Nacapuy氏は以下のように語っている。「州政府は現場の職員の考えを尊重します。たとえ新しいシステムやツールを導入しても、現場の人が使いづらいと言って、使ってもらわないと意味がありません。大事なのはツールではなく、そのツールを職員が活用し、業務効率が向上し、最終的には国民の生活の質の向上に貢献することが大切なのです。」