〜可愛くも妖しい〜 アドビオリジナルフォント「貂明朝」をリリース #Typekit #貂明朝

アドビが独自に開発した、新日本語フォント「貂明朝(てんみんちょう)」が、11月28日に発表されました。欧文の「Ten Oldstyle」とともに、すでにフォントライブラリ「Adobe Typekit」に組み込まれ、Adobe Creative Cloud ユーザーは無料で使うことができます。

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デザインは、源ノ角明朝と源ノ角ゴシックを制作したことでも記憶に新しい、アドビのチーフタイプデザイナー西塚涼子さんによるもの。鳥獣戯画、妖怪百鬼などにインスパイアされた “可愛くも妖しい” というコンセプトに合致した、個性的かつ使いやすい、オリジナリティのあるフォントが生まれました。貂明朝に、貂(てん)という難しい漢字を選んだのは、可愛いだけではないイメージを打ち出したかったから。西塚さんがロゴの一部を手伝った小説『御命授天纏佐左目谷行』(日和聡子/ごめいさずかりてんてんささめがやつゆき、装丁/名久井直子)も大きなきっかけになったのだそう。


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左からアドビ システムズ 日本語タイポグラフィ シニアマネジャ 山本太郎、チーフタイプデザイナー 西塚涼子、シニア フォントデベロッパー 服部正貴

■Typekitに、74日本語フォントを追加

今年、Typekitに追加された日本語フォントはなんと74書体。「Typekitでもっと日本語フォントが使えるように頑張っている」とアドビシニアタイプマネージャの山本太郎さん。

山本「貂明朝のデザインはダイナミックな、日本の伝統的な文字の特徴を持ち、伝統的な明朝体のスタイルでありながら、ユニークでオリジナリティの高い書体です。欧文書体『Ten Oldstyle』が含まれており、欧文もより使いやすくなっています。TypekitのWebページもアップデートしましたので、ぜひお試しいただいて、いろんなところで使ってもらえたらと考えています。」

続いては、デザインを手掛けた西塚涼子さんが登場。

■パッと見てかわいい書体を作る難しさ

今回の開発は米アドビのタイプチームのプリンシパルデザイナーのロバート スリムバックさんと西塚さんがコラボレーションすることにより完成した書体で、“可愛くも妖しい” 明朝体を作りたいという、そのイメージを固めることにひと苦労したのだそう。

西塚「鳥獣戯画、妖怪百鬼のように、可愛いらしさと日本の伝統のイメージが入り混じったような明朝体を目指しました。このような絵のイメージを文字に置き換えて考え、浄瑠璃や江戸のかわら版の木版画にあるような文字のうねりなどで表現しようと思いました。そして通常の明朝体よりもコントラストを抑えて、丸みを加えることでかわいい明朝体ができたと思います。」

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このフォントが生まれたのは、西塚さんが通っていた、字游工房の鳥海さんが主宰する「文字塾」でのこと。「かわいい明朝を作りたい」と思った西塚さんが最初に書いたスケッチがこちら。左上が最初期のもので、この頃は「かわいさということがわかっていなかった」と語ります。

西塚さん「明朝体が難しいのは、バランスがいいとかっこ良くなってしまうこと。バランスを崩そうと思って崩すと、ただ下手な明朝体になってしまいます。このバランスが難しくて、明朝体にかわいさを持たせることは不可能なんじゃないかと思って悩みました。そこからうねり、太さ、丸みを加えることで、品位を保ちつつも可愛さが生まれ、伝統的な雰囲気も感じられるデザインになりました。」


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最初はなかなか “かわいい” フォントにならなかったものの、だんだん詰めていくに従って “かわいい” と言われるようになりました。そこまで行き着くのに、半年かかったそう。

西塚さん「かわいいという印象は、パッと見て感じてもらえないといけません。どうやってかわいくなったのかというと、まずは先端を丸くしたこと。縦と横の線幅の差を少なくし、コントラストを抑えました。動きにうねりを、払いに長さを持たせました。払いを長くすることで、明朝の安定感が生まれるんです。汎用的な源ノ明朝のレギュラーに比べると、貂明朝はかなり太いフォントです。」

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西塚さん「漢字に関しても、かなと同じく先端を丸く、コントラストを抑えました。そして、うろこをかなり大きくしました。点は丸く短くしてかわいらしさを強調しましたが、それだけでは寸足らずな印象が出てしまうため、払いを深く長く取りました。」

「文字全体も、最終的に横92%に対して縦90%と、少し平体をかけることにしました。これにより少し平体がかかった方がかわいらしさが出るんですよね。縦組みした時には漢字の上下にアキが生まれ、扁平による詰まりすぎを解消し、空気感を出してくれるんです。」


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■ロバート スリムバックとのコラボで生まれた欧文書体「Ten Oldstyle」

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西塚さん「欧文のデザインを日本語に寄せてくれるようにリクエストしました。私の場合はデザインを完全に合わせるのではなく、雰囲気と太さ、先端の丸みを合わせると和欧で合わせるのが良いと思っています。記号類・役物類については日本流のデザインをかなり採用してもらっています。欧文の伝統的なセリフ体は日本語と比べるとかなり幅が狭い字が多くなります。そこでベースとなるプロポーショナルグリフをかなり幅広に作ってもらいました。それにより全角欧文と共用することができました。全角欧文に詰めデータを適用するとプロポーショナルと同じ文字幅になるようにもしています。『Ten Oldstyle』はレギュラー、イタリックの2種のファミリーにそれぞれ4種のウェイトを用意しています」

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西塚さん「貂明朝にはキャラクターがいます。元々コンセプトの「可愛くも妖しい」というイメージが社内に伝わりにくく、絵にして表現したのが発端です。その時はほんの遊びだったのですが、この4つのポーズを取った貂のキャラクターが人気で、そのまま異体字として入力できるようになっています」

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このキャラクターが、貂明朝の異体字として登場。4つのポーズを取ったキャラクターが入力できるようになっています。さらに爪が生えたかわいらしい貂の指差しなどもあり、いろいろな遊び方ができそうです。


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■「Adobe Sensei」のビジュアルサーチ

最後にプレゼンテーションされたのは、ビジュアルサーチ機能。アドビの機械学習のフレームワーク「Adobe Sensei」のテクノロジーが搭載され、Typekitで欧文フォントのビジュアルサーチをすることができます。使い方は簡単。テキストを含む画像をブラウザーにドラッグ&ドロップすれば、Typekit内の約1万以上のフォントの中からそのテキストに近いものを検索して、Creative Cloudに同期してくれます。OCR機能もついているので、その文字ズバリを見つけてくれるのが便利。「好きなフォントを見つけるきっかけにしてくれれば」と、デモを披露したアドビのシニアフォントデベロッパー服部さん。

このビジュアルサーチはスマホからも利用ができます。無料スマホアプリ「Adobe Capture CC」で文字を撮影すると、類似フォントを探してくれて、文字スタイルとして保存してくれます。デスクトップのAdobe Illustrator CCで「文字スタイル」を開くと、いまアプリで認識した文字の情報がライブラリに反映されて、すぐに使えることができます。

最後に、西塚さんに貂明朝のオススメ使用シーンは?と聞くと…

西塚「タイトル、書籍、ディスプレイなどの見出しを想定していたのですが、詩のような長文も組めるのではないかと思っています。大きめに使ってもらえると、丸みが出るのでオススメです。」

ぜひCCユーザー、Typekitユーザーのみなさんは、新しいフォント「貂明朝」をダウンロードしてお試し下さい。

貂明朝