映画 『 #ブレードランナー2049 』 の世界観を表現したスクリーンの重要な役割

全米では2017年10月6日、日本では10月27日に公開された『ブレードランナー2049』は、1982年に公開された『ブレードランナー』の続編にあたります。前作の30年後の世界で新旧の登場人物が入り交じり、長く隠されてきた人類の未来を左右する秘密が明かされます。今回、優れた技術とデザイン感覚を合わせ持つTerritory Studioに、『ブレードランナー2049』について伺いました。

Territory Studioがこのプロジェクトに取り掛かった時点では、まだすべてが秘密に包まれていました。監督のDenis Villeneuve氏とプロダクションデザイナーのDennis Gassner氏は、この映画の世界観について意見を交わし、大停電によりすべてのデジタルデータが失われた世界が舞台となりました。その結果、『ブレードランナー2049』の世界は、オリジナルの『ブレードランナー』の世界とは明確に異なり、よりアナログな印象になりました。

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Image credited to Territory Studio

Territory Studioのクリエイティブ統括兼視覚効果スーパーバイザーでもあるPeter Eszenyi氏は次のように述べています。「私たちはオリジナルの『ブレードランナー』を踏まえつつも、前作にとらわれることなく、まったく新しいコンテンツを取り入れました。テクノロジーに関する過去のアイデアはすべて捨て、今回のストーリーに合った未来のテクノロジーを生み出す必要がありました。」

そのプロセスの中で、まず『ブレードランナー2049』の世界観を早急に作り上げ、監督およびプロダクションデザイナーに共有する必要がありました。制作チームはAdobe Photoshop CCAfter Effects CCを使って、さまざまなテクスチャ、スキャン、画像を取り込み、異なるレイヤー、フィルター、チャンネルを試しました。After Effectsは、チームで要素を組み合わせて繰り返し試すことができるため、浮かんだアイデアを素早く検討したいときに特に役に立ちました。

「私たちは、この世界でテクノロジーをどのように活用するか、あらゆる方向性を検討し、チームに共有しました。そして、あらゆる種類のPCに適した表現方法に絞り込みました。」とEszenyi氏は述べています。

次にチームに、ロサンゼルス市警察、遺体安置所、隣人のアパート、市場、Wallace Corporationのオフィスなど、映画のさまざまなセットが紹介されました。Territory Studioチームは、そうしたセットそれぞれに適した雰囲気のコンピュータスクリーンの制作を担当しました。Territory Studioは全体で100種類のスクリーンを制作し、そのほとんどが撮影で使用されました。

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Image credited to Territory Studio

Eszenyi氏は次のように述べています。「私たちは常に前作『ブレードランナー』の世界のストーリーを意識する必要がありました。これは主に登場人物がこの世界の社会的階層のどこに位置しているかということです。権力者のコンピュータのインターフェイスと、一般人が使う洗練されていないスクリーンの見た目が異なるようにデザインする必要がありました。」

スクリーンのデザインはまずAdobe Illustrator CCで始め、After Effectsでアニメーション化されました。立体感を出すためにCinema 4Dも使われています。シーンの中で、スクリーンを現実的にすることで、セットと俳優の一体感が高まります。

Eszenyi氏は次のように述べています。「撮影の際に、実際のコンテンツをスクリーンに表示することが好まれる理由の1つは、照明と雰囲気にもたらす効果にあります。しかし、それと同じくらい重要なことは、こうすることで俳優がスクリーン上で何が起こっているかを確認して対応できるため、演技がしやすくなるということです。」

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Image credited to Territory Studio

『ブレードランナー2049』では、俳優がスクリーンに反応しているようにプログラミングするのではなく、別のアプローチが必要でした。Territory Studioは、セット内のスクリーンの再生を担当する別の企業と協業しました。この企業は、俳優の演技のきっかけとなるように、物語の特定のポイントでスクリーンを表示しました。

周囲の環境がストーリーにおける需要な役割を果たす映画では、Territory Studioが『ブレードランナー2049』で行ったような作業が、リアルな世界を構築する上で役立ちます。「私たちの制作したスクリーンのほとんどが映画でほぼそのまま使われていたことは非常に嬉しかったです。この結果はあらゆる事柄がいかに慎重に計画、実行されたか、そしてセットの中でスクリーンを使うことがいかに大事なことであったかを示しています。」とEszenyi氏は述べています。

この記事は、2017/12/11にポストされたScreens Help Define the World of “Blade Runner 2049”を翻訳したものです。