金融業界にも押し寄せるデジタル変革の波! 業界リーダーが語る“顧客起点”を軸にしたイノベーションとは
2017年11月29日、アドビは「デジタル変革時代における金融業の未来」をテーマに、金融業界向けのセミナーを開催しました。セミナーでは、アドビより金融サービスにおけるユーザーエクスペリエンス改革の重要性について紹介したほか、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下SMFG)、株式会社ポラリファイ、そして株式会社セブン銀行からスピーカーを招き、金融サービスにおける革新的な取り組みについてご紹介いただきました。
オープンイノベーションの必要性を説く、SMFGのデジタライゼーションの取り組み
株式会社三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部長 中山知章氏
SMFGからは、ITイノベーション推進部部長を務める中山知章氏が登壇し、同社が進めるデジタライゼーションの取り組みについて紹介しました。中山氏はSMFG全体の視点でのイノベーション推進をリードしており、生体認証、人工知能、ブロックチェーンといった技術も活用しながら新規サービス創出に取り組んでいます。
中山氏は、スマホ決済やロボアドバイザーといった、フィンテック(「Finance(金融)」と、「Technology(技術)」を組み合わせた造語)が益々加速している最近の傾向について触れ、その結果、顧客の金融機関に対する要求水準は高くなり、これまで以上に顧客起点の金融ビジネスのイノベーションが強く求められるようになっていると話します。「イノベーションは、単独では起こりません。様々な業界と一緒になって、オープンイノベーションで顧客の要求に応えていく必要があり、そのためには日本独自のエコシステムを築いていく必要があります」と述べました。
SMFGは、シリコンバレーやニューヨークのベンチャーキャピタルやアクセラレータと協働したり、シリコンバレーに自ら拠点を設置したりするなど、国や業界に縛られないイノベーションを推進しています。国内においても今年9月に渋谷にイノベーションハブ「hoops link tokyo」を設立しており、日本でのイノベーションエコシステムの確立に更に注力していくとのことです。
金融サービスに変革を起こす生体認証テクノロジー
SMFGは、ブロックチェーンやAIを活用した新しい金融サービスの開発・検証に取り組んでおり、その中で具体的に進んでいる事業として、声、指紋、顔による生体認証プラットフォーム「ポラリファイ」を例に挙げました。様々なサービスにおける認証において、各個人が保有するパスワードが溢れかえる現状に対して、簡単で精密な生体認証によって解決するべく、同社は今年5月に、株式会社NTTデータ、Daon,Inc.と共同で株式会社ポラリファイ社を設立しています。
競合戦略上、最重要となる金融サービスのデジタル化
アドビからは、グローバルサービス統括本部 ソリューションコンサルティング本部 ソリューションコンサルタントの山口竜司が登壇し、金融サービス改革において重要性が高まっているユーザーエクスペリエンス(UX)について紹介しました。山口は、銀行のデジタルサービスに期待を持っている若年層の顧客が増えているなど、金融サービス業界に対する顧客の期待に大きな変化が起きていることが明らかになった調査を紹介し、金融サービスのUX向上が益々重要になっていると説明します。
グローバルサービス統括本部 ソリューションコンサルティング本部 ソリューションコンサルタント 山口竜司
金融サービスにデジタルUXという考えを取り込み、サービスの差別化に成功した事例として取り上げられた英老舗メガバンク、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドでは、ローン申請のプロセスにおいて、アドビの電子サインソリューション「Adobe Sign」を導入しています。これにより、手続き全体の大幅な期間短縮を実現し、UXを大きく改善することに成功しました。例えば、遠隔地に住む保護者からのサインが必要な学生ローン申請の場合、スマートフォンからも申請書に電子サインができるため、従来かかっていた書類郵送の手間が省けると同時に、大幅に申請時間を短縮することができます。
「Adobe Signは、国内のセキュアなクラウド環境上で提供されているサービスであり、電子サインおよび電子証明の適法性も担保されているため、セキュリティや法令順守に厳しい日本の金融機関でも安心して利用できるサービスです」と説明し、Adobe Signは国内の金融ビジネスにおいても、UXと働き方の改革に大きく貢献できるソリューションであることを強調しました。
オープンイノベーションやAIに向けて、さらなる進化と挑戦を続けるセブン銀行
最後は「セブン銀行のお客様中心アプローチ」を題目に、株式会社セブン銀行 常務執行取締役(セブン・ラボ担当)の松橋正明氏によるセッションが行われました。松橋氏はセブン銀行の開業メンバーであり、現在は新しいスタイルの銀行サービスの創造を目指し、新規事業探索のセブン・ラボを率いて全社イノベーションを推進しています。
株式会社セブン銀行 常務執行取締役(セブン・ラボ担当) 松橋 正明氏
セッションでは、コンビニATM事業モデルの構想から立ち上げまでの軌跡、従来のATMにおける業務委託先を含めた全体最適化や勘定計算の電子突合を実現したデジタルトランスフォーメーションの取り組みについて、そして現在注力している訪日客向けサービスやバリアフリー化などといったお客様中心の社会課題解決に向けた様々なアプローチについて紹介しました。
松橋氏が所属するセブン・ラボはたった5名で構成されていますが、その少人数体制のもと、人事・運用・マーケティング・営業・システム・企画の全領域をカバーしています。松橋氏は「セブン・ラボは、チーム全員が異なるスキルと価値観を持っているので、それぞれが境界・形を定めずに柔軟に動けることが大切である」と強調し、世の中の変化に合わせて形を変え続けるべく、オープンイノベーションやAIに対してさらなる挑戦をしていきたいと述べました。